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 ソーッとエルと最初に出会った場所である、裏庭を影から覗き込む。


 エル…は……いない?エルも遅刻中ってこと?つまりここで待ってエルが来たら怒れる感じ!?私は自分を棚に上げれる感じ!?


「よし、じゃあエルを堂々と待つか!」


「おい」


 ふー…危ない危ない。とりあえずちょっと待って来なかったら、帰ればいいか。


「おい」


 さて、待つまでなにしよっかなぁ。


「おいこのバカ女」


「うるさいなぁ、私はバカじゃな……え、エル……」


 後ろを振り返れば、怒気を帯びた顔つきのエル。


「お前、どこ行ってた?」


 うわぁ……めっちゃ怒ってる…


「いや、ちょっと足止めを食らって…」


 背中に冷や汗をにじませながらそう言う。


「へぇ…それは言い訳の一種か?」


 冷たい声でそう言うエルに、ゾクリとする。


「いや……真実…っていうか…ど、どうして私の後ろに?」


 危機を感じた私は話題を展開させようとする。


「来るのが遅いから、誰かに見つかっていじめにでもあってるのかと思ったから探しに行ったんだが?それじゃあなんだ。ソーッと陰でひそんで堂々と待つ?お前なんか探しに行かなきゃよかった!!」


 半ば叫んで言うエルにやばい、マジ切れだ…と思いながら言葉を返す。


「わ、私だってちゃんと早めに出てたんだよ?で、でもルイさんがドアの前にいて、ずっとドアの前にいるから休んでほしいって言って、私はまだ手は出されないとかそういう話もして、じゃあ時間が過ぎて遅刻しちゃったー…みたいな」


 てへ、と笑いそう言う。


「…で?言いたいことはそれだけか?」


 怖い怖い怖い怖い、鬼の形相なんですが!?


「え、っと、どうもすみませんでした!!!」


 私は土下座しながら必死にそう謝った。


「……はぁ……そういえば、執事とそういうの決めてなかったんだな。まぁ、知らなくて当然か。次は遅れんなよ。…次遅れたら、もうお前の前でエルの本来のキャラはやらない」


 ちゃんと謝ったら表情を和らげそう言ってくれるエル。


「……エルのキャラにならない……?」


 そ、それはもう可愛らしい笑顔も可愛らしい口調も私は拝めないってこと…?


「ごめんなさい!もう一生遅刻しません!たとえ先生に呼ばれようと魔法の攻撃を受けようと階段に突き落とされようと絶対に向かいます!!」


「いや、先生に呼ばれたなら先生を優先しろ……魔法の攻撃ってそんなめったに起きないし。階段に突き落とされるってお前は可能性あるから怖いわ……」


 たとえいじめられようともエルを優先する!!そうだ!ノートの決め事に書いておこう!そうしよう!


「…ていうか俺を呼んだ訳は?」


「そ、それはもう遅刻してしまった私に対するバツですか…?」


 私がそう言うと、一瞬訳がわからなそうな顔をして、すぐに面倒くさそうな顔をするエル。


「…僕を呼び出した訳ってなぁに?」


 可愛い笑顔でそう言うエルに、私は思わず、


「好きです!」


 私と言ってしまった。


「…え、ご、ごめんね…」


 困惑したようにそう言うエル。


 真面目にフラれた…。


「そんなすぐにフラなくても…って用件はそれじゃなくて。これからの物語について…です!」


 私はビシッとキメ顔をきめてそう言う。


「ああ、なるほど……僕ら転生者は物語を知ってるとはいえ、その通りに動けるとは限らないしね…」


 そう。コンピューターじゃないからどうしても物語にズレやゆがみが出てしまう。


 そしてもう一つの疑問と可能性。


「一つだけ聞きたいんだけど、隠しキャラって知ってる?」


「隠しキャラ?…ってたしか心中エンドの?うーん…やってないから思い出せないなぁ…でも条件があったでしょ?」


 え


「条件!?そんなのあったっけ?」


 あれ、そんなの覚えてない……いるのは覚えてるけどそれだけだ…


「あ、これは公式に公開されてるわけじゃなくて、姉さんに聞いたことだよ。だから知らなくても無理はない…けど隠しキャラ、やったことないの?」


「いや、あるよ?でも思い出せなくて……」


 思い出そうとすればするほどわからなくなっていく。


「それは…転生させた人がいて、その人が消した…みたいな?」


 それは確かにありえる。転生自体が存在してるんだし可能性はある。


「それもありえるのかも。じゃあその仮定でいったとして、どうして私たちを転生させたんだろう?」


「そうだなぁ…ファンタジー小説みたいに神様に会っていて、転生を僕らがお願いした。でも僕らは記憶を消されてる…っていう可能性がありそうだけどその疑問を突き進めてもゴールはないと思う。それに主旨が変わってるよ。物語について、でしょ?あと、条件」


 そうだった!


「ごめん、すごいそれちゃった。物語について、なんだけど隠しキャラの条件って?」


 条件を聞いておけば出てくることはない…!


「んーと、たしか、すべての攻略キャラの好感度を一定あげておくこと。だったかな?」


 …なん…だと……!?


「そ、それはつまり私は全員の出会いイベントをいなければいけない…と?そ、そんな……」


 出会いを一回でもすればそこから好感度をそのままになんてできるか…?


「…しかたない…いや、でも…」


 私は得損を中心に考える。


「…まぁそれはあとで考えて?本来の主旨に戻そうよ」


「それもそうね……あ、それについて、ある可能性を考えたんだけど」


 私は気持ちを切り替えてにやりと笑う。


「可能性?」


 きょとん、とエルは聞く。


「そう……他に転生者がいるか否か…とか?」



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