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 私は廊下を走りながら、ルイさんを思い出す。


「ルイさんって、精霊使いだったんだ…」


 私はそんな事を呟き、精霊使いについて、図書館で読んだことを思い出した。


 精霊使いとは、なろうと思ってなれるような簡単なものではない。


 魔法使いが魔力保持者で、魔法を使える者でなければなれないと同じように、精霊使いは、精霊が自然に視え、精霊に好かれている者でなければなれない。


 私が見たのはルイさんが召喚したことによって、見えるようになっただけの精霊で本当はルイさんの周りを回っていたんだろう。多分、いろんな精霊がルイさんの周りにはいるに違いない。


 あれ?


 精霊使いって、確かすごく少ないからすっごく高位の役職につけるって書いてたような…?


 図書館で読んだことを詳しく思い出そうとしたら、教室に着いてしまったので、一旦思考を中断した。


ーーーーーーーーーー


 1時間目は、体育館で、魔力封じを解くそうだ。そして、魔力暴走を防ぐため、解いたあとに魔力制御が付与されているらしいブレスレットをつける。


 それをつければ基本的に自分では取れないそうで、安全装置代わりになるそうだ。


 しかも、そのブレスレットが可愛い!


 男らしいデザインもあれば、女の子のためのオシャレで可愛いブレスレットもあるようで、生徒たちも見せられたブレスレットに歓声を上げていた。


「さて、順番に並べー、魔封じを解いていくぞー」


 先生にそう言われ、それぞれに順に並んでいく。


 私も後ろに並び、前の人達が解かれるのを待った。


 ……なんだろう。


 すっごく視線を感じる。


 気になって、そちらに目を向けてみると、すごい顔で私を睨んでいる男がいた。


 こっわ!!


 え?なにあれ、めっちゃ怖いんですけど。すっごい睨んできてるんですけど!?


「(エ、エルくーん)」


 私はテレパシーでエルを呼ぶ。


 エルは、こちらを見て首を傾げながら、応対してくれた。


「(どうしたの?)」


 とりあえず私は、現状を素直に伝える。


「(睨まれてるんですが何故だと思いますか)」


 睨んでいる男の方に視線を向け、私はエルにそう言った。


 すると、私が見ていた方向にエルも見る。そしてギョッとしていた。


「(こわっ!)」


 素直な感想ありがとう。


 私は苦笑いをし、心の中でそう言う。


「(あれ、誰だろう?)」


 私がそう聞いてみると、エルはすぐさま答えてくれる。


「(ルージュ・サランだね。男爵位ながらもBクラスに入って結構注目されてたよ。君の次にね)」


 ルージュ・サラン?


 知らない人だなぁ…てか、私注目されてるの!?


「(注目されてたの、私!?)」


「(え、知らなかったの?)」


 知ってるわけがないじゃない!!


 そんな…!


「(主人公の立場を誰かに譲って静かに生活しようと思ったのに…!)」


 私は、切実に心の中をテレパシーに載せて叫ぶ。


「(いや、普通に無理でしょ)」


 エルに真面目に返され、私はへこむ。


 …やはり無理なのか…


 いや、頑張ればいけるはず…!?


 頑張るぞ…!たとえ不可能でも…不可能じゃない!…はず!!


 なんて話をしていると、順番がきたので、私はそちらに集中することにした。




「名前を」


 先生にそう言われ、


「マリーナ・アディソンです」


 緊張しながらも、淀みなく答える。


「前へ」


 そう言われたので、前にある魔法陣の中に入る。


 魔封じの時の魔法陣と似てるなぁ。


 なんて呑気に考えながら、私は魔封じの解除を先生たちがしているのを見ていた。


「次」


 そう言われたので、私は早々にそこを去り、ブレスレットがあるところへ行く。


 …視線をめっちゃ感じるんですが…。


 もう一度、そちらを見てみれば、やはりそこにいるのはルージュ・サラン。


 …なんで睨んでくるのか本気で知りたいんですが!!


