一夜の幸福(第三部十章 2人が愛を確かめ合うシーンR18版)
ルナの手を引き、森へ入る。
木々が影を落とす。
月が枝に裂かれる。
風が草を揺らす。
追手の気配は、まだない。
だが――時間の問題だ。
「……ここまで来れば」
アルベルトが言いかけた瞬間、ルナの足が止まった。
引かれた手が止まる。
振り向く。
水色の瞳が揺れている。
恐怖ではない。
涙でもない。
もっと深いもの。
「……ルナ?」
呼ぶ。
返事はない。
ただ見つめる。
緑の瞳を。
長く。
深く。
刻み込むみたいに。
「どうした」
ようやく唇が開く。
震える声。
「……本当に」
息を吸う。
「……あなたですか」
眉がわずかに寄る。
「何を言ってる」
首を振る。
「違うんです」
涙が一滴落ちる。
「怖いんです」
胸を押さえる。
「幸せで」
息が止まる。
言葉が続く。
「ずっと思っていました」
「私は見送る側だと」
「愛しても、残される側だと」
「だから……」
声が小さくなる。
「望まないようにしていた」
沈黙。
森の音だけが揺れる。
一歩近づく。
手を伸ばす。
頬に触れる。
温度が伝わる。
「ルナ」
その声。
その呼び方。
胸の奥がほどける。
「今は」
言う。
「望め」
短い言葉。
命令ではない。
許しだ。
瞳が震える。
そして。
額を胸に押しつけた。
逃げるみたいに。
縋るみたいに。
「……いいんですか」
「いい」
迷いはない。
「最初からそのために来た」
衣を掴む指。
離れないように。
消えないように。
「……離れたくない」
それは告白だった。
「離さない」
証明するように抱きしめる。
強く。
だが痛くない力で。
震える体。
恐怖ではない。
安心の震えだ。
唇が触れる。
最初は確かめるように。
ゆっくり。
呼吸を合わせるみたいに。
肩の力が抜ける。
温度が混ざる。
夜が静まる。
草の上に座る。
背には木。
頭上に月。
世界は広いのに、今は二人だけ。
指が髪を撫でる。
銀糸が絡む。
触れ方は変わらない。
あの雨の夜と同じ。
壊さない触れ方。
大切なものに触れる触れ方。
目を閉じる。
胸の奥で思う。
(違う)
(これは違う)
ソルに触れられた夜は、壊れないよう耐える夜だった。
だが今は違う。
触れられるたび、胸の奥が温かくなる。
触れ返したくなる。
近づきたくなる。
もっと確かめたくなる。
「寒くないか」
首を振る。
「……温かいです」
言葉は短い。
だが本当だった。
額が重なる。
距離が消える。
呼吸が混ざる。
温度が伝わる。
背を撫でる手。
額に触れる唇。
次いで、唇へ。
「ルナ」
深くなる口づけ。
舌が絡む。
違う。
ソルとは。
「アルベルト」
確かめるように名を呼ぶ。
優しく目が細まる。
指先が胸の先端を優しく転がす。
甘い痺れ。
「んっ……」
恥ずかしい。
だが逃げない。
首筋を優しく吸われ、溶ける。
「ここは、感じるか?」
柔らかい声。
腹を滑る手。
下腹へ近づく。
体が震える。
足が勝手に開く。
「……そこ……優しく……」
言葉が漏れる。
許される感覚。
太腿を撫でる指。
敏感な場所をなぞる。
「きれいだ」
涙が溢れる。
暴力の記憶が薄れていく。
残るのは、優しさだけ。
ゆっくりと、刺激が加わる。
円を描く指。
内部を探る動き。
声が漏れる。
腰が浮く。
深く入る指。
敏感な点を押す。
熱が走る。
「ここ、熱い」
囁き。
心がほどける。
快楽が深まる。
ただ身を委ねる。
愛に飲み込まれる。
刺激が続く。
甘い痺れ。
「締めつけてくる」
「かわいい」
円を描く指。
「もっと……」
波が迫る。
涙が零れる。
だが止めない。
絶頂へ導かれる感覚に体を委ねる。
熱が広がる。
息が乱れる。
「こんなに濡れて……」
恥ずかしい。
だが止まらない。
波が来る。
「……もう……!」
爆ぜる。
震える。
満たされる。
唇が重なる。
深く絡む。
背を撫でる手。
触れる熱。
「もっと深く……愛して」
顔を埋める。
匂いに。
腕に。
優しく包まれる。
入口に熱が触れる。
震える。
ゆっくりと入ってくる。
甘い痛みは、すぐに快楽に変わる。
腰は気遣うように、ルナの内部を優しく広げていく。
敏感な点を優しく擦られ、勝手に腰が浮く。
「……キスを」
震える声。
「わかった」
唇が重なる。
甘い味。
呼吸が乱れる。
腰が動き始める。
優しく。
深く。
キスが深くなる。
手が背中を撫で、甘く溶かす。
体が震え、波が迫る。
「ルナっ……」
「っ……!」
強くなる動き。
奥まで届く熱。
敏感な場所が強く擦られ、
甘い痛みが快楽の爆発に変わる。
爆ぜる。
満ちる。
同時に流れ込む温度。
包まれる。
抱きしめられる。
恥じらいが込み上げる。
顔を赤らめて体をくっつけた。
アルベルトは小さく笑うと、ルナの髪にそっと口づけた。
思う。
(これが)
(愛だ)
痛くない。
苦しくない。
怖くない。
ただ満ちる。
空白だった場所が満ちていく。
二百年分の孤独が溶ける。
――ああ。
この人を愛していた。
――ずっと。
――忘れても。
――消されても。
魂は覚えていた。




