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「へっ!?」


 私は突然後ろから声がして、そんな間抜けな声を出してしまった。と同時に振り向く。


 そこにいたのは、綺麗な長い金髪に真っ白な肌、艶のある唇に…っていうかすっごい綺麗なんですけど!?

 笑ってるその姿も美しい…!


「なっ!カトレア!?どうしてここに!!」


 そう驚くドルソン先生。

 え、知り合い?


「そりゃあ、ルカに頼んでちゃんとやってくれるか心配だったからに決まってるでしょ?……まぁ、正直言って見たいだけど?」


 そう言って、金髪美人さんは私をチラリと見た。

 ?私になんかあるの?


 っていうか……


「先生のお知り合いですか?」


 この2人が並ぶとすっごい眩しい!!なんかオーラがすごい…!!

 どっちも美人だから…!!


「…ああ、この人はカトレア・マーベリア。私の……婚約者です」


 ……婚約者?


「婚約者ぁ!?」


 そんなのいたんですか先生!!

 非リア族じゃなかったんですか!!……まぁ先生かっこいいもんね、非リア族な訳ないよね……。


 別に悲しくなんてないんだから!!

 リア充だからって僻んでないんだから!!


「……ぷぷ」


 ……んん?


「…ふふっ……あははは!ルカが!ルカが先生!!あはははおっかしー!」


 ……えーっと、カトレアさん?笑いすぎじゃないですか?


「……おい。そんなに笑うことじゃないだろ。というかそんなこと言いに来たんじゃないだろ」


 あ、先生の口調がちょっと、変わってる…。


「あ、そうだった。えーっと、マリーナちゃん!」


「は、はい!」


 突然カトレアさんが私の名前を呼ぶ。


「……うん、可愛い!」


「はい!?」


 いやいやおかしいでしょ、カトレアさんの方が確実に可愛いでしょ…!!っていうか突然過ぎでしょ!!


「……おい」


 ドルソン先生が呆れた顔でカトレアさんを見る。

 うん、そうなるよね…!!


「あはは、ついつい。それじゃあ本題に……マリーナちゃん。

貴女はこの学院をやめた方がいいと思います!!ただこれは私の思いなだけだから決めるのはマリーナちゃんなんだけど……さっきのを聞いてるとやめるのは嫌だよねぇ」


 カトレアさんは苦笑してそう言った。ドルソン先生と同じ言葉。


「……どうしてやめさせたがるんですか?私が庶民っていうことでいじめられるからですか?」


 私がそう尋ねるとドルソン先生はカトレアさんを見て、カトレアさんは違う方向に目をそらす。

 んん?


 反応を見るに、そうじゃないのかな??


「……そりゃあ、もちろんそういう理由もあるよ?でも…っていうかマリーナちゃんも女の子なわけよ!!」


「そ、そうですね」


「つまり男の子と恋をする!!」


「は、はい」


「その男の子になにかされないかと私は心配なわけよ!!」


「は、はぁ……でもどうして私の心配をしてくれるんですか?」


 それも疑問だけどもしかしてのもしかする可能性が……。


「……え?えっと……私が通った学院の子たちが危険に晒されるのを黙って見るのは嫌だから!…かな」


 えっ!カトレアさんも学院の卒業生なんだ……。


「……そういえば今年は王族もいちゃいますからねー」


 私はアルナルドの顔を思い浮かべながらそう切り出す。

 落ち着いて、もしも“あれ”なら……


「そうでしょ!?もし何かあったら危険だと思うの!」


「あー、恋をして監禁されたりとか〜」


「そうそう!好きになるあまり焼かれるかもしれないよ!?」


 ……そーいえばレインにそういう兆候が出たことないなぁ。


「好きな相手を傷つけた奴を氷漬けにしたりとか〜?」


「ええ!権力を振りかざす奴だって……ってあれ?」


 ……これはやっぱり……!!


「ヤンデレ乙女ゲーム的展開ですね!」


 私はにっこりとそう言った。カトレアさんはというと、驚いた顔をしている。


「……もし君が僕を好きになってくれないのなら」


「僕しか愛せない世界へ行こう…!!」


「「監禁エンド!!」」


「ああああ、まさか出会えるなんて思わなかった!!というかマリーナちゃんが同じ転生者だったなんて!!」


 カトレアさんが嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねながらそう言う。


「私もですー!!っていうかもしかしてアルナルド推しですか!?私はエルなんですー!」


 同じく私も飛び跳ねて、カトレアさんと手を取り合う。


「そーなのー!!アルナルド様推しよー!!エルなの!?まぁあの可愛い顔で氷漬けにするところはいいわよねー!!」


 なんて事だ!!ここに同志が!!心の友が…!!

 “あれ”…つまり転生者とは思っていたけどここまで同類の人だったとは…!



「……おい…」


「「え?」」


 私とカトレアさんは同時に声がする方、つまりドルソン先生の方を見る。


「盛り上がりすぎじゃないか?それともうすぐチャイムが鳴る。マリーナさんは教室に戻らないと」


 あ、本当だ。そんなに話し込んでたのか……。


「そっかー、残念……あ、授業が終わったら空いてる?夕食の時でもいいんだけど。食堂なら私も入れるし」


「授業が終わったら空いてますよー!今日はあと1時間だけなので終わったらここにくればいいですか?というか食堂入れるんですか?あ、卒業生だから、みたいな?」


「じゃあ終わったらここ集合ね!そうそう!卒業生は学院の出入りも緩いのよ〜、ここの学食美味しいから卒業してもたまに来ちゃうのよねー」


「はい、了解です!そうなんですか!美味しいですよねー、その分高いけど……」


 まぁ学院生は全部無料で提供してくれるけど、先生(ということはカトレアさんみたいな卒業生も)は有料だからメニューに値段が書いてあって……うん、ちょっと震えた。ちょっとだけね。


「あーあ、学院にいたときは払う必要なかったのに卒業した途端お金取られるんだからー、でもその分美味しいんだけどーー」


 カトレアさんはそうボヤきながら近くにあった椅子に座る。


「おい、チャイム」


 ドルソン先生がそう言いかけた時、チャイムの音が鳴り始める。


「「「……」」」


 チャイムの音が……


「ほら言ったのに!!話をやめないから!!」


 ドルソン先生は慌てて、私を押し出す。

 ちょっ、先生、強く押しすぎですって。


「わわっ」


 私はつまづきながらも廊下へ出る。


「ごめんね〜!すぐそこだけど言い訳に困ったらルカに呼び出されたって言ったら大丈夫のはずだから!」


 カトレアさんは困った顔で笑いそう言う。


「いっ、いえ!それじゃあまた後で!」


 私はそう言って走って教室に向かった。


 あれっ、さっきも慌ててたような気がする。

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