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「マリーナ、大丈夫!?」
そう言って舞台に上がってきたのはエル。
「エル様! はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「そう? よかった……でもどうして制御出来なくなっただろう?」
エルは真剣な顔でそう呟く。
「やれもしないことをして力が暴走したんじゃないの?」
ぼそりとそう言ったのは、最初に魔法の実演をしたAクラスの女の子。
嘲笑うような表情に少しムッとしてしまう。
「それはないわ。魔力制御も容易くしていたから暴走はありえない。……だけどマリーナちゃんがさっき言ってた制御を乗っ取られた、っていうのは気になるわね……」
「それも嘘なんじゃないの?」
なワケねぇだろ!! 本当に乗っ取られたんだよ!!
心の中でそう荒ぶる中、アルナルドが私の代わりに冷静に答えてくれる。
「水球から作られていた槍は、微かに闇魔法を感じたから、乗っ取られたのは本当だと思うよ。しかもその槍もこちらを向いて飛んできていたわけだしね。さて、その犯人は一体……」
アルナルドはそう言って、考え込む。
すると、だんだん先生も集まってきた。
「全員大丈夫か!?」
先生のその声に素早く答えたのはアルナルド。
「僕たちは問題ありません。ただ、今の攻撃は闇魔法を用いた立派な犯罪行為です。僕が見た限りだと多分、闇魔法は生徒の中にいると思います」
「なんだって!?」
冷静にそう言ったアルナルドに、先生の1人が驚き声をあげる。
「闇魔法を使える人が生徒の中にいるなんて……」
カトレアさんも深刻な表情で考え込む。
「一度講演会を中止にせねばな……」
……え!?
「ちょ、ちょっと待ってください! 中止にまですることはないのでは!?」
私はすぐに反論するが、確かに危険なんだから中止も当然だろうと半分納得する。
いや、でも中止はダメ!!
「先ほどの攻撃は明確な悪意をもってもたらされた犯罪だ。それに闇魔法の使い手となると危険度はさらに高くなる。そんな中講演を続けれるわけがないだろう」
至極真っ当な意見だ。ならどうすれば中止を回避できるか。
それは……
「……結構上手くなかったですか? 私の演技」
「なに?」
今のがただの演技だったと証明すること!!
「あんまり高度すぎると私も出来ないですが、水を槍にしてそのまま打つぐらいならなんとか出来ました。そしてそれを当たらないようにエル様に手伝ってもらったんです。まさかアルナルド様まで乗ってきてくださるとは思いませんでしたが(話を合わせろ話を合わせろ話を合わせろ)」
ニコッと笑いながら私はそう言い、テレパシーで話を合わせろと連呼する。
「あー……そうなんです。もし、マリーナ達に攻撃するのがあったらそれを消せ! ……みたいなことを言われて。(それはいくら何でも無理やりすぎじゃない?)」
申し訳なさそうな表情で言うエル。ナイス! っていうか演技上手いな!
すると、アルナルドも意図を汲んだのか、チラリと私とエルを見て苦笑いして、
「僕はしたいことが分かったからマリーナのアシストをしたんですよ。やりすぎて水槍作りすぎちゃいましたけど」
と先生に笑って言ってくれた。
ありがとう!!
「そんな話信じられるわけ……」
「マリーナちゃん達の演技に拍手!」
先生の言葉を遮って、カトレアさんが高らかに言う。マイクを通して言ったので、みんな「おおー」と言いながら拍手してくれた。
これぞ既成事実である。さすがカトレアさん。
「(……ありがとうございます)」
私はアルナルドとカトレアさんに届くように、そうテレパシーを送る。
そして無事、送られてきたのか、アルナルドとカトレアさんは、チラリと私を見て、
「(いいえ、どういたしまして)」
「(どういたしまして! って言っても私はなんにもしてないんだけどねー)」
と笑って言ってくれた。
「さぁ、騙された先生方もとっとと降りてくださーい! 講演はまだ終わってないですよ〜」
しっしっ、と手で追い出す仕草をして先生方にそう言うカトレアさん。
先生達は渋りながらも引いてくれた。
カトレアさんはそれに満足そうに笑い、前に向き直る。
「さて、では舞台に上がってくれたお三方と、一緒に演じてくれた男の子に改めて盛大な拍手を!」
手を大きく広げてカトレアさんはそう言い、みんなも盛大に拍手してくれた。
「じゃあみんな戻って」
私たちに向かってそう言い、私たちは席へと戻っていった。




