エピローグ
「マジで……その……気をつけて、な」
一帆が涙声でようやくそう言った。
「んだよ~。永遠の別れじゃあるまいし。泣くなって」
海斗は陽気に笑っているが、見送りに来た家族や一帆、瑞貴、そして湊までもが涙を浮かべている。
「俺、マジで頑張るからさ。お前らも頑張れよ!」
海斗が拳を差し出した。そこに手を重ねていく一帆、瑞貴、そして湊。
「10年後! 自分たちの夢を実現してるか追いかけてる自分たちで、再会しようぜ!」
海斗の問いに、3人がうなずく。
「んじゃーな!」
一帆の両親が経営する連絡船に乗り、海斗はすぐに座席に座った。
「泣くなっつーの!」
海斗は身を乗り出して湊たちに手を振る。その海斗の目にも今さらになって、涙が溢れてきた。
コイツらがいなければ、俺は立ち直れなかったかもしれない。
そう思うと、急に胸が締め付けられそうになったのだ。
「……っ」
海斗はすぐに湊たちから視線を逸らした。それからすぐに、海斗は最後に大声を上げた。
「俺、お前らとずーっと一緒のつもりだからな!」
「!」
湊、一帆、瑞貴の3人が顔を上げた。
海斗にも、彼らが何かを言おうとしているのは聞こえたものの、それは正確には聞き取れなかった。
大丈夫。
俺たちはずっと、一緒だから。
海斗は手に握り締めた、お守りを見つめる。
4人が笑顔で海岸で笑っている写真が入っている。
海が俺たちを強くする。
海は、俺たちの原点だ。
海斗はまっすぐに前を見つめ、まだ余韻が残る夏の空を窓から見つめていた。