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非日常こんにちは

本作は「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『新クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。


神話生物の独自解釈、改変を含みます。

「存在証明を!!」


医里渇探流いざとかたるの人生は、いつだって『名声』、それだけを得るために努力をするものであった。

なんでそんな難儀なことを努力する羽目になったかと言うと、家庭環境がクソの極み乙女もビックリなクソ家庭だったので、性格が複雑骨折した。ただその一言に尽きる。

医里渇探流は、両親に認められたことがただの一つも無かった。勉強も、運動も人並み以上に彼は出来たのだが、彼の四つ上の兄、医里全才都いざとたもつは、まさに全てを持って生まれた天才であった。

医里家がもっとも重視する『医者の素質』も、全才都は申し分もないどころかMAXを超えて有り余って持って生まれてきたので、その全知全能お兄様の弟である渇探流が何をしようとも、両親は関心を示さなかったのだ。

更に、医里渇探流は『医者』よりも『学者』の方の素質があったが故、それも両親の無関心さに拍車をかけていた。

渇探流は医学書を読むよりも、民俗学、人類学、考古学、果てはオカルトまで、『文系』と括られる学問の方が、好きだったのだ。

しかし、それは医里家では、『落ちこぼれ』と、見做される。

生まれてから本の虫のごとく様々なジャンルの書物を読破しようと、幼いながらに外国語を複数話そうと、医里渇探流の両親は「ふーん」の、一言で済ました。渇探流のことなんて、本当に興味が無かったのだ。

最初は、医学方面では絶対に勝てない兄に勝てる分野として、渇探流は一生懸命、両親に認められる為に、自分の得意なことを勉強した。しかし、勉強をして、学校で、県内で、全国で一番になっても、両親は「ふーん」としか、言わなかった。

おい全国一位やぞ他になんか言うことあるやろ一言ぐらい。

この時点でだいぶ性格が捻くれ曲がっていた渇探流であったが、この時はまだ、両親の愛を諦め切れていなかった。もっと、もっと『他』よりも優秀になれば、きっと、きっと両親も、少しは自分のことを見てくれると、まだこの時は希望を持っていたのだ。

あの時の俺に言いたい、とっととクソ両親のことなんか忘れてアメリカ行け、と。

やはり医学関係で成果を出さないとダメなのだと、渇探流は他の勉強の最中、医学方面の勉強も頑張った。めちゃくちゃに頑張った。頑張ったが、渇探流が百勉強して出来ることを、兄の全才都は一勉強するだけで出来るようになってしまうのだ。シンプルに死んでほしい。

それでも二百、三百と努力を重ねれば、少しは報われると思っていた。兄の領域にまでは届かなくとも、両親は自分の頑張りを認めてくれるはずだと、この時の渇探流は、愚直なまでに希望を抱いていたのだ。

あの時の俺に以下略。

そして頑張って、頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って頑張って。

初めて全国数学コンテストで三位を取った時、両親が渇探流にかけた言葉は「全才都は一位だったのに」であった。


この一言で、渇探流は壊れた。


今までは絵に描いたような『良い子』ちゃんでいた渇探流が、自棄になり、好き勝手し始めたのだ。

それでも両親は渇探流に何も言わなかったし、注意もしなかった。本当に、渇探流のことなんて、どうでもよかったのだと、この時になってようやく、渇探流は認めざるを得なかった。


「両親から離れよう。なるべく遠くがいい。そうだ、留学しよう」


そうだ京都行こうのテンションで、渇探流はちょうど学校で募集されていたアメリカへの留学を決めて、中学に上がる前にアメリカのミドルスクールに編入、ビザの取得から大学まで勉学に勤しみ、アメリカが誇る勉学の最高峰、ミスカトニック大学へ入学し、ミドルスクールからの飛び級に次ぐ飛び級で大学を卒業からの就労ビザで准教授に就職からの、アメリカ永住権取得を果たし、アメリカ国籍も見事に獲得したのであった。

裏を返せば、それだけあの家との繋がりを、断ちたかったのだ。

そして、結局十二歳から八年間、一度も日本に帰らず、少年は大人になった。

渇探流は自分に当てられた教授室に着くと、どっかりとソファに座った。

ソファの前にあるローテーブルには山と積まれた書籍や資料が置いてあり、また、その言語は様々なものである。

ラテン語、ヘブライ語、英語、日本語、ロシア語、スペイン語、イタリア語、エトセトラ。数え始めたらキリがない。

その全ての言語を読み解き、また話せる人物は世界広しと言えど、自分ぐらいのものであろう。と、掛け値無しに渇探流は考えながら、課題政策のために用意したロシア語の本を手に取った。


