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翌日、普通に授業を受ける。そう、本当に真面目に静かに、優等生のように!!
だが、イベントは突然起こるものなのを私は忘れてしまっていた。
「おい!!」
トイレに行こうと、教室から出ると、廊下でそんな大声が聞こえた。
うるさいなぁ。もっと小さい声で話してよねー、なんて心の中で言いながらトイレへと急ぐ。
「おい!!」
とまたもや聞こえ、相手も応答してやれよ……とか思っていると、
「おい!! マリーナ・アディソン!!」
とまた続けて言った。
って私かいっ。
声のする後ろをちらりと振り返ってみると、怖い顔をした……確か名前は……ルージュ……? だったっけ。
悪役子息みたいなやつだったはずだ、確か。
「あ、私に声をかけていらしたんですね、なんの御用でしょうか?」
私はトイレに行きたいんだが……。
「ちょっと付き合ってもらおうか!!」
……えーっと?
「今からですか?」
「そうだ!!」
えーっと……トイレ行きたいんだけど……。
「さっさと来い!!」
と言われながら、腕を強引に掴まれ、引きずられる。
「ちょっ、やめっ……」
「さっさとしろ!」
とグイグイ引っ張られ、校舎裏まで連れて行かれる。
い、いじめか!! 私をな、殴る気なのか……!?
てかト、トイレ行きたい……!
校舎裏には、他にも見知らぬ男女がいる。
「えっと、私にご用の方ですか?」
なんてバカっぽい質問をしてみると、次は知らない女の子に肩を掴まれ、校舎の壁に乱暴に追いやられる。
女の子なのに力強っ!
「貴女、いい加減にしなさい!」
……はい?
「何がでしょうか?」
「何が、ですって? ナメた質問しないでちょうだい!!」
と怖い顔で言い、パァンッと頬を平手打ちされる。
いっ……たいなぁ!! 何すんだこの女……!
「突然何するんですか!」
と心の中の言葉を丁寧に変換しながら声に出す。
「あら? 頭の足らない貴女のために思い出すお手伝いをしてあげたのだけど? 感謝はされど怒られるいわれはないわ」
とすごい威張って言われた。
え、えぇ……。
「なんて頭の悪い女なんだ……」
つい心の声が漏れてしまい、それを聞いた周りの男の子たちはぎょっとし、そして私を殴った女の子は顔を赤くして怒りを見せる。
「このっ!」
と思いっきり腕を振り上げ、女の子が私を殴ろうとした時、横から、静かな声が聞こえた。
「何してるの……?」




