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太陽王と終焉の月  作者: 帰り花
番外編
25/28

鎖(第三部第二章 夜のシーンのR18版)

 夜。

 王の寝所。


 灯りは少なく、影が多い。


 ソルは夜になると静かになる。

 昼の王とは、別人のように。


 命令もしない。

 怒りもしない。


 ただ近づく。

 距離を詰める。


 逃げ場がなくなるまで。


 命令される。

 強制される。

 奪われる。


 始めは、そう思っていた。


 だが、違った。


 触れた。

 頬に。

 髪に。

 唇に。


 壊れ物を扱うみたいに。

 恐れているみたいに。


 自分が壊してしまうことを。


「……逃げないな」


 低い声。


 答えは変わらない。


「逃げません」


 本当だった。


 逃げられないからではない。

 逃げれば壊れるからだ。


 ソルが。


 目を閉じた瞬間、王は消える。


 そこにいるのは王ではない。


 孤独な少年。

 拾われなかった少年。

 呼ばれなかった少年。


 その少年が、肩に額を預ける。


 触れる。

 寄りかかる。

 すがる。


 言葉はない。


 だが身体が言っている。


 ――ここにいて。


 寝台へ導かれる。


 動きは静か。

 急がない。


 奪うためではない。

 確かめるために、触れる。


 指先が輪郭をなぞる。


 頬。

 首。

 肩。


 唇が触れる。


 確かめるように。

 何度も。

 何度も。


 呼吸が混ざる。

 体温が移る。


 欲望はある。

 だが、衝動には任せない。


 衝動で壊したら、終わると知っているから。


 ルナはただ、目を閉じる。

 抵抗はしない。

 応えもしない。


 受け入れる。


 愛しているからではない。

 壊したくないからだ。


 遠く祖国にいる恋人を。

 そして――腕の中の王を。


 だが、身体は知ってしまっている。


 何度も触れられた温度。

 繰り返された夜。

 覚え込まされた感覚。


 心は拒んでいるのに、

 体は反応する。


 熱を持つ。

 震える。

 息が乱れる。


(アルベルト……)


 裏切っているのは、心ではない。


 身体だ。


 ソルの手が頬を撫でる。

 吐息が混ざる。


 抵抗しようとする心が、熱に溶ける。


「ルナ」


 低い声。


 腰を引き寄せられる。


 唇が、首筋に触れる。


 ぞくりと震えが走る。


 声が漏れる。


 舌が肌をなぞる。

 甘い痛みが、胸を震わせる。


 心にあるのは、緑の瞳。


 それなのに、下腹は熱を持ち、張りつめる。


「感じているな」


 囁き。


「お前の体は、正直だ」


 胸の先端を摘まれ、捻られる。

 鋭い刺激が背を走る。


 抵抗の意思が、溶ける。


 体を預けた瞬間、渇望が溢れる。

 腰が無意識に寄る。


 耳を甘く噛まれる。


「もっと、俺を求めろ」


 恥ずかしい。

 だが止まらない。


 受け入れるしかない。


 背中が寝台へ沈む。


 首筋を辿る唇。

 舌が肌を濡らす。


 震える息。


 声が漏れる。


 胸を覆う手。

 指が固く尖った粒を転がすたび、鋭い快感が腹の奥へ落ちる。


 抵抗しようと手を伸ばす。

 だが、脚を割られる。


 逃げ場が消える。


「逃がさない」


 低い声。


 下着を下ろされる。

 肌に息がかかる。


 震えが走る。


 恥ずかしい。

 だが、体は応える。


 腰が持ち上がる。


「もっと鳴け。俺だけのために」


 心の壁が、崩れる。


 快楽が、深く沈む。


 触れられる。


 確かめられる。


「こんなに濡れてる」


 囁き。


 羞恥が爆ぜる。


 声が震える。


 先端を撫でられる。

 そのまま後孔に塗り広げられる。


「感じてるだろ?」


 熱い息。


 意思が溶ける。


 腰が動く。


「俺だけを見ていろ」


 命令。


「あっ……ソル……」


 名を呼んでしまう。


 その瞬間、崩れる。


 理性。

 ためらい。

 拒絶。


 全部。


「全部、俺のものだ」


 重ねられる体。

 息が詰まる。


「っ、ソル、待って…」


 抵抗の言葉は出るのに、

 体は受け入れてしまう。


「その反応が、俺を狂わせるんだっ」


 深く押しつけられる熱。

 震えが止まらない。


 背に爪を立てる。


「もっと感じろ」


 荒い息。

 激しくなる動き。


 抵抗が崩れる。

 渇望が飲み込む。


 体が絡みつく。


(アルベルト……)


 涙が落ちる。


 限界が近い。


 熱が溢れる。


 声が震える。


 視界が白む。


「全部吐き出せ」


 激しい衝撃。

 体が跳ねる。


 逃げられない。


 波が来る。


 崩れる。


 白く弾ける。


 熱が満ちる。


 奥まで満たされる。


 息が止まる。


「そうだ。全部受け止めろ」


 荒い吐息。


 余韻に震える。


 脚が絡む。


 熱が残る。


「俺のものだ」


(愛しているのは――アルベルトだけ)


 それは、揺らがない。


 だが。


(拒めば、この王は壊れる)


 それも分かっている。


 だから拒まない。

 拒めない。


――夜の終わり。


 眠りに落ちる直前。


 ソルは必ず言う。


 毎晩。

 欠かさず。

 同じ言葉を。


「……ここにいろ」


 命令ではない。


 祈りだ。


 この祈りがある限り。

 この王はまだ怪物ではない。


 だから答える。


 毎晩。

 同じ言葉を。


「います」


 それが、鎖だと知りながら。

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