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第四十六話 久しぶりの邂逅、木綿のハンカチーフ


元亀2年(1573年)

岐阜城の一室にて食事。久しぶりに全員が揃う一家団欒である。




「まいった…隠居どころの騒ぎじゃなくなっちまったなぁ」


 後世での評価では戦国のチート集団とまで呼ばれた武田騎馬隊を破ったのはいいが、よもやこんな問題に直面するとは思わなかった。

 そもそも俺の息子だぞ?

 一応公立から国立大学へストレートで進学しているし、スポーツもそれなりにこなしていた自信はあるが、それでもこの乱世でその程度の優秀さの息子がチートボディを活用して戦功を重ねてきた俺と同様の働きなんかできるわけがない。

 この事は氏郷に後事を託す事で、俺の血筋での能力問題なんて起きないだろうと思っていたんだが、よもやあの爺様がここまで強行に俺の息子を平手当主に押してくるとは思わなかった。

 いや、まてよ?

 俺の息子と考えるんじゃなくて信長の妹、信秀様の娘としての血筋として考えればどうだ?

 でも信長の息子の信雄(前世的な意味の)は暗愚で有名だし、もう一人の信孝くん(前世的な意味の)も特にいいところはなかったはずだ。

 信忠くんは結構優秀だった、暗愚だったと諸説あるが、俺的には武田勝頼を自害に追い込んでここからって時に本能寺だったからな、判断が難しいけど無能な人物ではなかったんだろうと思う。

 今の信忠くんを見ると頭もいいし武もそこそこ、後継者としての不足はなし、との評価を受けている為優秀なんだろう。

 信秀様の息子としてみたら信長は後世では魔王とまで呼ばれる戦国の覇者だし…っていうかアイツは一種の例外的な隔世遺伝ならぬ覚醒遺伝だったんだろうし。

 いや信秀様も凄い方だったのは間違いないんだけどね。

 しかし俺の息子ねぇ…嬉しいはずがどうしてこうなったのか…

 

「とうさま? ごはんたべないの?」


 そう言って咥えた箸を片手に首を傾げる江。

 

「いや、食べるぞ! 父さんはご飯を食べて大きくなったからな! 江もしっかり食べないといけないぞ? わはははは!」

 

 まあ農民時代は飢えていたし全然食ってなかったけどね!

 しかし江は可愛い。

 あまりの可愛さに結構深刻な悩みだったことの9割すっ飛んでしまったくらいだ。

 まさに目に入れても痛くない、江のためなら物理的にでもやってのける所存である。

 

「貴方、せめて食事時くらいは…」


 お市が側で俺の膝に手を置き諭すように口を開く。

 その言葉に俺は頷き返した。

 

「そうだなぁ。こうやって家族揃ってなんて久しぶりだもんな」


 本当に何時ぶりなのか思い出せないくらいだ。

 ふと視線を横に見やると茶々の姿がある。

 最後に見た茶々はもう少し小さくてふっくらしていたような気がするし。

 

「茶々も大きくなったな。凛としている所がお市や信長に似てきてるのかなぁ」


「お父様…ありがとうございます」


 楚々とした仕草でお礼を言う茶々。

 俺の娘とは思えないくらいの礼儀正しさで、まさにエンジェルっぷりである。

 いや、エンジェルって言うよりは月のような、そうセーラー○ーン…いや俺はマーキュリー派だったけど。

 おかしな方向へ思考がむいてしまったが、今度は初を見やる。

 此方も前回会ったより大人びた印象で、美人より可愛いよりの愛嬌のある娘だ。

 

「初も元気だったか? 氏郷に酷いことはされていないか? もしされてたら父さんが全力を上げて大人げない報復を氏郷に加えてあげるからすぐに言うんだぞ?」


「お父さん、氏郷様はとてもいい方ですよ。この前も紅葉が綺麗だったからと紅葉を文に添えて頂きましたし…そう! 最近では……って、お父さん何をなさってるんですか?」


「ふんっ! ふんっ! ふんっ! え? あ、ごめん急に腹筋がしたくなっちゃって聞こえなかったよ。で~…なんだっけ? 氏郷が甲斐性なしの軟弱者だって話だったっけ?」


 いくら武田戦後で、戦の気配がまだないといっても身体は鍛えておかないとね。

 ご飯時といってもそれは決して油断できない時間なのである。

 