『〜〜………〜〜〜〜……』

『…………ん?……なんだ?』


栞を挟んでいた部分を開き、教え子が来るまでに少しでも課題政策を進めようとした渇探流は、聞き覚えのない言語に眉を顰めた。

それはあらゆる言語を駆使する渇探流にも聞き取れない、不明瞭な言語であった。


『言語……なのか?まるで、古びたカセットテープを逆再生してるような……』

『〜〜〜〜……〜〜〜〜、〜〜〜〜』

『……明瞭になってきた……?なんなんだ?これ、』


は。

と言う前に、渇探流の意識はプツンと途切れた。







「——————魔術は!?成功したのか!?」

「おそらくは」

「おそらくじゃ困るんだよ!すぐにでもコイツには働いてもわらなきゃならないんだから!」


……日本語?何故、八年も前に捨てた母国の言語が聞こえて来るんだ……?いや、違う母国は今はアメリカだ。そんなことはどうでもいいなんだこれは誘拐かドッキリかどっちだ。

やたらと重い瞼を開けて、ゆっくりと渇探流は瞬きをした。最初はぼんやりとしか見えなかった風景が、何度かパチパチと瞬きをすると、ピントが合ってくる。

——————SF映画の、セットかなんかか?ここは。

周りを見て、最初に渇探流が抱いた感想はそれだった。

広いドーム状の部屋には何人ものスーツ姿の人間が座っており、画面に何個もウィンドウが開かれているのは映像や何かのグラフ、明らかに街中の監視カメラの映像などなど、多岐に渡っている。

渇探流自身の姿を見ると何故か病院着を着させられており、更に腰に馴染むグロック19の重みが無い。

——————拉致、か?

その結果に基づいて渇探流が考えたのはそれである。これでも世界的に有名であることは自覚はしている。しかし真昼のミスカトニック大学に進入して拉致を行うとは、犯人は一体どんな手練れであろう。国際的テロ組織か?

俺は世界の国宝カトゥール・ウェンライト教授だぞ?ボストンバックにでも詰めやがったのか?——————ああ、万が一にも、ダンとは鉢合わせたりしてはいないだろうか。

ようやく回転してきた頭で、グルリと渇探流は改めて、周りを視線だけで見回してみた。その渇探流の動きに気がついたのか、先程から何やら喚いていた男が、妙に近代的な椅子のような何かに座らされた、渇探流の前に立ちはだかる。


「気がついたか!おい、お前の名前を言ってみろ」

『先に貴様の名を名乗れ豚野郎』

「……はっ?なっ、なんて言った?」

『ロシア語は馴染みが無かったか?じゃあフランス語ならどうだ?お優しい俺がもう一度言ってやろう。先に貴様の名を名乗れ豚野郎』

「……もしかしてコイツ、日本語が話せないのか……?おいっ!本当にコイツの中身は医里渇探流なんだろうな!?」

「はい。それは間違いありません。それと、彼は正確に貴方の言葉を理解しています。先に名を名乗れ豚野郎。と、言語を変えて二回、話していました」

「なっ……!?」


仕立ての良いスーツを着た恰幅の良い男は、顔色を変えて渇探流を見た。それを渇探流は真顔で見返してやる。

男の腕がプルプルと震えていたが、どうやら殴りかかってはこないらしい。首が無くなるほど肉のついた身体を渇探流に改めて向けながら、男は偉そうに胸を張って、ようやく名を名乗った。


「私は国防省怪異対策部特務課、課長だ。規則により名前は名乗れん」

「こちらの名前は既に把握していたようだが?それになんだそのファンタジーな課は。ジャパンにそんな奇特な省庁があるなんて話、聞いたことがないぞ?」

「貴様日本語ペラペラじゃねぇか……!?ではなく、ジャパン?お前は生粋の日本人だろうが?しかもなんなんだその口調は?」

「人生の半分ほどをアメリカですごしていたから、自分がジャパニーズだという認識が薄くてね。というか、違う違う。日本人扱いするな俺はアメリカ人だ。しかし、そろそろ状況を説明しろ。ただの拉致では無さそうだと言うことぐらいしか、俺にはわから——————」

「アメリカですごしてたぁ!?あの箱入りの医里渇探流がぁ!?」

「急にでかい声を出すな素で驚くだろうがこの馬鹿……というか、箱入り……?貴様は何を言ってるんだビッグピッグ。無謀、無鉄砲、歩く爆弾、危険物、人格破綻者とはよく言われているが、ハコイリなんて言われたことがないぞ?どちらの医里渇探流さんだ?それと俺の名前はカトゥール・ウェンライトだ二度と間違えるな」

