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「あ、カトレア様で思い出したけど、明日AクラスとBクラスの共同授業があるって知ってる? まぁ授業っていうかカトレア様の講演会なんだけど」


「ああ、カトレア様の講演会については知っていましたが、Aクラスとの共同なんですか?」


 思い出したように言うアルナルドにレインがそう尋ねる。


「うん、最初は違うかったんだけどカトレア様が希望されたのと、そこまで頑張れないだろうってカトレア様の婚約者がおっしゃったんだって」


「へぇ、婚約者の方がこの学院にいるんですね」


 そんなアルナルドとレインの会話を聞いて、ドルソン先生を思い浮かべる。

 そこまで頑張れないだろうって言われるなんてカトレアさん、信用がないような気がするけどきっと気のせいだよね、うん。


「生徒か先生かどっちなんだろうね〜……あ、エディのそれ美味しそう」


「あげないぞ。自分のを食べろ」


 アルナルドはエディの言葉を無視してエディのお皿にフォークを伸ばす……が、エディはお皿をアルナルドが届かないように遠くへ滑らせた。


「1つでいいんだよ?」


「自分のを食べろと言ってるだろう」


 なんかいちゃいちゃしてるように見え……いや、野暮なことは言わない。


「図書館の件なんですが」


 突然そう切り出したのは、レイン。その言葉に、一同はシン、と静かになる。すぐに目をレインに向けた。


「内部の、図書館関係者の者が行なった、と考えられないでしょうか」


 図書館関係者。


「その可能性を忘れていたな……だが、一介の図書館関係者にそんなセキュリティもをすり抜けるなんて大技、できるとは思えないが?」


 エディが、レインにそう返し、話はまた振り出しに戻……いや、ならば偉い人がしたのでは?


「それでは、図書館関係者の偉い方ならば、可能なのではないですか? 偉い方なら抜け道もあるかもしれませんし」


 私はそう言いながら、みんなの顔色を伺う。特に、アルナルドとエディの。


 図書館のお偉いさんともなると、高爵位を持った立派な貴族である。

 そしてそんな貴族を疑ったとなると、私は立派な不敬罪、下手したら死刑になるかもしれない。ああ、怖い。やっぱり言わなきゃよかったかも。


「うん、可能性はあるね。というかそれが1番高いかもね」


 え、そんな普通に認めちゃっていいんですか。一応遠い親族なんじゃないんですか。知らないけど。


「図書館のトップが怪しいな」


 ええ!? トップから怪しんでいくんですか!? それは流石にないのでは?


「それはエディの主観でしょ〜。エディあの人苦手だもんね」


「苦手じゃない。嫌いなんだ」


 すかさずそう言うエディに、アルナルドははいはいと適当に流す。


「お知り合いなんですか?」


 私の疑問は、ちょうどレインが尋ねてくれた。


「うん、というか確かエディの従姉妹……だっけ?」


 そう返したのはアルナルド。ってえ!? エディの従姉妹!?本当に高爵位じゃん! 私死刑!?


「従姉妹じゃない」


「はいはーい」


 またもやアルナルドは適当に流す。


 従姉妹なの?従姉妹じゃないの?どっちなの?


「王立図書館館長メリッサ・マオーラはエディの従姉妹でね、全権管理者なんだ。あ、王立図書館であってるよね?マリーナの行ってた図書館って」


「はい、そうです。少し歩くんですけど、流石王立図書館、色々揃ってて、凄かったです」


 私はアルナルドの問いに頷きながら答える。エディの従姉妹さんがその図書館の館長をしてるなんて、すごいなぁ……。


「あそこの図書はリクエストも出来るからね〜でも基本はメリッサが色々入れてるって聞いたよ。そうなの?」


「知るか」


 アルナルドの問いにすかさず両断するエディ。そんなに嫌いなのか……。



「よし!明後日は休みだからみんなで行ってみる?魔法がかかった本も見たいし。マリーナが探したらきっと出てくるんじゃない?」


 パンッと手を叩き、そう提案するアルナルド。


「私はいいですよ」


 そんなレアイベント逃すわけがない!!

 ポーカーフェイスで私は笑ってそう言う。


「僕も、よろしいのであれば喜んで」


「私も、よろしいのであれば是非」


 エルとレインもそう返し、行くことが決定する。


「俺は行かない」


 ただ1人、そう言って、アルナルドの誘いを断る。


「えー、あの人エディを溺愛してるからエディがいた方がやりやすいんだけどなぁ、色々と」


 へぇー、エディの方は嫌いなのに、相手は好きなんだ。

 っていうか色々とって何する気なんだ……


「俺は行かないからな」


 頑固として拒否するエディ。

 これは絶対行かないな……と思った時、


「あれ、メリッサに言っちゃおうかな……」


 ボソリと、アルナルドはそう呟いた。


 あれ?あれってなんだろ……


「よし、道案内は任せろ」


 エディはアルナルドを言葉を聞いた瞬間態度をガラリと変えた。


 ……お、おお……。


「わぁ!よかったぁ!僕だけでもいいけど、エディがいるとメリッサも色々教えてくれるし、いてくれないと困るところだったよ〜」


 ニッコニッコ嬉しそうに笑うアルナルド。な、なんて子なの……!!


「じゃあもう話は終わりだな。解散だ解散。防御魔法の強化に努めないと……」


 エディはそう言い、立ち上がる。最後にボソリと言っていた。防御魔法するほどなの……!?


 ……え、解散するの?


「あーあ、1人で行っちゃって……まぁいいや。もうみんな食べ終わってるし、解散にしちゃおうか。じゃあ明日の共同授業で」


 呆れ顔で言ってから、私達にそう笑いかけて言ってくれた。


「はい、ありがとうございました」


「ありがとうございました」


「ありがとうございました」


 レイン、エル、私の順にそう言い、アルナルドは手を振って食堂を出て行った。


「……あ、では帰りましょうか」


 アルナルドを見送り、私は2人にそう言う。


「そうだな」


 レインはそう返し、


「うん、そうだね〜」


 とエルも返してくれた。


「それでは、レイン様、エル様、ごきげんよう」


 私はそう言って、エルとレインと別れたのであった。


 前から思ってたけど、ごきげんようってはずかしい。

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