村の夕食
その日の夕食は、キメラに殺された豚を使った料理を、景子が作ってくれることとなった。
さくら、竜、大倉は食堂のテーブルで待っていたが、さくらが立ち上がる。
「あたし、景子さんを手伝いに、キッチンに行ってみる」
キッチンでは、どん兵衛、有法、景子が働いているのが見えた。
景子は目を料理に落としていたが、気配を感じたのか、さくらへ話しかけた。
「あら、さくらちゃん、食堂で待ってて。あたしたちには、こんなことしかできないから」
さくらは思った。
(ジュピターさんから景子さんに戻ってる)
「料理をお手伝いさせていただけませんか?」
「手伝ってくれるの。嬉しいわ。わたしの母は料理研究家だったから、よく手伝わされたの。嫌だったのに、何でも覚えとくと役に立つものね」
「だから、料理が得意なのですね」
「喜んでもらえるのが嬉しくなっちゃって。さくらちゃん、料理ってね、繊維を潰さないように丁寧に素早く切るの。新鮮な魚をおろすときは、切られたことさえわからないぐらいにね」
「剣技と同じってことですよね?」
「本当かどうかわからないけど、母は職人さんが生きてる鯛を3枚に素早くおろして、もう一度水槽に戻すと、数秒間泳いだって言ってたわ」
「まさか、そんなこと……ありえないですよ」
火に掛かっていた土鍋が湧いた。
「どん兵衛、これを食堂に運んで頂戴」
景子はさくらの方へ笑顔を向ける。
「もう終わったから、食べに行きましょう」
できた料理が竜と大倉の座るテーブルへ並べられる。豚肉のモツと野菜の煮込みだ。
大倉は驚いた。
「食べたことがない味だ。美味しい」
感想を言う大倉に比べて、何も言わず、ガツガツと食べる竜。
さくらは、味を噛みしめ感動している。
「美味しい。それしか言えない!」
景子も一緒に食べながら嬉しそうに次のメニューを発表する。
「みんな若いから、メインはとんかつよ! 自家製のとんかつソースも作ったの」
さくらは思わず声を上げた。
「ひゃー! とんかつが食べられるなんて幸せすぎる~」
とんかつの大盛りがやってきた。次々となくなっていく。
変わらず竜はガツガツ食べながらの感想。
「とんかつって豚の揚げ物か。周りがサクサクして、すげぇー旨い!」
大倉は上品に食べている。
「恐竜の肉よりジュシーで旨味がすごい!」
「まだ、食べられるわよね」
「おー!」
全員が手を上げた。
「パスタはどう? カルボナーラは好き? 小麦から作った麺に自家製チーズ。デザートは村の鶏が産んだ卵と牛乳から作ったバターから作ったカステラよ」
竜と大倉の頭の上には、クエスチョンマークが浮かんでいるような顔つきだ。
「カルボナーラとか、パスタってなんですか? カステラもわからない」
笑顔で答える景子。
「ラーメンみたいな麺料理と甘いお菓子よ」
食事の後、山崎景子が席を立ったあと、どん兵衛と有法が、そっとさくらたち三人にお願いした。
「今日はタツが殺されただ。少しずつ村人は減っていってるだ。そのうえ村長まで……村長は強いだども、オラたちから見ても、六十歳以上に見えるだよ。魔法少女時代を思い出して、自分を奮い立たせてるみてぇだが……オラたちが村長を失うのは、村を失うのと同じことだ。村長を守ってほしいだ」
村人は頭を下げた。
「頼むだ」
景子が戻ってきた。
「トイレが近くてさ。歳は取りたくないもんだね」
村人は何もなかったかのように声をかける。
「村長、はしたねぇーだよ」




