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……うん、意味が分からない。
とりあえず専属執事ってなんだ。
いや、さっきの説明でわかったけどそうじゃなくて、みんなについてるお金持ちすぎるでしょ、なんなの?きっと設備もいいんだろうなぁ……ってそうじゃなくて。
「…え…っと、とりあえずルイ…さんは、身の回りのお世話をしていただく…ということですが」
「はい」
「たとえば何をしていただけるのでしょうか?」
ずっと部屋にいるとかはさすがに拒否させていただきたい。うん、ノートとか、まぁ私の行動とか…いや、変なことはしないけど、たまに身悶えはしそうだな、なんて…いや、それもおかしいんだけど。
「お嬢様のご要望かかなえさせていただくつもりです。基本的には、お食事、洗濯、掃除、などの家事全般などをさせていただきます。その他何かご要望はありますか?」
…あ!執事!
思い出した!
そういえばいた!なんか何でもしてくれる人!
なるほど、ゲームの中だったから抜けてたり忘れてたり流したりしてるなぁ、私。
というか家事全般してくれるって、私ダメ人間になっちゃうじゃん。
…掃除、ってどこまでされるんだろう。
本の中身とかノートの中身も見られるのかな…いや、さすがにそんなことはしない…?
まぁ、攻略とか書いてるからそのノートは隠す方向で……
「要望、はない…です」
多分…
「そうですか。お部屋には届けられた荷物がございます。お嬢様のプライバシーもございますので開けてはおりませんが、申し付けられれば、お嬢様の食事中に済ませておきますが」
ああ!荷物!忘れてた!
「いえ!自分で開けます。入ってもいいですか?」
そう聞くと、サッとルイさんは体を横に移動させる。…ゆ、優雅だ。
「どうぞ」
そういって、ルイさんは、部屋の扉を開けた。
「あ、ありがとうございます…」
少し遠慮しながらも、中に入る。
すると、その中の広さと、景観に圧倒された。
「うわぁ…」
きょろきょろとあたりを見回す。
部屋の中には、基本的家具、ベッド、机、クローゼット…が並び、私の荷物である、カバンの数々も置かれていた。
「え、っと、ご飯はいつ食べるのでしょうか?」
「お嬢様の希望がありましたらそちらを優先に、基本的には今から3時間後の午後7時となっております」
3時間後…
「じゃあ、7時にご飯を食べます。時間まで片づけをしてもいいですか?」
「もちろんでございます。お食事はお部屋でとられますか?食堂でとられますか?」
そこも選べるのか!
うーん、ご飯までに部屋の片づけが終わらなそうだなぁ…。
「食堂でとります」
「かしこまりました。では、ご用があればまたお申し付けください」
失礼しました、とそう言って、ルイさんは出ていった。
す、すごい優雅だ……
でも話を聞く限りではちゃんと私の要望が優先されるんだなぁ。さすがだなぁ…。
「…さて、片づけしますか…」
私は独り言をつぶやき、作業に取り掛かった。
ーーーーーーーーーー
2時間後、意外に荷物が少なかったのか、早く片付け終わった。
「ふぅー、終わったぁ!よかったー、行く前に選別しておいて…」
ああ、思えば、家出の選別が一番大変だったなぁ…。
私は遠い目をしながら思いを馳せてみた。…が、すぐに柄ではないな、とやめる。
「お嬢様」
「はっいっ…なんですか?」
びっくりして、返事を噛んでしまった。…不可抗力だから。
何事もない顔をして、ルイさんの方を向く。
「片づけが終わったのであれば、お食事でもいかがですか?」
ルイさんも何もなかったかのように話してくれる。あれ、なんだろう。この際大笑いしてくれた方がよかった気がする。
「あー……そうですね、じゃあ食事でもとろうかな…」
まぁ、どうせ暇だしな…
「では、どうぞこちらへ」
そう言い私を促すルイさんは、とてもすてきだ。
「あ、はい」
部屋を出ると、まばらだが、ほかの生徒も歩いていた。執事を連れて。たぶん私と同じく食事をとるんだろう。
この世界の晩ご飯はなぜか早い。
3時に食べる人もいるし、4時に食べる人ももちろんいる。
7時だと、少し遅めと判断されるそうだ。
……7時がベストだろう……
私はこの話を聞いたとき、真っ先にそう思った。まぁ、誰にも言わないんだけど。
「こちらは、お風呂でございます」
ルイさんは、食堂までの道も一緒に案内してくれた。
「あれ?お風呂って、部屋にもありませんでした?」
たしか、玄関を入って、トイレ、お風呂と並んでいた気がする。
「お嬢様の中には、集団のお風呂を希望される方もいらっしゃるので、作られたのです」
「ああ、なるほど…」
まぁ、数多くのお嬢様でもそういう人がいるんだなぁ。
…ていうか希望があったから作るってすごいな……
そんな話をしていると、食堂に着いた。
…そして驚くことなかれ。
…まばらに人がいた中で、私は見つけてしまった。
__レイン・カルディとエル・カトリーヌが楽しげに話しているのを。
……別にね?
なんでここにいるの!?とか、そういうのじゃないの。
というか、食堂もすっごいわ。
本当に食堂?レストランじゃん。それも高級レストラン。
ああ、怖い。
金持ちって怖いわぁ…。
って、そうじゃない。
どうして、エルとレインが一緒にいるの?
いや、まあ、一緒にいるのがだめとかじゃないの。
レインはともかくエルは知ってるよね?
攻略対象キャラが一緒にいたら誰だって驚くし、怖い。
あ、ああ……。
遠い場所に…あっ!!
「ル、ルイさん!」
すぐにルイさんの方を向き、呼ぶ。
「はい、なんでしょうか」
「わたし、あそこの席がいいな!?」
必死にそう訴えかける。
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
ルイさんは、私の願いにすぐに答え、そう促してくれた。
ああ、ありがたや。
私はそう思いながら、見えずらく、遠い場所の席に着いた。