「おい今デカいブタって言ったのはわかったぞお前、お前は本当に……医里渇探流……なのか……?」

「確かに俺は医里渇探流という名前だった。しかしおたくらが先程から話している『医里渇探流』なのかは、俺は知らん」

「……おい」

「精神交換には成功してます。世界線が違えば、いわゆる『亜種』のような存在も多数おります。今回は天文学的な数字で、その『亜種』を、引き当てたのだと思います」

「精神交換……?」


医里渇探流は腕を組んで、小首を傾げた。

てっきり自分は誘拐されたのかと思ったのだが、なんだかいきなりきな臭い話になっている。いつまで経ってもドッキリの札を持った番組スタッフも現れないし、これは全くもって話にならなさそうな課長なる人物ではなく、そいつと話している無表情の男と話をしてた方がいいかもしれない。そう思って、渇探流は顔を無表情の男に向けた。


「精神交換とはなんだ?そこの美形君」

「言葉のままです。『この世界』の医里渇探流と、『貴方が元いた世界』の、医里渇探流の精神を交換しました」


渇探流はここで再度、部屋の中を注意深く見回した。アメリカではタチの悪いドッキリ番組が横行しているのだ。渇探流も何度かその餌食に遭った経験がある。その類かと思ってカメラがないか慎重に探したのだが、渇探流の目ざといと評判の観察眼でも、『ドッキリ』用のカメラは、見つからなかった。

その代わり、本物の監視カメラはたくさんあった。あり過ぎる程にあったので渇探流は不気味に思いつつも、質問を続けた。


「その話を信じろと言う方が無理な話ではあるが、一応質問をしてやろう。なんでその精神交換とやらを『この世界』の医里渇探流は受けたんだ?」

「それは私から説明するより、貴方の部屋にある『今までの医里渇探流』の手記を読んだ方が早いと思います」

「そうか、ならその部屋に案内してくれ」

「わかりました。こちらになります」

「私抜きで話進み過ぎじゃない!?」


ビッグピッグが何か喚いていたが、渇探流はスルーして美形君の後ろをスリッパで、ペタペタとついて行った。

——————一体、どこまで手の込んだドッキリなんだ?

先程の部屋を出ると、やはりSF映画のような近代的な廊下に出た。渇探流はドッキリの可能性か誘拐の可能性しかないと思っていたが、それにしては設備が本格的過ぎる。よくある映画のセットのようなハリボテな作りではなく、本当に人が生活している、なんと言うか生活感がありありとこの施設にはあった。疑問は尽きなかったし、もしかしたら本物なのか?という懸念も出てきてしまったが、今、渇探流にとりあえず出来ることは、この前を歩く美形に着いて行くことだけである。

窓一つ無い廊下を右に左にと複雑に曲がって行ったが、そこはフィールドワークの鬼の渇探流である。しっかりと道順を頭に叩き込みながら、彼は歩いて行った。

そして数分ほど歩いた先で、等間隔に扉が並んでいる区画に出てきたと思ったら、その一番手前の扉を男が指し示し、「こちらが貴方の部屋になります」と、やはり無表情で渇探流に伝えてきた。


「鍵は虹彩認証と静脈認証になります。こちらに手と目をかざして下さい」

「随分とハイテクなんだな?」

「ここには外に出してはいけない情報しかありませんから」


一体ここの『医里渇探流』は、何をやっていたんだ?ミスカトニック大学の禁書庫並みの警備システムだぞ?

渇探流はそう思いながらも、虹彩認証と静脈認証をクリアする。マジかよ本物じゃねぇか。と内心ビビッているうちに、カチャリ。と、鍵が外れる音がした。


「この部屋にある物は、全て貴方の物です。好きに使って下さい。一時間後にまたお部屋をお尋ね致します」

「この部屋に白衣とグロック19はあるか?」

「…………は?」


今までずっと無表情だった男が、少しだけ目を見開いた。一度で聞き取りやがれと渇探流が内心思いながらも、もう一度同じ問いをする。すると、男は驚いたような表情をしながら、首を横に振った。


「では、一時間後にアンタがここに来る時に持って来てくれ。アレが無いと落ち着かないんだ」

「……はぁ……拳銃は、ともかく……白衣……ですか……?わかり、ました……」

「頼んだぞ」


渇探流はそう言うと、ガチャリと自室だと言われた部屋を開けて、中へと入って行った。

扉が閉まる直前「亜種だからか……?」との呟きを拾ったが、あえて渇探流は聞き流して、扉を閉めた。

——————亜種、亜種と。まるで『通常』の医里渇探流が、クローンのように大量にいるような発言ではないか。


「俺は、俺だ」


十二歳で単身アメリカに留学した時に、自己の、己の価値を、他人に委ねるのはやめたのだ。委ねるぐらいならば、逆に押し付けて認めさせてやるのだ。相手が無視できないほどに。

