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私がそう言った瞬間、エルは驚いた顔になる。
「それは……たしかにありえるな……」
エルはそう言って、顎に手を当て考え込む。
「私は一応、転生してからほかの転生者がいる可能性は入れてあった。それはエルと出会っても変わらない。
私と会ったとき、というかいままでずっと『エル・カトリーヌ』というキャラとして生活してたんだよね?私もそう。『マリーナ・アディソン』としてのキャラで生活してた。
これは多分、みんなしてるんだと思う。だから転生者かなんて気づかない。でも確かめるためにむやみに話すと訝しまれて危険。万が一、私が攻略してしまった時に、転生者だと命の危険がないし、安全だと思うけど、転生者が誰かなんてわからないし…そこが一番な難問かなぁ…。
もし、転生者なんだったら仲間にしておいて損はないと思うから、転生者が誰かは知りたいんだけど、エルはどう思って…
え?なにその顔」
結構長々と話したな…なんて反省しようと思ったのにめっちゃ驚いた顔してるんですけど……
一応私の見解は伝えておいた方がいいと思って言ったんだけど…おかしかったかな?いや、長かっただけ?
なんて私が考えていると、エルが口を開いた。
「お前……そんなアホ面で色々考えてたんだな…」
っておい。
「私ディスられてる?ディスられてるの?え?普通に素で?ひどくない?」
すごい真面目に言ったのに。っていうかアホ面ってひどくね?え、すっごい傷つくんだけど。そ、そりゃあエルに比べたら私なんてちっぽけかもしれないけど…さすがに泣くよ?
「あ、ごめん。結構考えてるんだなって思って。でも転生者がいる可能性は僕もあると思う。キャラとして生活してる、っていうのも同意。でも、誰が転生者かわからない、っていうのはちっとも難問じゃないと思うな」
素直に謝ってエルはそう言う。
難問じゃない…だって?
「どういうこと?転生者はたぶん、無意識下の中でキャラとしての生活をしている。
私やエルは転生者同士だからこうやって素で話せるんだろうし、キャラとして話してるっていっても私が頼んだだけだから、たまに素が出てくるのは例外。
無意識下で生活してる転生者をどうやって見つけるの?」
見解とともに私はエルに言うと、
「そうだね。そういえば、僕たちどうやって知り合ったんだろう?」
ニコニコした顔でエルはそう聞き返した。
「どうやって…ってこの場所で知り合ったんでしょう?」
質問の意味が分からず、私は首をかしげながら言う。
「そうだね。そして、こんな会話をした。『ため息をつくと幸せがにげちゃうよ?』」
エルのその言葉を聞いた瞬間、理解する。
「前世の言葉でつたえれば転生者かわかる…!」
私がそう言うと、満足そうに、「そういうこと」と言った。
「僕、昔に色々検証した結果、ここの言葉は日本語と英語で形成されてるみたい。つまり日本と同じってことね。だけど英語といってもOKとかそういうものだけだから完全な英語だけ、っていうのはないっぽい。そして文字はカスティナ。」
もう意味がわかるでしょ?というようににやりと笑うエル。
「言葉は英語でいけるし、文字は日本語、あるいは英語で書けばいいのか!」
たしかにそうだ。
どうして気づかなかったんだろう!!
私は興奮したまま、ふと、塔を見た。
…あ。
「それじゃあ、そこからはまたあとででも考えよう」
私はそう言って、ふう、と落ち着いて息を吐く。
「え?どうして?」
今話しちゃおうよ、とエルは言う。
「もう6時回っちゃってるよ?登校時間は6時10分までなのに遅刻する気?」
私は、遠くから見える塔の時計を指さしてそう言う。
まぁ私も忘れかけてたんだけど。
「あ!早く戻ろう!執事には散歩って伝えてるけど流石にこんな学院内で1時間もいないのはちょっと心配されるし…今後の行動に支障が…!それじゃあ先に戻るね!」
そう言って、エルは走って行った。
た、確かに1時間もいないのはおかしい…しかも私、庶民だから余計心配される……!!
「やばい!私も早く戻らないと…!!」
そう呟いて、私も走って部屋に戻った
ーーーーーーーーーー
「遅すぎます」
ムスッと、怒ったような顔をしてそう言うルイさん。
「ご、ごめんなさい……あ、でも危険があったわけじゃないので、ご安心を!さて、早く行かないと遅刻ですねー!……間に合うかなぁ……」
実はエルとの出会いの場所って人気がない場所なんだよねー…登校する生徒の声も聞こえなかったし。危なかったー…。いや、まだ危ないけど。
「あと5分…しょうがないですね…、もう奥の手です!いつもするわけじゃありませんからね!?」
ルイさんはそう前置きする。
え?ツンデレですか?すっごい萌えま(以下略)
「奥の手ってなんです…っうわ!!」
急にルイさんに横抱き、いわゆるお姫様抱っこというやつをされる。
え、え、え、え、え、え
戸惑いと恥ずかしさで頭は混乱し、顔には熱が集まる。
「え、る、ルイさん!?あ、あのなんですか!?」
私は噛みまくりながらもそう言うが、ルイさんは、
「少し黙っていてください」
というだけだった。
「我が声に従い、その身を現せ…スゥ」
静かにそう唱えると目の前から…あれは精霊…!?
「え?ルイさん、精霊使いなんですか!?」
「だから少し静かにしてください。スゥ、今すぐに学院前へ飛ばしてください」
ルイさんがそう言うと、銀色のキラキラした魔力のようなものまといながら、その光を強めていく。
まぶしすぎて目をつぶり、開いた時には、そこはもう学院の前だった。
「おお…!あ、ありがとうございます、ルイさん!」
私がそう言うと、ふぅ、と息をつき、答える。
「いいですから、早く行ってください、お嬢様。お気をつけて」
一礼して、そう言うルイさんに、私も一礼して、
「そ、それじゃあ行ってきます!」
といって、靴をはきかえ、教室まで走った。
「…やれやれ…。私は少し変わった主人の執事になったようだ。…執事の私にお礼、だなんて…」
少し笑顔でルイさんがそう呟いていることを、もちろん私は知る由もない。
なんか、今回は見解とか説明的な感じになった…?
まぁ、次の話もなっちゃったらごめんなさい