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どうするべきか思案していた時、またコンコン、と戸を叩く音がした。
ど、どうする?
なす術なし、か……?
……ん?
ふと下をみると、黒ずんだなにかがうごめいて……る?
……
え、なにこれこっわ!!
しかもこれなんか広がってない!? 近づいてない!?
う、うおおお! に、逃げるぞおお!!
私は迷うことなく解錠し、扉を開ける。
すると、そこにはもちろんルイさん。そして、ルイさんを中心にうごめく黒い影。
へ? る、ルイさんを中心に……え?
ルイさんを見るが、俯いていて表情が見えない。
……えっと……え?
これ、ルイさんが出してるよ、的な? もしかしてすっごい怒ってる、的な?
顔が見えないからなにも分かんない!!
っていうかどうする……? この黒いのって触れるのかな……触れたら飲み込まれるってことないかな……。
せ、選択肢が究極だぁぁぁ!!
「……マリーナ、様」
うおわっ!! びっくりした!
「は、はい。なんで、しょうか」
私はとりあえず怖いので丁寧に話す。
「あの男に何かがいたのは、知っていたんです。その男に、マリーナ様が恋をしていらっしゃったことも」
あの男……? っていうかはい? 恋?
「でもその男がいなかった今、好機だと思いました。今のうちにマリーナ様を、手に入れれば、と。でも、そんな訳、なかった」
いやいやいや待って? 話についていけてないから。いや、うん、整理させて??
「マリーナ様の心はずっとあの男の元にあった。本当に、くだらない」
だから話ついていけてないんだよぉ!!
「こんな世界……無くなってしまえばいいのに」
ルイさんが、そう口にした瞬間、うごめく黒い影は、一気に活発に動き出した。横へと縦へと広がり、いつのまにか後ろのトイレが消え、黒い影は奥へ奥へと影を伸ばしている。
えっ……とぉ?
これはもしやあれですか? 隠しキャラのバッドエンドの世界を壊す系エンドですか?
本当に消してんじゃん待って、これって人も消えてるの……?
カトレアさんやレイン、エディ、アルナルド、そしてエル……。
みんな消える、ってこと……?
「お、落ち着いてください、ルイさん!! 気を確かに持って!!」
とりあえず私はこの黒い影を止めるべく、ルイさんに話しかける。
「私はいつでも落ち着いていますよ。世界を少し壊して、日常に戻します。僕が、望んだ“綺麗”な日常に」
綺麗な、日常……?
「そのためにはマリーナ様には少し眠っていただかなくては」
ルイさんがそう言うと、意識がぼやける感覚がした。
やばい、また、意識が……
「おやすみなさい、マリーナ様。次起きたら、元に戻っているでしょう、望んだ日常に……」
ルイさんのその言葉を聞き、意識は闇へと消えてしまった。




