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「おかえりなさいませ、お嬢様」


「あ、た、ただいまです」


 綺麗な一礼をして、私を出迎えてくれる執事のルイさん。


 前世現世共に庶民な私は、いつもどもってしまう。


「えっと、明後日に図書館に行くことになったので……あ、集合場所どこなんだろう……あ、えっとまぁ、行きます……です!」


 集合場所を考えてなかったのを思い出し、そちらに考えが移ってしまったため、文脈がおかしなことになってしまった。


 っていうか本当に集合場所考えてなかったや……。まぁ明日があるから大丈夫なんだけど。


「では、決まり次第お伝えください。ご入浴はどうされますか?」


「あ、部屋で入ります。今日はもう外には出ないと思うので、休んでくださって構いませんよ?」


「いえ、そういうわけにはいきません。私はあなたの執事なので」


 わぁ、かっこいい。イケメンにそんなこと言われたら落ちるわ確実に。


「ありがとうございます」


 私はニコッと笑ってそう返す。


 確かにときめくけどさっきイケメンだらけと食事していた今の私にはほとんど効かぬ!!


 ……なにバカなこと言ってるんだろう。


「それではお嬢様。ごゆっくり」


「あ、はい」


 私はそう返して、部屋の中に入っていった。


 部屋に入ると、すぐさまベッドに直行する。


 バフッとふかふかのベッドに飛び乗り、ゴロンと寝転んだ。


「……なんか通常イベント外のことまで起きてるなぁ……あ、エルに日本語のこと言うの忘れてた」


 まぁいっか、明日にでも言えば。……あれ、前もこんなこと言った気がする。


ーーーーーーーーーー


 次の日、共同授業があった。


 ……いや、うん、あった、っていうかある、っていうか……。真っ最中なんだけど……いや、共同授業のカトレアさんの授業は1時間か最高でも2時間と思ってたわけですよ。それが朝聞けば1日全てが共同授業ってどうなってんの!?


 ……はい、まぁ休み時間や昼休憩、いわゆる昼ごはんの時間はあるものの、それ以外、つまり授業は全てAクラスとの共同、そして全てカトレアさんの講義を聞くらしい。


 疲れないの!? っていうか疲れるから共同授業にしたのに一日中やったら意味なくない!?


「これより、Aクラス、Bクラスの共同授業、カトレア・マーベリア様による講義を始めます。全員、起立」


 司会らしき人のその掛け声によって、全員がぞろぞろと立ち上がる。


「礼……着席」


 その言葉通りのことをして、司会者はことを進めていった。


「では、早速カトレア・マーベリア様にご登場していただきたいと思います。どうぞ!」


 拍手と共に、壇上に出てきたのは、笑顔をカトレアさん。白のふんわりとしたワンピースを着たカトレアさんはとても綺麗で、見惚れている男子もチラホラと……女子も、チラホラいるようだ。


「こんにちは、ご紹介に預かりました、カトレア・マーベリアです。今日は一日中私の講義になりますが、どうか飽きずに聞いていただければと思います。あ、もちろんただ聞くだけでなく、実演や実践もあるので楽しみにしていてくださいね?」


 ウインクをパチンとして、そう言うカトレアさんに、男子は目がハートだ。女子はうっとりしている。

 わぁ……さすがカトレアさん……。男女共に虜にしてるよ……。


「もし質問やわからないことがあれば気軽に挙手していただければ答えるので、尻込みせずみんな答えてくださいね。でもみなさんの名前を私は覚えていないので、指差しになってしまいますが、どうかお気に障らなければと思います。……さて、講義を始めてもいいですか?」


 終始絵笑顔でそう言うカトレアさん。


「もちろんです」


 先生がカトレアさんの質問にすぐさま答え、講義……というか授業が始まった。


「さて、それじゃあ……皆さんが気になっている魔法について今日は話したいと思います。あ、今日はと言いましたけど、一日中その話をするとは限らないですよ?みなさんを見て自由に決めていきたいと思っているので。さて、じゃあ魔法から……。


みなさんは魔法をなんだと思っていますか? ……おお、結構手が上がりますね、じゃあそこの三つ編みの子」


 カトレアさんの普段の態度とのギャップに多少おののきながらも、当てられた三つ編みの子の方を向く。


「自分の魔力によって作る様々な力をまとめていったものです」


「はい、正解です。では、もしここで水球を出してください、といえばみなさんはどうしますか? ……ではそちらの男の子。あ、説明しづらいかもしれないので魔法を行使してもいいですよ。ただし、出すだけですからね」


 そう言われ立ったのは、ルージュ。カトレアさんの言葉に頷き、手を前に出す。


「……水球」


 そうルージュが唱え、出てきたのは、授業の時にも見せた同じ水球。


「「おお……」」


 周りのみんなが歓声を上げて、真ん中のルージュはドヤ顔だ。


「はい、みなさんの魔法も同じ水球ですよね? あ、ありがとうございます。もう大丈夫ですよ」


 カトレアさんにそう言われ、ルージュは水球魔法を解いてまたその場に座る。


「さて、みなさん。さっきの魔法は一体なんでしょうか?」


 え?


 カトレアさんの質問にみんながざわつく。


「え、水球じゃないの……?」


 そんな声もちらほらと聞こえる。


「みなさんもお分かりの通り、あれは『水球』ですが、あれが本来の姿と思われますか?」


 ニヤリと、挑戦的な笑みを浮かべそう言うカトレアに、端にいた先生が変わる。


「お、おい、マーベリア」


 カトレアさんを制止しようと知らない先生がそう声を上げるが、カトレアさんは聞く耳を持たず、というか完全なるシカトをして、続ける。


「私が、『水球』をお見せしようではありませんか」


 そういたずらっぽく笑うカトレアさんの顔は、とても魅惑的で、美しかった。

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