問答へと至るまで
書き直しました
さて今日で俺は三歳に成る…。
親に聞いた話に依ると三歳の誕生日に精神世界に行かされるそうだが…どうなるのだろう。
姉の愛歌は三年前に行ったことが有るのだし聞いてみるか。
子供ぽさを出すため声を間延びさせる。
「愛歌~」
「なに?流導」
「精神世界ってどんなだった?」
「何もなく只問いだけが有るって感じね」
…問いって言葉を六歳が喋れるのか…とも思ったが惚けた方が良いだろうし惚けるか…。
「問い?」
「今流導が言った様に何かを聞く事よ」
「成るほど…問いだけが有ると…どんなことを聞かれた?」
「人によって違うらしいから余り参考に成らないわよ?」
「それでもお願い」
「難しい言葉を使うけど勘弁してね?力を一つ選べと言われたから考えてみたのだけど…私の固有魔法の絶対領域は…言わば現象の否定系なのだけど…。こう言う力はそれを上回る力に弱いって相場が決まってるのよね…。だから力の強化魔法を選んだのだけど…。その真逆も良いって話に成ったから弱体化魔法も取れたんだよ…完璧に付加術師よねこれ…まあ良いんだけど」
…成るほど基本は一つで対極の奴も良いって成ったから結果として二つか…。
十も最初にスキルが取れるゲームとかと比べるならかなり少ないけど一つ二つでも無いよりかは有り難いし良いか。
…下手に何かを言うよりかは流した方がいい気がするな。
「ふーん…二つ選べたんだ…でも本当は一つだけか…何が良いかな」
「あんたの固有魔法は基本何でも出来るんだから武器に成る力が良いんじゃない?」
「武器に成る力…か…物語の世界に入れる力って無いかな?」
「普通無理よ?」
「魔法には不可能は無いはずだよ?」
「…うーん…物語の世界とこの世界は次元が違うから入れないのよね?ならそれをどうにかすれば入れるんじゃないかしら?」
…それだっ…けど次元って言葉を三歳に成ったばかりの奴が知ってる筈もないし聞こう。
「次元が違う?次元って何?」
「…簡単に話すと最初に零次元から言うと零次元とは世界に射す光なのね…全ては光から出来たって話が有るけど説明に宗教が絡むから詳しくは言わないわ…一次元はちょっと待ってね…鉛筆と紙を取ってくるから…」
零次元なんて有ったんだ…。
「有った有った…速い話」
紙に点を書き加える
「これが一次元」
解ってるがここは聞こう
「この点が?」
「そうそしてこれが二次元」
点に横と縦の線を加え此方にみせてきた。
「線が二次元なの?」
「そうね…そしてそれに幅や高さを加えたのが…三次元」
立方体の四角形を書いて見せてくる。
そして自分を指差しながら定番の疑問をぶつける。
「つまり今の此処が三次元?」
「そう考える人は多いし単体で見たら間違いではないんだけど…うーん…三次元では淡々と時間は過ぎるだけなんだよね」
解ってるが聞こう。
「何が違うの?」
「三次元には時間って軸が足りないの…無い扱いも出来るんだけどどう言えば良いのか微妙な所ね…秒速何メートルの速さが有っても一秒すら無いなら動けないでしょ?」
「つまり説明上動く為に必要な考え方って事?」
「そうなるわね…それに時間と言う変更出来る扱いの軸を加えたのが四次元…。時間を過去も未来も同時に見れるから介入して変更出来るし色々と酷いわね…五次元より上は考え方に依って違うしと言うかぶっちゃけ簡単に説明は出来ないから好きな解釈で構わないし今説明する必要も無いわね…神の救いとかも説明されてるけどまあ良いか」
そっちは興味有ったんだが普通は必要無い概念だしまあ良いか。
「…創造と破壊と崩壊とか平安とか…説明が面倒過ぎるわ」
…ん?
