初めての悪霊祓い(1)
事故物件、悪霊、金縛り、呪い、藁人形、霊に関するお悩み承ります。※当教会は伝統的なプロテスタントですが、カルト信者、スピリチュアル系、占い師、キャバ嬢、オカルト好き、陰謀論者、LGBT、引きこもり、ニート、反キリスト、悪魔崇拝者、誰でもwelcome!
◇◇◇
夜勤明けで朝陽が眩しい。思わず目を細めるが、いくら二十代とはいえ、夜勤明けは頭がぼんやりする。
「え、ここって近所の教会?」
その建物、近所にあった。一見、公民館のような佇まい。周りは民家やコンビニ、整体、美容院に囲まれ、日常に溶け込んでいたが、ふと、石山唯子の目にとまる。
冬の冷たい空気も、全く気分良くならないが、なぜか気になって仕方ない。急にそこだけピントが合ってしまう。
「何これ、どういうこと?」
その建物、入り口の側に掲示板があった。たぶん、目に留まったのは、この掲示板のせいだろう。
「事故物件、悪霊、金縛り、呪い、藁人形、霊に関するお悩み承ります。※当教会は伝統的なプロテスタントですが、カルト信者、スピリチュアル系、占い師、キャバ嬢、オカルト好き、陰謀論者、LGBT、引きこもり、ニート、反キリスト、悪魔崇拝者、誰でもwelcome!ってどういうことよ?」
唯子は背は低い。小柄な方だが、この掲示板のポスターを見上げながら、首を傾げる。冬なのに、手のひらがじっとりとし、変な汗も出てきた。
この妙なポスター、心当たりがある。特に悪霊、金縛という部分について。
元々敏感体質。HSPの特徴にも当てはまり、時々変な音や匂いを嗅ぐこともある。金縛りも日常茶飯事だったし、今住んでいる家も慎重に選び、築三年の新しいアパートに住んでいた。
実際、最近はこういった霊現象に悩まされていなかったが、気になって仕方ない。こんな悩み、親友の織田宮乃以外に打ち明けたことはないし、もし、これで解決するなら?
しかし、ここ、どうやら教会みたい。教会というと宗教だ。いいイメージはない。お金や洗脳というイメージが真っ先に浮かぶ。こんな住宅街に紛れていたが、裏の顔はわかったものじゃない。騙されて出家させられ、お金も取られるかもしれない。特にこのポスター、怪しさ満点。
唯子はすぐに踵を返し、自宅へ帰ることにした。もう汗は止まっていたし、夜勤明けだ。さっさと眠りたい。あくびが出た。
「そ、そうだよ。教会なんて怪しいんじゃないの……」
こうして自宅に直行し、築三年の四階建てアパートへ。見た目はなんの変哲もなく、住宅地に紛れていた。二階に住んでいたが、隣人トラブルなどもなく、管理人や大家さんもいい人だ。夜勤明けに帰ると、お疲れ様と挨拶も交わすぐらいだったが。
あの教会のことなどすっかり忘れ、着替えてメイクを落とすと、さっさとベッドへ。
ワンルームだ。ベッドとソファ、机があると、そう広くも感じないが、駅まで近く、コンビニやクリニックも近い。関東の郊外の街で月六万円。妥当だろう。
そんなことを考えつつ、ベッドに潜って寝落ちした。あぁ、やっぱり夜勤はこたえる。ビジネスホテルのカウンター職だったが、クレーマーもいるし、大学生のバイトの教育も簡単ではない。
仕事の疲れが襲う。瞼は石のように重い。すぐに夢の世界だった。
いい夢みたい。どうせ仕事の疲れでまいっているのだから、せめていい夢を望んでもいいと思う。
しかし唯子のそも願いは叶わなかた。夢は夢でも悪夢だった。
幽霊のような存在に首を絞められ、身体を殴られていた。いくら叫んでも、助けはこず、吐き気と頭痛で、泥沼の中みたいな夢だった。
「は!?」
すぐに目覚めた。時計はまだ午前十一時だったけれど、心臓はドクドクと波うち、全く汗がとまらない。髪もぐしゃぐしゃになり、息も荒く、頭もズキズキ痛む。
「は? この夢何?」
過去にもこんな風に悩まされていた。悪夢や金縛り、変な声や変な臭い。単なるHSPではないかと思ってはいたが、これって何?
「何これ、 また……?」
この時の唯子、まだ未来は知らなかった。まさかの教会と関わり、事故物件のエクソシストをはじめるなんて、夢にも思っていなかった。
「この夢、一体なんなの……?」