「(ダメよ、初。まだお父様はあの結納から頭のご病気を治しておられないのよ)」


「(氏郷様、本当にいい人なのになぁ)」


「(………)」←黙して語らないお市


 俺に聞こえないように語る姉妹。

 実に仲が良さそうで結構である。


「まぁ、氏郷の話なんてどうでもいいか」


 うむ、まったくもってどうでもいい話である。

 

「ああ、そういえば…」


 そう言って先程まで考えていたこととは別に、重要なことを思い出す。

 

「息子の名前を考えていなかったなぁ」


「―――っ」


 びくり、とお市の身体がこわばるのを感じた。

 あれからいろいろねぎらいの言葉をかけたが、俺自身一杯一杯だったこともあってか、お市はまだ少し不安に身を寄せているようであった。

 俺はそっとお市の手を握ると、

 

「俺のことを考えて子供のことを話さなかったんだろ? もしあの時知っていたら戦どころじゃなくなっていたかもしれないからなぁ。そう考えれば武田戦線での功績もお市がくれたような物だ。ありがとな」


「久秀、さま…っ」


「遅れてごめん。大手柄だ、お市!」

 

 その言葉を言い終わる前に此方へと抱きつきすがってくるお市。

 よっぽど寂しい思いと不安な気持ちで入り交じっていたんだろうな。

 それを俺はお市が不義を働いたとか考えていたわけだ。

 本当にどうしようもない亭主だ。

 信長に殴られるのも無理は無い。

 むしろ殴られたりないくらいだろう。

 だが今は、静かに泣き縋るお市を抱きしめることにだけ専念しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『幸之助』

 

 これが俺の考えた息子の幼名である。

 決してどこかの電気会社の創始者であるカリスマの名前ではない。

 この戦乱の世の中で幸せが多くあるように、と願う俺の親父心の現れである。

 平手家も今回の件で盤石ではないと思いしらされた。

 織田家だって信長が本能寺で死んだ後、不遇の道をたどっている。

 そんな中でもより幸せであってほしい、幸せにしてやる時代を作ってやる。

 そんな意気込みでつけた名前だ。

 是非ともこの名前のようにこの子の未来が明るいものであってほしいものだと切に願うよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元亀2年(1573年)

岐阜城にて

 

 

 赤子というのは朝昼関係なく働くものだ。

 働くといっても、赤子の仕事は泣く事であり、夜泣きによって起こされることもしばしばである。

 そんな時には起きてあやしてまた寝かして。

 いやはや、母親というのは根気強いものだなぁと痛感させられる。

 最近は寝不足がちで、一応休暇という名目上岐阜城にいるのだが、眠気が取れず信長の手伝いやらをやっている中で居眠りしてしまうこともあったりする。

 そのたびに長谷部国重アタックが炸裂するのだが。

 

 というのもこの時代の大名家の子ともなれば乳母という母親の代わりに子育てを務める人がいて、ほとんどがその人任せになるんだが、今回のこの子に関してはちょっと事情が違ってきてしまったのである。

 知っての通り今、平手家は爺様派の幸之助、俺事久秀派の氏郷派の家督問題に頭を悩ませているところだ。

 そこに乳母という第三者の影響力を持つ人物が出てきてしまうと、問題が泥沼化してしまうので、お市が自らの手で育てることによってそれを阻止している。

 そのサポートを松さんやねねさんがしてくれている形だ。

 本来はありえない形であり、乳母がそんなに実権を持つのか? という疑問は史実のお江と春日局の確執というお家騒動がまさに乳母と実母の問題のいい例だろう。

 信長も平手家が織田家の筆頭家老ということも有り、だいぶ頭を悩ませているのか、幸之助の関係に関しては非常に敏感だ。

 相変わらず爺様は幸之助推し。

 このままでは平手古くからの爺様時代の家臣対俺の時代からの家臣という図式が成り立ってしまう。

 信長も俺も爺様には世話になった恩が多大にあり、古くからの知己であるためあまり大きくはでれないでいる。

 

