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ハロ  作者: アキヒト
1/5

ニコラの話

ママの手を頼りにしていて着いたのは、私の知らない場所。

 ママはずっとママと同じ髪と、肌と、目の色をした人たちと私の知らない言葉で話してる。

 私が遊んでほしくても、ママは「後でね」と言ってすぐにお話に戻ってしまう。私にはママしかいないのに。

 パパがいなくなったから私はこんなところにいるんだ。パパのこと、大好きだったのに。大嫌いだ。

ここは私を一人にさせる。仲よくしてた友達も、パパと遊んだ公園も、私を知ってる人も場所も、ママ以外は無くなった。

 ここに来てから私はかなり変わったと思う。私は男の子たちよりも足が速くて、いっつも元気いっぱいに遊んでた。ママに、「おてんばさんね」ってよく言われてた。けど、近頃の私はずっと泣いてばかり。

 そんな時にママは私を連れて近くの教会に連れていってくれた。私は久しぶりに私に構ってくれたママの気持ちが嬉しくて、ママの手を握って歩いた。けど、歩いて色んな人とすれ違うたびに私の気持ちはしぼんでいった。みんな私の髪と、肌と、目の色のことをコソコソと話していることはもう分かってた。

 教会についた時にはもう私は泣きそうだった。入ってマリア様の像に向かって「私はもう天に連れてってください」と思わず願ってしまうくらい。

 その時

「こんにちは」

 私の目の前に男の子が立っていた。ママと同じ、日本人の男の子。その子と目が合った時、私の何か、何かが弾けた。弾けた何かは私のなかでビュンビュン飛び回って私の心をつっついてきた。すごく、すごく、くすぐったい。

 ママはその男の子と話してる。なんだか知り合いみたい。ママと男の子が話してる間、いつのまにかその男の子の顔を見つめていた。短髪で目が少し下がってる優しそうな顔。どれくらい見てたのか分からないけど、ママと話し終わった男の子と目が合った。私は慌てて顔をそらしてママの背中に隠れる。ママは「ほら、ちゃんと挨拶しなさい。大丈夫よ、このお兄さん英語は少しなら分かるから」と言って私の背中を優しく叩いて、私を前に押し出す。えっ、えっ、えっと。挨拶、挨拶。そ、そうだ、名前。

けれど、私が慌てているうちに男の子が先に言った。

「こんにちは。僕の名前は――です。よろしくお願いします」

 それはとてもたどたどしい英語の挨拶。

 その挨拶で私の中をポップコーンみたいに飛び回っていたものはようやく落ち着いてくれた。

「こんにちは。私はニコラ。よろしく、お願いします。ハロ」

 そう言うとママとハロはお互いに顔を見合わせる。ママが何か話すと、ハロとママはお互いに少し笑い合った。何?何か変なこと言った私?混乱してる私に「あのね、ニコラ。この子はね…」と耳打ちする。その様子をハロは、私が大事な人は、優しく微笑んで見ていた。


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