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ご飯うまぁとなった後、一息ついた頃に来たルイさんと共に部屋に戻る。
学校まで少し時間があるか。
どうしようか、と悩んで、結局することが思いつかず、椅子に座ってぼーっとしている。
いつもなら、なにしてたっけ。
本読んでたかなぁ。でも大して時間ないからなぁ……。
することもないので、無意味に机の引き出しを開けては閉めを繰り返す。ノートやら、ペンやらが入っているだけだ。
あとは、教科書やよくからない布もある。なんだこの布。
頬杖をつきながら、ずっと繰り返していると、空いていた少しの時間はすぐに埋まったようで、ルイさんが呼びに来た。
「マリーナ様、お時間が来ております」
「はい、行きます」
まあ今から行っても少し早い方なのだが、なにもすることがないので、いつ行こうが変わらないだろう。
寮を出て、誰に会うこともなく教室に着く。
教室には誰もおらず、1番乗りだった。
ちなみに執事はよっぽどのことがない限り学校内には入れないので、1人で自分の席に座り、無意識に窓に目を向ける。
空は青く、鳥は群れで羽ばたいている。
平和だなぁ。なんにもない、平凡な日。
前は、もっといろんな人と話してた気がする。
誰としてたっけ。
朝からずっと違和感がある、この感覚。
わからないけど、いつもとは何か違う。
昨日も、一昨日も、平凡な日々だったはずなのに、それも違和感。
平凡。
平凡ってなんだろう。
昨日は、本当になにもなかったっけ。
確か、昨日は……
考えを進めようとした矢先、ガラガラッと音を立てて扉の開く音がした。
びっくりして肩を揺らし、反射的にそちらを見る。
そこにいたのは、確かエル・カトリーヌ。同じクラスメイトで、明るい性格、だったはずだ。あまり接点がないので記憶が曖昧だが。
人がいたことが驚きなのか、目に付いたのか、パチリと目があった。
大して仲も良くないに、会話など出来るはずもなく。
目があったまま、私たちは固まった。
……どうしようか。
挨拶をすればいいのだろうか……?
「あ、えっと……おはようございます、エル、様?」
疑問形になったのは、名前で呼んで良いのか迷ったからだ。
そして、仲良くもないのに挨拶してもよいのか、迷ったからだ。
「……おはよう。早いんだね」
キョトンとした後、笑顔でそう返したエル様に、私はまたもや、どう話せばよいか悩む。
ありがとうございます、と返せばよいのか、愛想笑いで終わらせればよいのか、それともなにか違う言葉を返せばよいのか。
迷って、ぎこちないながらも笑いながら、
「それほどでも、することもなかったので」
と返しておいた。
エル様はまたもやキョトンとして、そうなんだ、と言った。
そこで会話はおわり、私はまた自分の世界に浸る。
さっきは……なに考えてたっけ?