 しかし分からないのが爺様だ。

 俺はあくまで養子であり、爺様の実の息子ではない。

 農民である俺に非常に良くしてくれて、当主にまで上げてくれた恩というのは、俺の中では非常に大きな分岐点となっていて、そこに何一つ含むことのない感謝の念がある。

 だからこそ。

 何故このような強行の姿勢をとるのか?

 頑固ではあったが、頭の硬い通り一遍の爺様なら俺は信長の側にはいなかっただろうし、そもそも俺が平手当主になどなってはいなかっただろう。

 

「あ~…わかんねえなぁ!!」


 頭をガシガシとかくも、気分は晴れない。

 やはり俺自身が出向いて爺様と話をつけるしか無いんだろうなぁ。

 俺がそんなことを考えている時だった。

 

「おや? そこにいるのは平手様ですかな?」

 

「ん?」


 振り向いた先にいたのはここに居るはずのない『羽柴秀吉』その人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元亀2年(1573年)

 岐阜城の茶室にて

 


「ずず……」

 

「いかがですかな?」

 

「うん、美味いなぁ。さすがは手先が器用なだけはある」

 

 そう言って茶碗を置き秀吉の手前を褒める。

 そうしてお互いに笑い出した。

  

「いやぁ、お互いに農民の出でお茶してるんだぜ? 信じられないよなぁ」

 

「全くですな。日々の糧を得ることに精一杯だったあの頃を最近良く思い出します」

 

「行商をやってたんだっけ?」

 

「はい。京から関東までひと通りを」

 

 そういえば何かの本で秀吉は薄味を好む西では塩を少なめに、濃い味を好む東では塩を多めにして魚を焼いて売るという工夫をしていたとか。

 斎藤道三の油売りの話からして、歴史に名を刻む人は着眼点が違うと思い知らしらされるね。

 

「そういう経験っていうのが案外生きるのかもな。俺も平手当主になる前は薪売りやら狩りをしていたからなぁ」


 あの頃は実にサバイバルな日常だった。

 イノシシやクマ相手に弓矢もなく徒手空拳で挑んで美味しく頂いていたのは俺くらいのものだろう。

 

「しかし、ホント久しぶりっていうか。文は結構頻繁にやり取りしていたけど、こうして顔を合わせるのはな」


「……その文のお陰でひどい目に会いましたぞ。ねねには一昼夜追い掛け回され申した」


「ははは! 自業自得だろ、それは!」


「しかし世の中にはまだ見ぬ美姫が沢山いましてなぁ。こうして家老になり各地を転々としていると、こう、目移りをしてしまいましてな…」


 その顔はスケベジジイ丸出しであった。

 俺より若いはずなんだけどな。

 いや、その分精力有り余っているんだろうかね?

 

「ったく、その精力が羽柴家の勢いにつながっていると考えれば一長一短なんだろうが、ねねさんとは昔から文のやり取りをしてるもんだからなぁ。ちょいと悪戯心が…」


「その悪戯心でワシの寿命をどれだけ削られたことか…」


 ねねさんとのやりとりを思い出しているのか苦笑いをしている秀吉。

 しかしホント変わらないな、コイツは。

 飄々としているのも相変わらずで、愛嬌がある為話しやすい。


 話しやすい…そうか、コイツなら何らかの指標を示してくれるかもしれないな。

 

「まあ、こうしてあえて嬉しいけどさ。実を言うと俺ちょっと今悩みを抱えていて相談に乗ってくれると嬉しいんだどさ…」


「ふむ……幸之助様のことですな?」


「!」


 言いたかったことをズバリ言い当てられ、俺は口をつぐむ。

 相変わらずのドキリとするほどの洞察力だ。

 

