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 入学式が終了後、全員にクラス表が配られた。

 私は…Bクラスか…あっ、エルと一緒だ!おお?レインもいる!?


 こ、これは…回避できないレインの出会いイベントですね。というか、もう出会ってるけど。



 他の攻略対象者は、Aクラスなので出会いイベントといえば、中庭だったり、階段だったり、廊下だったり…つまり教室の外なのだ。


 ということは…



 回避可能!!


 全身全霊で回避します!!


 絶対私の元に現れるなよ、Aクラス!!



ーーーーーーーーーー


「っな!お前!」


 そうでした。Aクラスばっか考えてもう忘れてしまってた。


 Bクラスにはレイン・カルディがいるんだった。


 というか、私を指差して声を上げるのはやめて。周り見て。すごく目立ってるから(主に女子から)


 なんなの、あの女。レイン様と親しげに。って聞こえてきてるから。

 私喋ってないのになんで親しげ…?



「あー…久しぶり…でございます」


 普通にいこうと思ったら女の子達に睨まれた。…怖い。


「?堅苦しいのはいい。昔も言っただろ?」


 やめてぇぇええ!


 庶民っていうだけでもいじめられる要素あるのに、レインと昔からの知り合いなんて、女の子達になんて言われるか…!


 私は友達が欲しいんです!!


「…いいえ、私は一庶民、あなたのような貴族にタメ口で話すなど出来ません」


 私はあなたが察しがいいと信じてる。だからどうかこれでわかって。貴族を呼び捨てなんて周りになんて言われるか!


「?昔からタメ口だっただろう?」


 ……。


「…私などと話す暇があるのであれば、勉強の一つでもなさったらどう?」


 私は抑えきれない怒りとともに、冷たくそう言い放つ。


 まずい、言葉が乱れた。


 そう思いながらも、私はこれ以上目立つのはゴメンだと、教室をさっさと出てしまった。


 ……



 なんでこうなるのぉぉおおお!!



 私は全速力で走り、逃げる。やがて体力が尽きて、止まった。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 走ったせいですごくしんどい。疲れた……。


 …とっさに逃げてきたけどこれ1番入りづらいやつじゃん。それに絶対先生来てるじゃん。……最悪だ……。


 私は、絶望にかられながらも、どうしようかと思案する。


 そんな時、


「なにしてるんだ?」


 と、とってもかっっっこいい声が、聞こえた。


 …こ、この声は……


「今は自己紹介中だろう?抜け出してきたのかい?」


 優しい笑みでそう問うのは、エディッタ・マオーラ。


 なんでこんなところで出会いイベントが発動されるの…!


 私は己の迂闊さを恥じ、どうするべきか考える。


「…あ、み、道に迷いまして、あ、私、マリーナ・アディソンと申します。えぇっと、あなたは…」


 困ったように(割と本気で)そう言い、彼の返答を待つ。


 もちろん名前は知ってますよ?でもね、聞かないと不審でしょう?


「君、僕を知らないのかい?一応、貴族界では有名なはずなんだけどなぁ」


 聞いたほうが不審に思われたぁ!!


「あ、私はしょ、庶民の出ですので…申し訳ありません」


 多少噛みながらも私はそう返す。


 非常にまずい。自己紹介をしたのは私で、名前を求めているのも私。

 全部私の行動によってイベントが成立されつつある…!


「そうなのか、君が噂の…ああ、僕はエディッタ・マオーラ。同学年だ、仲良くしよう。僕のことはエディでいい」


 笑顔でそう言う、エディ。もちろん心の中では遠慮なく呼ばせていただきますよ?心の中ではね?でもね、リアルでそうはいかないんです…!


「いいえ、あなたは公爵様。私ごときの庶民が呼んでもよろしい名前ではありません」


 私は背筋を伸ばし、そう告げる。よし、言ってやった!これで去ればとりあえずイベントが終わり、避けまくれば好感度が上がることもない!


 しかし。


 現実はそう上手くはなかった。


「…へぇ、君、僕が公爵位って知ってるんだー…おかしいねぇ、名前は知らないのに、爵位だけを知ってるなんて」


 目を鋭くさせ、そう言うエディ。

 こっわ!!


「っ!いいえ、名前は存じあげませんでしたが、家名を知っておりまして…」


 私は目をそらしながら、そう言い訳する。


「…ほぉ、そうなのか」


 と、納得はしていない様子だが、そう言って話を終わらせた。


「そ、そういえば!エディッタ様はどうしてこんなところに?自己紹介中、というのはお互い様では?」


 これ幸運とばかりに、私は思いっきり話を逸らす。


「ああ、面倒くさいので出てきた。君は…AクラスにはいなかったけどBクラス?それとも道に迷って辿り着けてないだけでAクラス?」


 私は話を逸らせたことと、そこからの話題転換にホッとしながら、エディの質問に答える。


「あ、私はBクラスです。…でもどうしてAクラスかBクラスだと?」


 クラスは全部でEクラスまである。クラスの分け方は、一に魔力、二に学力、三に礼儀…となっており、それと同時に実は爵位も少し関わっているそうだ。


 なので、庶民はEクラス、という共通認識がある。よって、AクラスかBクラスという考えは少しおかしいと思ったのだ。


「そりゃあ、これでも公爵位を持っているのもの、目を肥やしてるってことさ」


 エディはそう言っていたずらに笑った。



 ……くっ!!


 さすがはイケメン、こんな姿もかっこいい!!


「…あ、そろそろ行かないとね」


 エディはそう言いながら、Aクラスの方向を眺める。


「そうですね。私のようなものに時間をとっていただき、ありがとうございました、エディッタ様」


 私は精一杯の一礼をしてそう言う。


「うーん、固いんだけどなぁ…まぁいいや。こちらこそ話に付き合ってくれてありがとう。それじゃあ」


 苦笑してエディはそう言い、手を振りながら歩いて行った。


 …ふぅーー……


 疲れた。まだ1日すら経ってないのに疲れた。


 出会いイベントが多すぎる。


 これは危険だ。もうプライドを捨てて命を取ろう。

 今すぐ教室に戻ろう。


 私はそう思いながら、Bクラスの教室の方へ体を向け、歩き始める。


 あー…、行きづらい。


 私は精神的疲労を感じながら、教室に向かった。



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