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ちょっと展開がばんばん変わるかもしれないです…
今、私は教室の前にいる。
立たされている、とかそういうのじゃなく、入れないのだ。
…怖すぎて。
特に奇異の目で見られることが嫌だ。どうしよう、マジの方でどうしよう。
スーハー…
私は、一つ、静かに深呼吸をして、扉に手をかける。そして覚悟を決めて、ガラガラッと勢いよく、ドアを開けた。
クラスの目が私に向く。私は、こぶしをギュッとにぎり、前へ進んだ。
し、心臓がドックドックいってるよぉ……
「お前は…マリーナ・アディソンか?」
教卓に立つ先生に呼び止められ、そう聞かれる。ドクドクと心臓の音を聞きながら、私は答えた。
「…あ、はい。マリーナ・アディソンです」
なにか言われるのだろうか?た、退学とか…?と嫌な方向へ考えが進んでいく。
そ、それともクラスを
落とされるのだろうか?それは万々歳なんだが、エルの顔が見れないのは…
「席はあそこだ。カトリーヌの横の、窓際の空席。早く座れ」
と、とくに説教もなく言われた。
「え、あ、はい」
……え?
え、え、え、え?
お説教なしなの?それともあとであるの?
いや、怒られるのが好きってわけではないんだけど、あ、でもあの先生に怒られるのも萌える……ああ、今のはなし。なしだ。私はMじゃない。断じて違う。
私はどういうことかわからず、半ば混乱しながら、席に座る。
隣はエル。チラリとそちらに視線を向けると、エルもこちらを見ていた。呆れたような、心配そうな、よくわからない顔。
「……お前…どこいってたんだよ」
小声で、心配そうにエルはそう言った。
突然飛び出した私を心配してくれていたようだ。
まぁ、とりあえず…
「口調が違う」
私も小声で、怒りを含ませた声色で言う。
「…はぁ、そういう問題じゃないデショ」
エルはそんな私に呆れたようにそう言う。
「…どうして、お説教を受けないのかしら?」
私はさっきから考えていたことを問う。すると、突然、ドヤ顔をするエル。かわいいけど、突然なんだ?
「僕のおかげだよ?感謝してほしいよね!」
小声だが、はきはきとそう言った。ああ、いい……
「どういうこと?ああ、でも表情はそのままでね?かわいいから」
私が普通にそう言うと、顔を顰められた。ああ、残念…
「僕が状況を説明したんだ。いやぁ、物わかりのいい先生でよかったよ~。庶民があんなことをして貴族のご令嬢様に目をつけられる、っていうのもわかってるみたいだしねぇ」
ああ、なるほど……。
「それは、まぁ、ありがとう……?」
「いや、なんで疑問形なんだよ…」
だって、エルがそういうことをしたってことは、そのご令嬢様も見てるってことで、つまり余計目をつけられるってことで、ってあーー、もう!
「余計目をつけられたっ!」
ぐっと、こぶしを作り、苦々しげに私は呟いた。
ーーーーーーーーーー
授業はないので、今日は学院の説明で終わりのようだ。
みんな、各自に帰ったり、友達と話をしたりしている。
私はというと、ただ椅子に座って、教室を眺めているだけだ。…だってすることがないんだもの。
とりあえず、寮にでも戻って、荷物の片付けでもしようかなぁ、なんて考える。
寮、というのも、この学院は王都…国の中心にあるため、私のような庶民や、一領主の娘などは通いづらいのだ。そのため、魔法をより良い環境で学んでもらうために寮がある。
まぁ、もちろん独り立ちしたい、という貴族も寮を使うのだが。
ただの庶民な私は寮を使うほかないというわけだ。…しかし、ここで嬉しいのは、全員、1人部屋というところだ。
庶民だろうが、貴族だろうが、1人一つの部屋が与えられる。…お金がある学校ってすごいね。
ほかにも何か特典的なのがあったような…まぁいいか。
さて、どうせすることもないんだし、帰ろうかな、と立ち上がった時だった。視線の端に同じく立ち上がる男が見える。
こ、これは…
ソッとそちらに視線を向けると、レインだった。しかもこちらに向かってきている。
マズイ!
このまま話しかけられて、一緒にいるパターンだ!!
私は逃げ道を視線で探し、すぐに実行。
レインに呼び止められぬまま、教室を出た。そして、そのまま寮の方へと向かう。
早歩きで、時折後ろを振り返りながら進めば、レインは追ってきてはいなかった。
…ふぅ……
ビックリしたぁ…急にこっちこようとするんだもん…あれ、それとも違う人だったのかな…?
まぁ、追ってきてないしそれもあり得る…え?それじゃあ、私すっごい恥ずかしい人じゃん!!
羞恥心で早足になりながら、寮へと向かうのであった。
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「はじめまして。ルイと申します。マリーナ様の身の回りのお世話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
無表情でそう言う…ルイ…さん。
……え?
寮に着き、自分の部屋に向かうと、目の前に男の人が立っていた。どういうことかと混乱しているときに言われた言葉に、頭が回らない。
「…あ、はい…マ、マリーナ・アディソンと申します…よろしくお願いします」
とりあえず私も自己紹介をして、一礼する。
…し、執事……
わ、私庶民だよね?え?執事とかもいるものなの?
「あの…私、貴族じゃないんですが……」
「寮に住んでおられるお嬢様、ご子息様に1人、専属で付いております。これは、絶対ですのでご了承ください」
え、絶対なの?
「…あ、そうですか……」
訳が分からぬまま、私に専属執事ができました……?
次回は続きです