「ねねからも文をもらっておりましてな。今こうして岐阜城にいることの半分は報告と仕事ですが、もう半分はそのことなのですよ」


「そう、なのか?」


「……平手家はなんとも不思議な家柄で、農民であるワシを筆頭家臣に引き立ててくれたばかりか、今こうして家老になれたのもその下地があったからだと個人的には思っております。故に少しばかり助力になれば、と」


 それはいつか聞いた別れの時の言葉。

 秀吉はそのことを忘れず、今も恩を感じてくれていたというのか。

 義理堅いというか、なんというか…。

 そんな中で秀吉は一呼吸おいた後、口を開いた。

 

「今の平手家は一言で言えば、『危険』。これの一言につきますな」


「……やっぱりそう見えるか?」


「はい。ワシも離れてみて痛感したことですが、あの家ほど郷愁心を覚えるモノはありません。今でこそ言える話ですが、平手を離れ直臣となったワシは、最初の頃は平手にいた頃の事ばかり考えておりました。農民出身での成り上がりであるワシは、何をするにせよ風当たりが強くて、ままならぬ次期もあったものです」


「郷愁心…お前がか?」


 俺の信じられないような顔が少し意外に思ったのか、秀吉は笑みをこぼす。

 

「貴方は身分を気にしない。猿と呼ばれるワシを見ても蔑みどころか信頼だけを寄せる。家臣の出自や肩書きにとらわれず能力だけを見て信頼を寄せてくださる。働きやすいように。そして自らは先頭に立ち英雄のように槍を振るわれ武功を重ねていく。高揚するのですよ、あの家にいる者は」


 秀吉は思い返すように、口角を上げる。

 

「我らこそが『武の一文字』、織田の天下布武の切っ先である。そう言った功名心とは似て非なる高揚と使命感が人を突き動かすのです。駆け登っていく一体感による快感というのでしょうかな、皆が貴方の背を追いかけ、必死になって。それこそが『武の一文字』であり、『武の一文字』という集団であり、ある種の『群れ』なのだとワシは思っております」


 そう言って秀吉は俺の目を見て断言した。

 

「もはや『武の一文字』は貴方固有の名称ではない。その旗のもとに集う者達が皆『武』を背負い貴方という大樹に寄り添い、『一文字』となりえているのです。……ワシもあの時残っていれば今も貴方の側で頭を悩まし、しかし笑いながらも走り回っておったのでしょうなぁ」


 ありえないIFではあるが秀吉があのまま平手家に残り家臣筆頭のままでいれば。

 

『上に立つものは皆孤独を抱えて生きている。』


 その言葉を思い出す。

 

「だからこそ」


 秀吉は口を開く。

 

「だからこそ『危険』なのです。もし貴方が今、隠居という言葉が念頭にあるならすぐにでも捨ててしまうべきだ。考えられる内の最悪手ですぞ。氏郷殿は確かに才豊かで将来を嘱望される器の持ち主でしょうが、まだ時期が早すぎる上に貴方にはなれない。それと同時に幸之助様も決して貴方にはなれない。そしてここに『問題の焦点』があるのです」


「………焦点?」


「氏郷殿は確かに平手家の当主として、織田家筆頭家老としても申し分ない働きをするかもしれません。だが違う。貴方とは違う形としての、ソレなのです。貴方の庇護があるうちはいいでしょう。だが当主となれば実質舵を取るのは氏郷殿であり、戦場には貴方の姿はない。それはもはや『武の一文字』ではない。時がたてば自然と纏まる? ありえませぬな。纏まるとしたらそれはもはや『武の一文字』ではなく織田家筆頭家老が率いる平手家臣団に過ぎない。貴方の圧倒的な武を背景とした『武の一文字』ではないのです。そして家臣団の世代交代もなさぬ内の家督譲渡は、必ず『種』を残し、いつか『芽』を出し平手家は割れる。貴方の息子なら? 実の子供ならあの感覚を、『武の一文字』が帰ってくるかもしれない。そういう不満は必ず吹き出します。そして今一番それを危惧しているのが平手のご隠居なのでしょう」


