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練習二日目

次の日の朝、幼い頃から体に叩き込まれた型を、さくらは舞うように動く。


右手一本で持った刀で突き、進行方向の逆に体の向きを変えながら、刀を左手に持ち替え突く。そのまま、円を描くように回しながら、両手を添えて相手の胴体を斬る。


型を終えると、父親が目の前にいるイメージで構えた。いつもしていた、真剣を使っての稽古が見えてくる。


思い出す。あたしは本気で刀を振ったが、パパは余裕でかわし、時々、必殺技を打ってきた。


本気でないのはわかっていたが、避けることができず、動けなくなると前蹴りをくらわされていた。


「それで、殿を逃がすことができるのか!」と怒鳴られていた。


「将軍も殿もいないわよ!時代錯誤もいいところよ、バカじゃないの!」


「殿がいない事ぐらいわかってる。だが、心構えだ」


あのあと刀を投げ捨て、二度と家の道場には行かなかったのよ。まさか、本当に田中家流が役に立つなんて思わなかったわ。


体重の軽い私が、重くて早い一撃を、いろいろな角度から繰りだせる技を考えないと。人間相手ではないから、田中家流の技を改良しないとだめだわ。


ジュピターが声をかけてきた。


「随分といい動きになったな。型を見せてもらったが、田中家流というのは、剣道にはない動きだな」


「はい、剣道も学校で習いましたが、全く違います。基本的に刀は腕の延長と捉えます。右手のみ、左手のみ、両手の練習をします。たとえ、片腕になっても、戦えるためらしいです。刀が折れたときのため、鞘を使った技もあります。隙があれば、足で蹴ったり、引っ掛けたりもします」


「実践的なのだな。倒すための技を極めた流派か……」


「そうですね。将軍を守る警護の技で、平成で言えばSPみたいな訓練をしていたようです」


「面白い。わたしが実践で学んできた技によく似ている。怪我しないように、木刀で練習しないか」


それを聞いていた竜が笑う。


「師匠と同じじゃないですか。戦いたいのでしょう。魔法少女というより、戦闘部隊だったって感じですね」


ジュピターは苦笑いした。


「まあ、はずれてはいないか」


左右の手に木刀を握った。彼女は二刀流だ。


「ジュピターさん、田中家流を応用した、対キメラ用の技を思いついたので、それを練習させてください」


「いいだろう」


少し離れたところからさくらは走り出し、左足でジャンプすると、空中で斜めに一回転すると同時に、ジュピターの上空から木刀を叩きつけた。斜めに飛んだ、フィギュアスケートのアクセルジャンプのようだ。


ジュピターは、二本の木刀を十字にして受けた。


三本の木刀が衝突し、三本とも衝撃で折れ吹き飛んだ。


二秒後、カランと木刀の破片が落ちてきた。


ジュピターが口を開く。


「破壊力は凄まじいが、叩きつけるような斬り方では、刀が保たないと思う。丁寧に素早くだ」


「切る練習をしないとだめですね。竹とかないですか?」


「豚や牛の柵を作った残りがあったはずだ。それよりも、刀を決して折らぬようにな。何かはわからないが、気になる力を持っているようだ。対話はしてみたのか?」


少しうつむきながら答える。


「何も感じないです。今晩もやってみます」


竜は、できるだけ早く走りながら、リボンの動きを早くする練習をしている。


大倉は、一人で二丁拳銃で正確に当てる練習をしていた。



その日は、さくらも夕食作りを手伝った。


さくらは、夕食後も妖刀田中家との対話を続けている。正座をして、膝の上に刀を置き目を瞑る。


三十分ほどたち、さくらは目を開けた。


「もう!あんた妖刀なんでしょ!なんとか言いなさいよ!」


刀を睨む。だが何も起こらない。


次の朝、ジュピターがこう宣言した。


「今日で練習は最後だ。明日、キメラの討伐を行う」



ep6を追加しました。

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