「ちょっと待って…五次元だと創造と破壊が出来るの?」
「出来るらしいわ…下位次元に対してだけどね?この三次元でも出来る事よ?イメージや創作とかでね?」「未来も過去も見れるって事は過去視と未来視が出来るって事だよね?…なんか酷くない?」
「アカシックレコードが見れるみたいな物なんだから別に構わないんじゃないかな?どうせ絶対じゃないし」
「なら次元を扱う力が良いね…次元…に何を付け加えよう」
「次元昇華なんてどう?」
「それだけだと帰れなくなるよ」
「私の例が有るし真逆の力も手に入るわよ」
「真逆って言うと次元降下?」
「なら決まりねそれを貰ってきなさい」
「両方出来る力が有ればあと一つは自由に出来るし出来れば一つで説明したいけど」
「なら両方に変換するって奴で次元変換が良いわね」
「それが良いね…最初に言ってよ」
「まあ良いじゃない」
「まあ確かにそうだけど…」
「じゃあ母さんと父さんの所に行って精神世界に行くって言って行ってきなさい」
「解った」
そして愛歌の元を離れ父さんと母さんの所に行くことにした。我が家は二階まである一戸建てだ。
さっきは一階の部屋に居たから階段を上がり、両親が居る部屋へと向かう。
「父さん、母さん、掴みたい力が決まったから精神世界に行きたい」
「お…決まったか?」
「何にしたの?」
「次元変換ってのにするつもり」
「次元変換?その歳で次元の話が出るとはどうしたんだ?」
「物語の世界に行きたいって成ったから愛歌に聞いてみたら次元変換が良いんじゃないかって…次元の説明も受けたから説明は必要無いよ…五次元以降の説明はおおざっぱだったけど…」
「解ってるなら良いのよ」
「しかし物語の中に行きたい…か…面白い事を考える物だな…。私の場合は固有魔法の補助の力を選んだが流導の固有魔法の力には必要無いもんな」
「しかし異常な力に成りそうよね」
「だな…姉は否定系だし弟は…何系だこれ」
「次元系じゃ無いの?」
「そうね…でもどうする?あなたは自分の固有魔法を見せるとか言ってわくわくしてたのにそれ以上のが来ちゃったわよ?」
「良いさ…この固有魔法のお陰で多分私だけの裏技が出来るんだから」
「座標が解るか行ったことの有る場所に対して橋を掛けてゲートを開き渡れる様にする力…座標が解るだけの場所にも行けるのは固有魔法だからこそ…お陰で移動時の渋滞とかには殆ど引っ掛からないし楽で良いわよね」
「まあ何かに入る際の行列とかには並ばなきゃ成らないけどな」
…平然と言っているが移動や搬入チートとしてはかなりやばいんじゃね?敵国の国の城壁の中に軍を召喚とかやれちゃうよ?
「固有魔法だったんだ移動に使ってた魔法…魔道具だとばかり思ってた」
「そう言えばそう説明してたんだったか…そう言う魔道具も確かに有るがそれは魔道具その物が行ったことの有る場所のみに限られるって面倒な制約が有るんだな」
「使うやつが行ったことの有る場所に行ける奴じゃ無いんだ……ついでに聞くけど多分父さんだけがやれる裏技って何?」
「固有魔法が橋を掛けてゲートを開く力だろ?」
「それが?」
「これは精神世界にも行けるのさ…まあ精神だけをだがな…それと一度しか本来出来ない力の再取得が精神世界に行けるって事で出来るんだよなだから必要なら手札を変える事が出来るんだよ」
「そんなのって有り?」
「固有魔法って物によっては理不尽な物があるからな…お前の固有魔法の様に」
…あれは事前に話し合って決めただけで…必然的なんだよ。
「全部の事が出来る力ってある程度は存在するけど…そんなに貴重?全部の事が出来るって事は一つ一つの熟練度が上がる総合的な時間が掛かりすぎるって事なんだけど」
「戦場で器用貧乏か一芸特化になれと言われたら自分一人しか居ないなら器用貧乏…チームプレーが出来るなら一芸特化って選択が正しいはずだ…一人なら全てをやれなきゃ成らないがチームが居るなら出来ない事はチームメンバーに任せりゃ良いんだからな」
「このままじゃ器用貧乏に成りそうなんですが…」
「全てが使えるって言っても使う頻度が高いやつは有るだろう?それを全属性ごとに二つ三つづつ配置しておけば何々の属性しか効かないって奴でも問題無く対処出来るはずだ…まあ独自の属性を固有魔法で持っててそれしか効かないパターンも有るから全てがやれる力だろうが熟練度は場合に依っては零に近い状態で戦わされる事も有るかもしれんが」
「それずるくない?殆どの奴と戦って勝てるよ?」
「全部って言わないって事は気付いたな?反射とか制御を奪うとか自滅させるとか等がやれる場合は勝てるからな…」
「勝ち方が有るから絶対ではないけど対抗手段を他の奴の固有魔法か何かで全部潰された場合がやばいわよね」
「そうだな…そう言う奴はチーム戦でこそ真価を発揮する…そう成った奴とは俺は固有魔法が攻撃系じゃ無い以上戦いたく無いね」
「チームで戦う事が前提の最強か…なんだかそう言うの良いね…そう言うのが居たらぜひ友達に成ろう」
「確かにお前の力なら今言ったサポート役にはなれるはず…これは教えない方が良かったか?」
「こら…そう言うこと言わないの」
「すまんすまん…よし俺が精神世界へとお前を連れていっても良いが他人の精神世界は厳密な座標が無いから他の手段で渡った方が確実なんだよな…俺の精神世界にならいくらでも招待出来るがそんなのは今は必要無いだろうし…ってな訳でちょっと待ってな…魔道具の水晶を出してくる」
「流導は床に横に成りなさい…精神世界に行ってる間は気絶してるのと同じだから」
「解った」
そして俺は畳の床に横に成った。
そこで父親が戻ってくる。
「横に成ったのか…なら此処に水晶を置いて…紫水…お前も手を水晶に触れてくれ」
そして母親の名前を告げて水晶に触れる様に促す。
「詠唱に親の名前が一応必要だし…まあ無くてもやれなくは無いが…それはあくまで応急処置的な物だし…流導も水晶に触れてくれ」
「解った」
そして水晶に触れる。
…生前って言うと変だが前の俺の居た世界でも水晶はパワーストーンだった。
…この世界では精神世界を開く力が有るのだろう。
「彩上翠玉と彩上紫水が願い奉る…彩上流導に選択の問いを与えたまえ」
そして水晶が光輝き俺は意識を失った。