 秀吉の指摘に俺は声を出せずにいた。


「…爺様が? そこまで考えてこの問題を?」


「さて、本当のところはワシには分かりませんが、『武の一文字』の後を継いだ平手家と、『武の一文字』の血を引く者が同時に現れてしまったからには互いに比べられ、もしかしたら両者の器すら歪ませる可能性すらある。ワシは端から平手家をみてそう思うのですよ」


 秀吉の言葉が重く突き刺さる。

 俺はこのまま爺様を説得すればこの問題が解決するかもしれないと思っていた。

 こじれれば俺が身を引いて無理やり氏郷を当主に据えればいいと思っていた。

 だがそうすれば秀吉が言ったように俺を慕ってくれた家臣や兵に対しての不義理になる、と。

 もしかしたら爺様は今この比較的安定した時期を見て行動を起こしたのかもしれない。

 更に混乱した俺を見た秀吉は、カラカラと笑いその混乱を一蹴した。

 

「いやなに。こうは言いましたが、まぁそんな深刻にはならずこんな小難しいこと半兵衛や小一郎、藤孝殿に丸投げしておけばよいのです。彼ら程、軍を纏め、家臣を治め、内外の折衝に卓越した者はおりません故なぁ。それに本来はかの松永弾正殿が本質を見抜いて助言の一つでもされる所とは思いますが、念のためこうしてかつての忠臣が忠言をば、と。」


 秀長、半兵衛、藤孝。

 あ、後は継潤。

 あいつらは本当に俺にはもったいないくらいの内外での調整能力を持った人材だ。

 俺が丸投げする問題もあっという間に解決してくれるし、そのことに不満をこぼす事もあるが、いつだって決まって最後はこう言うのだ。

 

『貴方は『武の一文字』として常に我々の先頭に立ち槍を振るっていればよいのです』


 微妙に家臣が主君に向ける言葉じゃない気がするが、それでいいのかもしれない。

 俺があれこれ悩む事も必要だが、もっと必要なのはあいつらの言葉に耳を傾けて、あいつらの働きに見合う戦果と功績を武一文字でもぎ取ってくればいい。

 『武の一文字』平手家臣団ってのはそれでいいのかもな。

 でも、


「忠臣は独立したりしないんだけどな」


「いやはや、それを言われると辛いですなぁ。……さて、大方の悩みが晴れた所でこの問題に関してワシから言えることは一つです」


「ん? なんだ?」


「戦場で長生きすることです。誰よりも太く長く。老いてなお麒麟の如く、戦場で槍を振って少しでも後に続く者を、それこそ幸之助様をも引っ張り続ければいい。その背を目にし貴方の姿を目に焼き付けておけば、少なくとも氏郷殿も幸之助様も幻想に振り回されることはありますまい」


 長生きか…。

 確かに40過ぎだってのにまだ全然全盛期真っ直中って感じの体だしな。

 っていうか俺、死ねるのか?

 老けてはいるけど40には見えないことで定評があるんだよね、実は。

 

 そう考えていくことで、先程までぼやけた視線の先が晴れていくのを感じる。

 確かに色々なモノを背負っていることがわかったし、それを考えると重くのしかかって来るけど、俺は俺なりに今まで生きてきたし、それでいいと秀吉も言ってくれている。

 あの史実では太閤秀吉の言葉だ。

 有難くお言葉を頂戴して、これからも『武の一文字』背負って突っ走る。

 それしか出来ないことが、それ以上に波状するんだったら。

 やってやるしかないよな。

 

「戦場で長生きか…。まず目標は70で武一文字を振るえるくらい屈強なジジイを目指すことだな」


「ふむ…。できればワシの死に目を看取ってくれると最高なんですがのう」


「お前は絶対俺より長生きするから無理だな」


 

 そうして知己との邂逅は談笑とともに花を咲かせていくのであった。


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