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「おらぁっ!」


「えぇ!?」


 どこかへ向かって歩いて行ったと思ったら、そんな掛け声とともに、ドアを蹴破った。


 蹴破った部屋は、薄暗かった。


 電気はつけてないよかうで、窓からの光のみがその部屋を写し出している。


「んぁ……?」


 左右上下ほとんど本に埋め尽くされている部屋の真ん中でピクリと動く影を見つけた。


「とっとと起きろ。お前には聞かなければならないことがある。10秒以内に起きなければ……この部屋を壊す」


 館長はそう言い、カウントを始めようとすると、慌てたよう様子でバサバサと音を立てながら本の下から出てきた。


 そこから出てきたのは、無精ひげを生やしたおじさん……のような青年? 


「……」


 その男はこちらをじーっと見つめている。と思ったら、


「……ぐぅ……」


 寝ていた。こちらに向けていた顔も、段々と重力に従って下がっている。


 すると、ズンズンと積み上げられた本を器用に避けながら、男に近づいた館長は遠慮なく、男を蹴り上げた。


「ええええ!?」


 私は声をあげながらその様子をあわあわと見守る。


 ゴフッという声とともに本の山に飛んで行った男。しばらくしてもぞもぞと本が動いたと思ったら、そこから男が出てきた。


「……痛いじゃないか。何をする」


 淡々とそう言った男に「あ?」と低い声を出す館長。


「いい加減ぐーたらするのをやめろ。まぁこれから仕事になるけどなっ! ざまぁみろ! はははははは!!」


 と悪人面(づら)で笑う館長に私たちは少し引く。


 館長ヤベェ……。


「……? 仕事になるって? 俺はまだここを出るつもりはないし、理由もない」


「あ、そういえば、自己紹介をしてなかったな、忘れてた」


 と男の話を無視してこちらを向く館長。


「私はメリッサ・マオーラ。そしてこっちの男はリュラ・チャリス。この図書館のセキュリティの全権管理者および責任者だ」


「……えっ、全権管理者でもあるんですか?」


 管理者って結構重要だよね……? こんなぐーたらしてていいのか……?


「全権管理者でもあるが、君は?……ああ」


 と、ぼそりと何かを言ったようだが、私たちの方には聞こえなかった。


「あ、えっと、マリーナ・アディソンと申します。こちらの図書館にある本のことでお話がありまして……」


「本〜? あ。うーん……ちょっとこの子だけにして」


 何かに気づいたらしい男……リュラさんは、私以外を外へ出そうとする。


「……不純行動反対」


「なんでそうなる。小娘に用はない」


 冷めた目で見る館長に、リュラさんはハッと鼻で笑いそう言う。


「でも女学生と男を2人っていうのはちょっと……」


 そう言ったのはエル。わぁ私の心配してくれるなんて!!


「……《English OK》?」


「「「!?」」」


「あ、やっぱり君も残っていい感じだね。あと、そこの女の子も」


 今のは英語……。


 エルとカトレアさん以外は何を言ってるか分かってなかったようで、ぽかんとしてる。


 英語を喋れるってことはこの人も転生者……? ってか転生者多いなっ!!


「また意味不明な言葉を……まぁ男がいるのならいいか……さっさと終わらせろよ、次はお前の仕事を増やす時間なんだから」


 館長はニヤリと笑ったのち、他のアルナルドたちを連れて外へ出た。


 パタリとドアが閉められると、暗かった部屋が一層暗くなる。


「……あの、電気つけていいですか?」


 一瞬の沈黙を破ったのは、カトレアさんだった。

 まぁ確かに暗いな……。


「だめっ!!」


 すぐさまそう返したリュラさん。


「え、えぇ……」


 即答されたことに戸惑いながらそんな声をだすカトレアさんに、私は思わず苦笑いする。


「さて、本の話だけど」


 と突然切り出した。


「あ、は、はい」


「見なかったことにしてくれ」


 ……はい?

「」の中にあった≪≫は英語を使ったため、≪≫をつけました。

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