キメラ討伐の朝
「そこで、四人での練習試合を提案したいのだが、銃は危険過ぎるので、大倉は見ていてくれ」
「わかりました」
「試合は三人同時に行う。私は竜を狙う。竜はさくらを狙う。さくらは私を狙う。ただし、竜はリボンで木刀を切ってはならない」
「わかりました」
「これは、キメラと戦闘中に他の危険な生き物、例えば恐竜などが出てきた場合、すぐに察知する能力を磨くためだ」
ジュピターは持っている三本の木刀のうちの一本をさくらへ投げて渡した。ジュピターは左右の手に木刀を持つ二刀流だ。
ジュピターの「始め!」の声とともに、三人は構えた。
竜はまだリボンスティックを出していない。
ジュピターは竜への距離を一瞬で詰め、右手にある木刀を竜の頭上に振り下ろす。
竜はリボンスティックをどこからか取り出して木刀を受けた。
同時にさくらがジュピターの背中に木刀を振り下ろすが、ジュピターは半身を開き、左手の木刀でさくらの攻撃を受ける。
竜はジュピターの木刀をリボンスティックで跳ね除け、走りながらさくらへリボンを飛ばした。
さくらの足へと迫る竜のリボン。だが、ジュピターが竜を追って上から木刀を振り下ろしてきた。
リボンがさくらへ届く前に、竜はリボンスティックでジュピターの木刀を受けると、すぐさま後ろへ飛んで距離を取った。
三人は距離を取り、お互いの気配を探る。
さくらはどうすればいいか迷っていた。
竜はリボンを飛ばせるから、攻撃範囲が広い。
ジュピターさんも秘剣手乗り文鳥で遠くまで攻撃できる。私は木刀の届く範囲でしか攻撃できない。
どうすればいい……
「すみません!ジュピターさん、もう一本木刀をもらっていいですか」
「さくらも二刀流にするのか?」
「いえ、もう一本持っておきたいだけです」
「わかった。もう一本取ってくる」
そう言うとジュピターは宿の中に入っていった。
「ねぇ竜、すごい緊張感だね」
「さくらはまだいいぜ。俺はジュピターさんからの攻撃だぜ。マーズ師匠の攻撃を受け続けてるようなもんだ」
大倉が二人を見ていた。
「さくらさん、剣技ってかっこいいですね」
さくらは大倉を見つめ、顔を赤らめた。
やっぱり米倉先輩そっくり!
米倉先輩にかっこいいって、褒められてるような気になっちゃう。好きって言っちゃいそう……何言ってるのあたし、練習中よ!集中しないと!
ジュピターが戻ってきた。
一本の木刀をさくらへ渡すと、「再開だ、始め!」と言って構えた。
さくらは、一本の木刀を手に持ち、もう一本は腰のベルトに差した。
最初に仕掛けたのは竜だ。距離を取って、さくらへリボンを放った。
さくらはそのリボンを木刀で受けると、グルグルと木刀を回転させて、リボンを巻きつけた。
その時、ジュピターが竜に向かって走った。と同時にさくらも木刀を離して、全速力で竜の方向へ走り出した。
竜は木刀に巻き付いているリボンを戻さず、リボンスティックでジュピターを迎え撃つ。
そこに、さくらがジュピターめがけて、突進しながら、腰の木刀を抜く。
竜は頭上でジュピターの右手の木刀を受け、ジュピターは、頭上で左手の木刀でさくらの木刀を受ける形になった。
さくらは、ジュピターの腹部に前蹴りを放つ。
ジュピターは竜への攻撃を諦め、後ろへ飛んだ。
「さくらも竜もいい動きだ。練習試合はここまでにしよう」
五人の村人たちが竹を運んできて、地面へ突き刺していく。
「さくら、練習用の竹はこれでいいか?」
「ありがとうございます」
さくらは村人たちへも頭を下げた。
「みなさん、ありがとうございます」
村人の一人が、「おらたちこんなことしかできねぇけど、おねげぇしますだ」と言って頭を下げた。続くように残りの四人も頭を下げる。
さくらは、田中家流とアクセルターンを掛け合わせた技を竹で試してみる。
走り込み、空中で体を一回転させながら、遠心力と体重を刀に載せて竹を斬ってみた。
ジュピターは切れた竹の切り口を見た。
「さくら、まだ刀を叩きつけている。これでは刀が刃こぼれしてしまう。私の予備の刀を貸そう。それで練習したほうがいい」
「ありがとうございます」
四人は夕方まで練習した。晩ごはんは、さくらも景子に教えてもらいながら一品作ってみた。
そして、討伐の朝が来た。
ジュピターは大倉にもう一度聞いた。
「大倉、村にいて村人を守ってくれないか?」
「一緒に行きます。僕一人でキメラの一匹は片づけますよ」
「そうか……」
ジュピターは見送りに来ていた村人たちへ、「行ってくる」とだけ伝え、森に向かって歩き出した。
その後ろを、さくら、竜、大倉がついていく。さくらはには不安があった。妖刀田中家と語ることができなかったのだ。




