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事故物件エクソシスト〜霊のお悩み、承ります〜  作者: 地野千塩


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初めての悪霊祓い(6)

 見た目はこじんまりとしていた教会だったが、意外と部屋数はあるらしい。


 一階には礼拝堂、応接室の他、多目的室もあるようで、次に唯子はそこに案内された。


 セミナールームのような場所だった。会社の会議室にも近い。テーブルとパイプ椅子、それにホワイトボードもあり、教会に見えない。


 壁にはイスラエルあたりの地図、イエス・キリストの家系図、聖書のことばのポスターが貼ってある。本棚には分厚い聖書がつめこまれ、入りきらないものは積み上げられてる。そこに限っては教会らしい。


「まあ、ざっくり聖書でいう『霊』について説明してみようか」


 尋人はホワイトボードの前に立ち、ノリノリで説明を初めていた。


 なぜかこんな展開になったか。尋人は難しい話題はしない。できないのかもしれない。


「聖書には霊についても書かれてる。良い霊が神様の霊、聖霊さま」


 尋人はホワイトボードに鳩の絵を描いた。聖霊は目に見えないが、これが一般的なイメージらしい。


「じゃあ、悪い霊もいるの?」

「もちろんだ」


 唯子の質問に答えた尋人は、ホワイトボードに悪魔の絵を描く。


「これが悪霊。親分はサタン。こいつが悪魔な。手下が悪霊。どっちも悪いもんだが、バイキンマンと手下のかびるんるんみたいな関係だ」

「あのー、聖書のことをアニメキャラで説明していいんですかね……? アンパンマンは子供の頃好きでしたが」


 キリスト教、確かにカルトのイメージも強いが、一方でいわゆる聖人、優等生、清いイメージもある。女子校が舞台のエンタメはキリスト教系が舞台に多いイメージだ。それなのに、この尋人、全くそういう雰囲気が無い。


「本当にそんなアニメキャラで説明していいんですか……?」

「まあまあ、わかりやすかったら、何でもいいだろ? 次いくぞ」


 そして尋人、ピラミッドのイラストを書いた。悪霊はこんなピラミッドのタテ社会らしい。下の悪霊は上層の悪霊の命令には必ず聞かないといけない。これが事実ならまるでヤクザ組織みたいじゃないか。


「お寺さんや霊媒師がやっているお祓いは、中レベルの悪霊が下位の雑魚悪霊を祓っているだけなんだ。つまり、ジャイアンがスネ夫をいじめて追い払っているだけ。中級かびるんるんが、雑魚かびるんるんを追い出しているだけで、根本解決にならん。中級かびるんるんよりさらに強くて厄介なのがいるからな」

「あのー、本当に本当にアニメキャラで説明していいんですか……?」


 唯子のツッコミは無視された。尋人はピラミッドの頂点に、イエス・キリストらしき人物のイラストを描く。棘の冠はもちろん、手にも傷跡が描いてあった。顔は真っ白く表現されていたが。


「つ・ま・り! 悪霊を追い出すのには、ピラミッドの頂点に頼って追い出すのが一番早いのだ! いわゆる幽霊と言われているもんが一番恐れているものは、イエス様なのじゃー!」

「なんかイエス・キリストを悪のラスボスみたいに言ってませか? いいんですか? 不敬じゃないの?」


 唯子はツッコミに疲れてきたが、その理屈だったら分かる。一番強い神の名前を呟いた時、幽霊が消えた理由は上の存在には逆らえないからか。


 しかも尋人によると、いわゆる幽霊はいないという。全部この悪霊が死んだ人のフリをしているだけで、急所は神の名前。


「信じられない……」


 唯子は呟くが、こころあたりはある。実際、家に現れた幽霊、どこか作り物ぽかった。


「戦時中の幽霊なんて嘘だ。日本の土地なんてほぼ全部呪われてるんだから。おそらくその都市伝説の配信で、人々やリス子の恐怖を餌に悪霊が現れたんだ。悪霊の餌は恐怖心、念、想い、執着、悲しみ、怒りなどだ。死んだ人間の無念や怨み心もだ。それに信仰心も餌。人に拝まれないと存在できないんだよ。アイドルと一緒。幽霊なんてしょぼいだろ?」

「ゆ、夢がなさすぎでは?」

「しょーがないだろ。幽霊の正体なんて、もう聖書が成立した時から全部バレてるんだよ。死んだ人間は必ず神の元へ行く。地上に絶対存在できない。だから、恐れるな。たいした事ない。そんな霊問題、すぐに解決できる」


 自信満々の尋人だが、一つ問題がある。唯子はクリスチャンでも何でもない。そんな無闇やたらに神の名前を使えない。信仰心もないのに、利益だけ目的にするなど、いくら日本人の唯子でもダメだってわかる。


「おぉ、リス子は真面目だ。全くその通りだが、聖書には『逆らわない者は味方』とある。リス子はキリスト界隈に反するかい?」


 首をふる。反するほど理解もないのが本音だった。


「オッケーだ。この霊問題もさくっと解決しようじゃんか」


 偉そうに胸を張っていた。本当にこの人、信用して良いか謎だったが、急にお腹が減ってきた。


 時計を見たら、もう正午。地域のチャイムも鳴っていた。


「とりあえず、飯でも食うか?」


 尋人もお腹が減っていたらしい。もうエネルギー切れ寸前という表情だった。


 その顔、少し情け無い。黙っていたら、目元もすっとした塩顔イケメンに見えなくもないが、それは見間違えだろう。


「ええ。でも最後に一つ質問いい? 悪霊は人に拝まれないと存在できないのよね? キリストはどうなの?」


 尋人はニヤリと笑う。


「関係ない。イエス様は全知全能で最強だから別に誰に拝まれなくてもいいんだ。アンチキリストがいくらいても全く関係ないぞ!」


 その声、子供みたいだった。さっきまでは低めの声で説明していたのに、どいう事だろう。神を語る時、尋人は笑顔が溢れてた。

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