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「ふぅぅぅ……疲れましたね……」
私たちは館長が丸投げした図書館前の惨状を修復や掃除したり、周りの人たちの話を聞いたりと忙しなく働き、終わったのはもう夕方というところだった。
「な、なんで俺まで……もうムリだ……死んでしまう……ああ……もふもふの布団を誰かぁ……」
なんて呟いているリュラさんを軽く無視して、これからどうしようかと考える。
館長のところに行った方がいい、よね? でもシュラちゃんの話を聞いてるかもしれないし、邪魔しない方がいいかな?
「よし、帰るぞ。二度とくるかこんなところ」
と吐き捨てるように言うのはエディ。
「あはは、まぁまぁ落ち着いて」
と笑いながらエディに言うアルナルド。
「メリッサに一声しておいた方がいいかしら?」
と首をかしげるカトレアさんに、私も一緒に首をかしげる。
「僕、もう帰りたい……」
げっそりとした顔でエルはそう言った。
「全く、エルは体力がないわねー」
とからかうカトレアさんに、むっとするエル。可愛いです、ありがとうございます。
「別に体力ないわけじゃないし。精神的疲れだし」
そう言うエルの顔がもう可愛くて可愛くて……!!
「ふーん、それマリーナちゃんの前でしてあげて?」
「は?」
「すっごく悶えてるから」
とカトレアさんはエルの可愛さに悶えた私を指差す。
そんなことわざわざ言わなくてもいいんですよ、カトレアさん。
見てくださいよ、エルがすっごい冷ややかな目で見てるじゃないですか私悲しい。
「メリッサさんはあの女の子と話してると思うし、言ったら逆に邪魔になるんじゃないかな?」
とアルナルドが言ったので、確かに、と頷く私やカトレアさんに、全力で頷くエディ。
「じゃあ俺自室に戻るから。もう外に出るとかしたくない……」
そう言ってリュラさんは図書館へと入って行った。
「よし、帰るぞ」
それを見送ったあと、エディすぐに切り上げて、馬車を呼びつける。
私達はその姿に苦笑しながら、真っ先に馬車に乗ったエディに続いて馬車に乗り込むのだった。
……んん?……あれ、私やばい事忘れてるような……?
ことが解決(?)したことでか、私はなにかを忘れたようなモヤモヤ感に襲われる。
んーっと……あ、カトレアさんとエルの仲直り大作戦! ……はもういけそうだな、よかったー……でもそれじゃないな……館長に何か言い忘れたっけ? それともリュラさん? ……あれぇ? なんだったかな……うーん、図書館で本借りようと思ってないしなぁ……。
馬車に揺られみんなの話を頭の奥の方で聞きながら、私は忘れたことを思い出そうとする。
えーっと……忘れ物したっけ? いやもう帰るのに忘れ物なんかしないし……っていうかそういうの大体ルイさんが言ってくれ……。
……。
「ああっ!!」
思い出した……!
「っ!? ビックリした……、どうしたの? マリーナちゃん」
私の声にびくりと肩を震わせ、そう尋ねるカトレアさん。
「あ、ああ……ど、どうしましょう……忘れてました……」
る、ルイさんも一緒に行くって言ってたのに……どうしよう……。
「ん? 忘れ物? 戻る?」
そう優しく聞いてくれるのはアルナルド。違うんです、忘れ物なんて甘っちょろいものじゃないんです。やばいです。
「あ、ああ……忘れ物、違う、もっと、やばい、私、忘れた……」
片言で言う私にカトレアさんたちはもっとやばい? と首をかしげる。
る、ルイさん怒ってる? いや、絶対怒ってる……!!
「マリーナちゃん大丈夫?」
心配そうにそう尋ねるカトレアさんに、私は静かに深呼吸する。
「大丈夫、です。気にしないでください。すみません、私のせいで」
私はそう言ってニコッと笑った。
みんなは私を心配しながらも先ほど話してた話に戻す。
エルも私をチラチラと心配そうな面持ちで見てくれる。
ああ、可愛い……今はその可愛さは私の癒しです……すぐに無くなりそうですけど。
ああ、部屋に戻れない……。




