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「マリーナ……?」
確かめるように私の名を呼ぶエル。
「はいエル、様。お体大丈夫ですか?」
私はエルの名を呼び、そうたずねる。
「体……。大丈夫。あれ、君たち……なんでいるの?」
今気づいたかのように、首を傾げながらレインとカトレアさんを見る。
「なんでって……ひどいわねぇ。お見舞いに来てる相手にそれはないんじゃない? ……まぁいいわ。私はカトレア。自分のことはどこまで分かる……というか憶えてる?」
呆れながらもカトレアさんはエルにそう尋ねる。
「自分のこと……」
そう呟くと、こちらから目をそらし、ボソリと言い放つ。
「僕は戻らないからね」
それは多分、元のエルに体を渡すつもりはない、と。
「質問の答えを言ってほしいんだけど……? まぁいいわ。体や頭に痛みや、気持ち悪さはないかしら? もう授業は終わっているから休んでいても大丈夫だけど」
カトレアさんの問いに、腕を動かしながら確認するエル。
「異常はなし、とくにしんどくもない……かな」
確かめながらそう言い、カトレアさんはそう、と頷く。
「じゃあまぁ落ち着いたら部屋に戻ればいいか……。なにか聞きたいこととか言いたいことはある?」
「聞きたいこと? 言いたいこと……」
そう呟いて考え込んだエルを、じっと見つめる。
体はなんともないのに、中身、というか魂っていうのかな……それが変わるなんてどういうことなんだろうか……。
「僕のこと……」
エルはこちらをみて何かを聞こうとしたようだが、言い淀み、
「やっぱりいいや」
と断った。
「そう……? ならいいのだけど。さて、エルの安否も確認できたことだし、これからどうしようか」
カトレアさんは私たちを見回しながらそう言う。
「とくに予定はないので、なんでもいいですが……皆さんは大丈夫ですか?」
そう尋ねると、
「特になにも。夕食までは暇だ」
「まぁルカに呼ばれてた気がするけど、なにもないわ!!」
と、各々答えてくれた。いや、呼ばれてるなら行きましょう!?
「そ、それは行った方がいいのでは……?先生も怒りますよ?」
と言うが、やだーと即答で拒否する。
か、カトレアさん……。
「……僕は、もうちょっとここでいるよ」
ふと、ベッドの方からそんな声が聞こえ、エルの方に目を移す。
「ちょっと休んだら、部屋に戻ることにするよ」
と言った。
「そう、ですか。ゆっくり休んでくださいね」
私はニコッと笑ってエルにそう言う。
「じゃあわたし達はそろそろお暇した方が良さそうね」
とカトレアさんに言われ、レインもそうですねと同意する。
「じゃあ行きましょうか。エル様、お大事になさってくださいね」
私はそう言い、別れを告げる。
「無茶なことはしちゃダメよ」
カトレアさんもいたずらっぽくそう続けた。
「あまり無理はするなよ。休んでおけ」
とレインもそう声をかけ、私達は保健室を出た。
来週の更新ですが、おやすみさせていただこうと思っております。
土曜日は入試休みのため、いろんな予定が重なり、更新出来る可能性が低いので……
もし出来る機会があれば、またTwitterでお知らせしたいと思っておりますので、よろしくお願いします!