「ワー、コノブレスレットカワイイナー」


 もう心を無にしよう。


 そう、私は無。心を穏やかに。日本は多神教。私は仏教徒。心は晴れやか。視線?なにそれ美味しいの?



 ……私何言ってるんだろう…。


 ちょっと現実逃避しすぎたな…私、中高一貫のキリスト系の学校だったし…仏教徒じゃないし…。


 何言ってんだろう…疲れてるのかな…


「……このブレスレットにしよう…」


 私が選んだのは華奢できれいな形のブレスレット。花がモチーフになっており、とても華やかだ。


 気分は沈んでいたが、ブレスレットのおかげで少し気分が上がった。


「マリーナ・アディソン」


「はい?」


 急に名前を呼ばれ、私は名を呼ばれたところに振り返る。


 ……え?


「少し話がある」


 いや、は?


 な、なんで…ルージュ・サランに声をかけられないといけないの!?


 それもにらみながら!!


 胃がキリキリします……



ーーーーーーーーーー


「そ、それでご用件はなんでしょうか」


 私はルージュ・サランに体育館裏に連れてこられた。


 こわいよー!!


 エル、助けてー!!


「マリーナ・アディソン」


「は、はい」


 名前を呼ばれ、ぎこちないながらも私は返事をする。と、思ったら、


「今すぐこの学院から出ていけ」


 ……はい?


「え、えっと……なぜですか?」


 意味がよくわからず…まぁ、出て行けって言われたのはわかるが理由がわからず、私はそう尋ねる。


「お前が邪魔だからだ」


 ……


「すみません、ちょっと意味がよくわからないのですが」


 いや、本当に。


「お前はバカなのか?」


 いや、お前が説明下手なだけだろうが。


「私が邪魔だから学院から追い出したいのは…まぁわかりました。でも、別に私、あなたの邪魔をした覚えは一ミリもないのですが」


 わかりましたと言いながら本当はあんまりわかってないのだけど。


「お前が庶民のくせにBクラスにいるからだ。庶民は庶民らしく町で汚らしい様働いておけばいいものを…ちょっと魔法に恵まれ、それもなぜBクラスにいるんだ。邪魔でならない」


 ……は?


 汚らしい様で働いておけばってなんだ、テメェ。


 ちょっと貴族だからって調子のんなよ、このクソヤローが。


 ……深呼吸をしよう…。


 すー…はー…すー…はー…


「私が庶民なのは事実であり、それについてあなたのように不快に思う方ももちろんいるでしょう。ですが、庶民らしく汚らしい様で働いておけば、というどういう意味でしょうか。庶民が働くのは汚いのでしょうか。それはおかしいと思います」


 顔を顰めながら私はそう言う。


 なるほど、今理解した。


 こいつは悪役令嬢ならぬ、悪役子息か。


 さて、どうしたものか。


 たしかこの学院の校風の一つに平等があったはず。庶民やら貴族やらという階級をひけらかすのは校則により禁止されてた…はず。


 まぁ、だからこんな隠れた場所で呼び出して言ってるんだろうけど。


「貴様、庶民のくせに貴族である俺に刃向う気か?」


 ギンッとさらに睨みを強くしてそう言うルージュ・サラン。


「そうやって上からしか物が言えないのですか?なんてくだらない。そんな家はあなたが当主に着いた途端、すぐに没落ですね、ああ、その様をみるのもいいかもしれません」


 にっこりと、最高の笑顔で言ってやった。


 すると、すぐに顔を赤くし怒りをあらわにする、ルージュ・サラン。


「貴様っ!!」


 そう言って、殴ってこようとする、ルージュ。


 あ、やば、調子のりすぎた…


 もう、拳が私の目の前にきた、というところに、


「はーい、そこまで」


 声がかかった。



 

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