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ジュピターの横にさくらが歩き、後ろは、竜と大倉が歩いている。


ジュピターがさくらに尋ねる。


「刀と対話できたか?」


「いえ、何も答えてくれませんでした。でも、死にそうになったら助けてくれますから大丈夫です」


「そうか……」


四人は森の中へと入って行った。木と木の間が広く、まるで巨木が繁る屋久島の原生林から、半分以上の小さな木を抜いたような森だ。


森の中を奥深くへ進んで行くと、やがて 巨大な獣道へと出た。まるで大きな並木道のようだ。


ジュピターが皆に説明する。


「このような道は、恐竜かキメラが定期的に通っている。前後の気配を探りながら歩くんだ」


しばらく歩くと、大倉は右手で拳銃を抜いた。


竜もリボンスティックを手にした。


後ろから、獣の走る音が聞こえたからだ。


振り向くと、全長三メートル、体高が一メートルほどの肉食恐竜が、こちらに向かって走ってくる。


ジュピターは、「何かに追われているようだ。木の後ろへ隠れるろ」と指示を出す。


四人は並木道から、森の中へと移動し巨木の後ろへ別々に潜んだ。



大きな足音が聞こえてくる。獲物の小型の恐竜を追っている姿が見えた。体高四メートルクラスのティラノサウルスに似た恐竜だ。尻尾まで入れれば全長六メートル以上。


ジュピターは皆に見えるように唇に人差し指をあて、声を出すなという合図を送った。


隠れている四人の木の前を走って通り過ぎていく恐竜。


しばらくして、ジュピターが声を発した。


「思ったより恐竜が増えている。作戦を変更して、まずはキメラと大型恐竜が何匹この森にいるのかを、別れて探ろう」


竜がジュピターへ聞く。


「ジュピターさん、あのクラスの大型恐竜なら、四人全員でかからないと倒せませんよ」


「恐竜とキメラを鉢合わせにして戦わせる作戦にする。囮は自分自身だ。キメラは攻撃的だから、恐竜も戦わざるおえないだろう」


ジュピターは作戦の説明を始めた。


「キメラはどんな攻撃をしてくるかわからん。恐竜の攻撃は噛み付いてくるだけだから、距離を取っとっていれば、追いかけられても逃げられる。追いかけてきた大型恐竜を見れば、キメラは攻撃するはず。まずは恐竜を減らし、最後にキメラを討伐する」


ジュピターは大倉とさくらを見た。


「大倉の銃は大型恐竜には通じない。さくらの剣も、刀の能力が使えないのでは、倒すのは無理だ。だから、二人で組んで探ってくれ。無理はするなよ」


ジュピターは竜を見て、「わたしと竜は、距離を取って攻撃できる。竜は一人で大丈夫だな」と問いかけた。


「偵察だけなら問題ありませんよ。小型の恐竜なら俺一人でも殺れます。それより、俺がこのあたりの高い木に登れば、近くにいる大型の恐竜やキメラは見つけられますよ」


「それなら、木の上から、大きな獣道を探してくれ。そこを通るはずだ」


竜は少し助走をつけ、近くにある木を、ネコ科の猛獣のように手足を使い太い枝まで到達した。


そこからは、猿が木を登るように、枝から枝へと飛び移っていく。


それを見ていたジュピターは感心した。


「見事なものだな。若い頃のわたしは空を飛ぶ事しかできなかった」


さくらは、こう突っ込みそうになった。


いやいや、空を飛ぶほうがすごいでしょ!


が、マーズの森のことを説明した。


「竜は森の中で動物たちと育ったから、忍者みたいに木を登れるんです」


「マーズは森に住んでいるのか?」


「はい、ここへ来る前に、マーズさんの森に行きました」


「彼女は森で何をしているんだ?」


「動物たちと暮らしています」


「それだけか?他に何もしてないのか?」


「だと思います。詳しくは竜に聞いてください」


竜が木から降りてきた。


「ジュピターさん、大きな獣道はここを入れて三本ですね。ほぼ平行に向こうにある川へ続いてるようです」


「さくらと大倉は、村に近いこの道を探ってくれ。危険だと感じたらすぐに森を出るんだぞ」


さくらが返事をする。


「わかりました」


大倉は頷いた。


「竜は真ん中の道を、わたしは一番奥の山側を探す。川沿いのこの道で落ち合おう」


そう言うと、ジュピターは、森の奥へと走り出した。


竜はさくらを心配するようにこう言った。


「何かが襲ってきたら逃げるんだぞ。後でな」


四人は三組に別れて、森を探索する。


さくらと大倉は、獣道の森の出口側の端を歩きだした。


「さくらさん、僕が守りますから安心してください」


「ありがとう、大倉さん」


さくらは変な気分になった。


これって、森の中でのデートよね。待って、キメラ退治のデートってデートじゃないわよ。


まあ、どっちでもいいか!米倉先輩とデートした気分になろっと。でも、大倉さんもかっこいいし、いい人だし、迷っちゃう。


「さくらさんは好きな人いるの?」


何!この質問!何て答えたらいいのよ!


「憧れの人ならいます」


嘘じゃないわ!


「さくらちゃんの中では、憧れと好きは違うんだ」


「よくわかんないです」


嘘をついたかも……。


大倉さんに手を握られたら振り払えないよ。どうしたらいいのよミチコ!


ミチコの顔が浮かんだ。


「よく聞いてさくら。女わね、自分が好きな相手と結婚するより、自分を好きって言ってくれる相手と結婚したほうが幸せになれるのよ」


結婚なんか考えてないよ!


「さくらさん、音がする。木の後ろに隠れましょう!」


慌ててさくらは、また妄想しちゃったよと、

反省しながら森の中へと移動した。


小型の肉食恐竜がこちらへゆっくり歩いてくるのが見えた。先ほどより少し大きく、全長五、六メートル、体高ニメートルクラス。恐竜の目の位置は、身長百八十センチメートルの大倉より少し高いぐらいだ。

「さくらさん、少しでも肉食恐竜を減らすために、あの程度の大きさのは狩って行きましょう」

「ジュピターさんが何匹いるのか偵察するだけだって言ってたよ」

「僕一人で大丈夫ですから見ててください」

大倉は右目でウインクすると、隠れていた木の裏から飛び出し、恐竜の前に立ち塞がった。

大倉を見た恐竜は、キョトンとした表情で立ち止まった。いや、恐竜がそんな顔をするわけないが、さくらにはそう見えた。

腰に差した左右の拳銃を、ガンマンのように素早く抜くと、恐竜の左右の目を狙って二段打ちで撃ち抜いた。

だが、弾丸は脳にまで到達せず、目を潰しただけだ。

恐竜は暴れながら、悲鳴のような鳴き声を上げる。

もう一度目を狙ったが、まぶたを潰しただけで、倒せたなかった。。

暴れている恐竜の尻尾が、大倉の脇腹に食い込み、森の中まで吹っ飛ばされた。

大倉は動かない。


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