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事故物件エクソシスト〜霊のお悩み、承ります〜  作者: 地野千塩


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3/9

初めての悪霊祓い(3)

 きぃーん。


 耳鳴りがする。理由は全くわからない。


 今、唯子は駅前のカフェにいた。平日の午前中、客も少なく静か。


 チェーン店で甘いコーヒーが売りのカフェらしい。最近では砂糖とクリームたっぷりのラテを「悪魔のコーヒー」としてキャンペーンをやっているらしい。ちょうど唯子の目の前の壁に、やたら可愛らしい美少女悪魔のイラストシールが貼ってがあった。店内のあちこちにこのシールが貼ってあり、賑やかで落ち着かない。


「唯子!」


 そこは友達の織田宮乃がやってきた。そう、今日は仕事も休みで、宮乃と会う約束をしていた。


「どーしたの? 唯子、顔真っ青で具合悪そうだけど」


 さすが幼稚園からの付き合いの宮乃。すぐに唯子の異変を察した。


「実はさぁ」


 こうしてコーヒーを飲みながら事情を話す。最近、やたらと霊現象にあうようになり、原因不明の体調不良がある。頭痛、吐き気、耳鳴り。それに立て続けに冷蔵庫、レンジ、掃除機が壊れた。特にレンジは唯子が触っただけで、全く動かなくなってしまう始末。毎夜、悪夢と金縛もきつく、変な声も聞こえると言うと、宮乃はふむふむと頷く。


「なるほどね」


 宮乃、見た目はギャル系だが、都市伝説配信者としてちょっとした有名人だった。いわゆるインフルエンサー。子どの頃からオカルト、都市伝説に興味があり、唯子の霊現象もいつも親身に聞いてくれた。厳密に言えば面白がっていたが、唯子にとっては理解者だ。親や姉に言ってもこんな話題即座に否定されたし、今のところ宮乃以外に相談者はいない。


「なるほど。最近はこういう霊現象なかったんでしょ? なんかきっかけは?」

「それが全然。確かにうちのホテルでそれっぽいこと聞いたけど、昔からあることだし」

「なるほど、なるほど」


 ここで宮乃、口角をあげ、腕を組みなおす。


 一方、唯子はコーヒーをすする。キャンペーン中も悪魔のコーヒーを飲んでみたが、喉がガビガビになりそうなぐらい甘ったるい。不味くはないが、美味しくもない。


「それ、事故物件の症状ぽいよな。心当たりないの?」

「それもないよ。大家さんに確認したもの。前はネット通販会社の事務所だったらしい。その後マンションに改装したんだって。しかも築三年」


 事故物件疑惑、唯子も持っていたが、証拠がない。謎だった。


「もう病院いってもわからないし、何これ? 疲れてるんかな、私」


 涙目で訴えてるが、また耳鳴り。キィーンと耳の奥まで痛くなってくる。


「大丈夫、唯子! 都市伝説の人脈を使ってちょっと調べてみる!」

「ほ、本当?」

「この私に任せな!」


 持つべきものは親友だ。宮乃の強さに安心。


 それに実際、都市伝説の人脈を使って色々調べてくれた。今夜その結果を配信してくれるともいう。


 そして夜、ドキドキしながら配信されるのを待つ。一応ソファの上で正座し、ちょうど夜九時になったら配信が始まった。


「どうもみなさん、こんばんは。都市伝説オカルト配信者・ミヤの怪しい夜へようこそ。リスナーの迷える子羊、どんどんコメントをちょうだいね。スパチャも大歓迎よ」


 素の宮乃の声と違い、低く怪しげの声色を作っていたが、唯子は耳を傾ける。前半はお墓にいる幽霊の話でファンたちも盛り上がっていた。


「後半は私の親友ちゃんの身に起こったことを話すわ」


 いよいよだ。ようやくこの原因不明の霊現象の謎が解ける!


 唯子は唾を飲み込みながら、さらに配信を聴く。自分のことをネタにされるのは恥ずかしいが、実際宮乃の語りは面白く、どんどん引き込まれる。ファンからの投げ銭もたくさん。


「で、その親友ちゃんが住んでる土地を調べてたの……。その土地、今はなんともないけど、第二次世界対戦中、空襲されて火の海になった場所よ。ほんの三十年前には防空壕も残されていた……」

「え、宮乃。どういうこと、それって本当……?」


 そんな話は大家さんから聞いたこともない。初耳だったが、さらに宮乃は続ける。


「そこの防空壕には奥さんと赤ちゃんがいたの……。夫は戦地に赴いていたけれど、どうにか赤ちゃんだけは助けたかった。でもあたりは火の海。あつい、あつい、水をちょうだい、たすけて。この子だけは助けて……。そう叫びながら死んでいった奥さんの霊が今でも……」


 コメント欄はファンたちのコメントが押し寄せ、なぜか唯子の住む近所の土地まで特定さて、あのあたりは霊的にやばいと囁かれ始めた。


 同時にフォローも増えていたが、結局、宮乃は土地のお祓いをするしかないと言っているだけだ。


「え、どういう事……?」


 配信が終わった直後ぐらいから、さらに頭痛、吐き気、倦怠感、耳鳴りも消えず、案の定、夢では悪夢と金縛。


「ひぇ!」


 その上、夜中に目覚めたら、防災頭巾姿の若い女がいた。足は見えないが、赤ん坊を背負い、顔は火傷で真っ黒。


『たすけて、あつい、あつい、この子だけは……』


 鳥肌がたち、息切れしてきた。すぐに宮乃にLINEを送るが全く既読にならない。


 もう一度宮乃の配信チャンネルへ行き、コメントをおくった。SNSの方が早いと思ったが、こっちも反応なし。


「って、このコメント何?」


 その時、コメント欄に気になるものがあった。


 コメント主は「オカルト牧師・羽生尋人」。オカルト牧師って怪しすぎたが、その内容が気になる。


「悪霊は人の恐怖を餌にして増幅する。こんな配信聞くな。恐れるな。狭い門から入れ。その親友ちゃん、もし今度金縛にあったらイエス・キリストの名前を叫べ。いいか、本気で大声叫ぶんだ。必ず助けてくれるだろう」。


 何、このコメント。牧師とかキリストとか、何?


 それは宗教だ。宗教というと洗脳とか献金というイメージしか無いが、もし、この男のコメントが本当だとしたら?


 それに、目の前に幽霊が迫ってくるではないか。


『あつい、たすけて。この子だけは……』


 なんて言ってるけど、よくよく見たら、ちょっと作り物ぽい?


 わからないが、少し冷静になってきた。作り物だと思えば恐怖は半減。大丈夫だ。これは映画のシーンみたいなもの。


「はぁ……」


 そう気が抜けた瞬間。なぜか口から、こんな言葉が溢れてしまう。


「い、イエス・キリスト……!」


 自分でも全くわからないが、目の前にいた幽霊、一瞬で消えてしまった。それどころか、頭痛や耳鳴りもぴたっと治った。急にお腹がすく。腹の虫までなってる。


「は?」


 どういうことか。全く理屈がわからないが、脱力。その場に座り込んでしまう。


「は? 何これ、どういう事?」

 

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