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私はカトレアさんとエルを交互に見た。カトレアさんは俯き、エルはカトレアさんをじっと見ている。


「……う」


 う?


「うわぁああああん!!」


 そう泣き叫びながらエルに体当たりしにいった……というか抱きつきにいったカトレアさん。


「うわっとっと」


 それを倒れそうになりながらも支えるエル。


 おお、感動の再会だ……!!


「……えーっといつまで抱きついてるんですか?」


 カトレアさんがもうすっごいぎゅーっと抱きついてるんだけど……


「やぁだ! マリーナちゃん、ヤキモチ? マリーナちゃんも抱きつきたいの?」


 え?


「もちろん抱きつきたいです!」


 即答でそう言うと、エルが睨んできた。


 いや、今のは条件反射っていうか、不可抗力なんだよ? 質問に正直に答えただけなんだよ?


「もういいでしょ」


 エルはそう言って、カトレアさんからパッと離れ、ムスッとしていた。


 カトレアさんは「えー?」と言いながらエルにもう一度近づいているが、頭を抑えられ、近づけていない。


 おお、これか姉弟……いいなぁ。私一人っ子だったしなぁ。


「あ! そういえば聞きたいことがあったんですけど」


 私は急に思い出し、声を上げる。


「え? 聞きたいこと? 何ー?」


 カトレアさんは、エルに近づくのをやめ、私に向き直る。


「あの、隠しキャラのことなんですが、私、隠しキャラについての記憶……というかなんか色々忘れてたり朧げだったりで、隠しキャラだけじゃなくイベントも忘れてるんですけど、カトレアさんは覚えてますか?」


 そう、エルにも聞いたことのある隠しキャラについてだ。

 エルは隠しキャラの条件を知っていたけど、カトレアさんなら色々知っているんだろう。


「んーっと、隠しキャラは心中エンドなんだけど、実は隠しキャラらしく隠しエンドもあるんだよー」


 隠しエンド!?


「な、なんですかそれ!?」


 初耳なんですけど!!


「隠しルートがまずあるんだけど、あ、これ発表してないよ?このゲーム秘密多いんだよ〜。でね、隠しルートに入るには隠しキャラが攻略対象になって、その隠しキャラの好感度が一定以上0だったら、隠しルートに入るんだよ。そっから隠しエンドに向かっていくんだけど……相手誰だったかなぁ?」


「え、ええ? 相手覚えてないんですか? 結構重要なんですけど……」


 っていうか秘密多すぎ……


「秘密にしてた理由なんだけどね、攻略法をバラされないためっていうのと、その、隠しエンドが、ね……」


 ソッと目を逸らして言ったカトレアさん。隠しエンドになにが……?


「か、隠しエンドはどうなるんですか……?」


 私は隠しエンドに色んな想像を巡らせながら尋ねる。


「……消えるの」


 カトレアさんは真剣に固い声でそう言った。


「……消える……?」


 消える、って一体なにが……?


「殺される、とかじゃないってこと?」


 訝しみながらエルはカトレアさんに聞いている。


「隠しキャラの持っている能力っていうのが強大で、世界そのものを消す、っていう……まぁ、入らなければ大丈夫なんだから! ……ね?」


 言っている最中に重い空気に気づいたのか、明るい大きな声で言い直した。


「なんでそんな設定にするんだ……」


 青ざめた顔でドルソン先生はそう言う。


「あー、そっちの方が面白いかな、なんて……」


 あはは、と曖昧に笑って言うカトレアさん


「「「笑い事じゃない!!」」」


 エルとドルソン先生と私は思わず声を揃えて叫んでしまった。


「いや、だって普通自分の作ったゲームに転生するなんて思わないでしょ? っていうか本当は隠しエンドじゃなかったんだよ? でもそれはさすがにヤバイからって隠しエンドになっちゃっただけで」


 まぁそりゃあ隠しエンドになるでしょうね。むしろ逆に無くならなかったことに驚きだよ。隠してでもゲームに入ったことに驚きだよ。


「みんなには好評だったのになぁ……」


 それでか!!

 それで無くならなかったんかい!!


 なんか、色々知りすぎて疲れてきた……。


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