さぁ、俺の、俺による、俺の為のサーチ&インベスティゲーションの時間だ。

自分の教授室とは全く異なり、キッチリと片付けられた室内に向かって歩き出し、早速渇探流は、家探しを始めた。


「監視カメラの類は無し。クローゼットの洋服は……なんなんだ……?この、坊ちゃん趣味の動きにくそうな服は……?」


渇探流はとりあえず監視カメラと盗聴器類が無いかだけを確認し、次に服を着替えようと、クローゼットを開けた。しかし、そこには品の良い坊ちゃんが着るようなノリの効いたシャツに、小洒落たスーツがズラリと並んでおり、渇探流は鳥肌が立った。こんなものを着るぐらいなら、まだ病院着の方がマシである。

渇探流はクローゼットの中身から目を逸らすと、クローゼットの扉の裏側に、姿見が貼り付けられているのが目に入った。そういえば『精神交換』などという怪しいこと?をされて?から、自分の姿を確認していなかったな。と、渇探流は姿見を覗き込んだ。そこには鳥の巣をぐちゃぐちゃにしたような頭、鋭い眼光の下に濃い隈、筋肉が付きにくいヒョロイ身体。と、目が覚める前までの自分自身がそのまま鏡に写っており、渇探流は知らずに安堵のため息を吐いていた。


「次は、机……」


誰にともなくそう言うと、渇探流は豪奢な机に向かって歩き出した。その机も綺麗に整頓されており、パッと見で気になる部分はない。大学の自分の部屋とは大違い過ぎて、鳥肌が立つ。本当にここは『俺』の部屋なのかよ。

引き出しを開けようと手を伸ばしたら、一番上だけ鍵がかかっていた。そして、他の引き出しには何かの資料がファイリングされていた。

とりあえず鍵はどこだと渇探流は探そうとしたが、鍵穴がちょうど渇探流の人差し指と同じ大きさであることにティンと気づくと、物は試しと、ズボッと突っ込んでみた。これで指が切断される罠とかだったら笑えないが、自室にそんな罠が仕掛けられているわけがないだろう常識的に考えて。

そんなことを脳裏で一瞬で考えていると、ピッ。と、先程の静脈認証と同じ音がして、ロックが外れる。


「机……に、静脈認証……?現代の技術で……?いや、技術的には出来るだろうが……なんの意味が……?」


こんなめんどくさい手順を踏まずとも、バールか何かで引き出しなぞこじ開けてしまえばこんな仕掛け、無いにも等しい。それとも自分以外が無理矢理開けようとすると爆発でもするのだろうか。アメリカ映画ならまず間違いなく爆発するな。

そして、その引き出しの中には一冊の手記が入っていた。タイトルは『何番目かわからない僕へ』。


「僕……?薄々感じてはいたが、推定プロトタイプ医里渇探流は、『あの実家』から逃げ出さなかったタイプの医里渇探流なのか……?めちゃくちゃ開きたくなくなったぞこの手記……確実に俺への精神ダメージ入るやつじゃねぇか……」


渇探流はそう言いながら、表裏と重厚なハードカバーの手記を手の中でもてあそんだ。見たくない、しかし、見なければ話は始まらない。他の部屋に大量の書物もあったし、この医里渇探流教授が見たこともない言語の本もあったのでめちゃくちゃそれを読みこんで解読したいが、まずは状況把握が先である。

渇探流は大きくため息を吐くと、その手記を開いた。


——————何番目かわからない僕へ、これを読んでいる君は、とても混乱していると思う。僕も最初は混乱したよ。

初めに書いておくと、元の世界に戻る方法は無いよ。何人もの医里渇探流が元の世界に戻ろうと研究を重ねたみたいだけど、二十七人目で諦めたみたいだね。興味があったら書斎に資料があるから見てみるといいよ。

次に、この世界の説明をするね。呼ばれた僕の世界がどんな世界だったのかはわからないけれど、ここの世界よりは平和な世界だったんじゃないかな?第三次世界大戦とか起きてなかったらね。

この世界には一般的には『化物』専門機関には『神話生物』と呼ばれる、危険なもの達が潜んでいるんだ。それに付随してヤクザとかマフィアとかも普通に活動してるから、治安はかなり悪いよ。外に出る時は士道さんか、他の護衛の人と必ず一緒に行動してね。冗談でもなんでも無く、脳みそ抜かれちゃうからね。

僕はそこの特務課捜査処理班に所属してる。医者にはなれなかったけど、どうも僕は魔術との相性は良かったみたいでね。この話が来た時には実家から二つ返事で追い出さ……快諾したよ。

魔術なんて非科学的なもの、今回来た僕は信じるかな?もう『精神交換』って言葉は聞いたと思うけど、あれも魔術だね。魔術は使えば使う程に正気を失っていって、頭がおかしくなっていくんだ。魔術の乱用はおすすめしないよ。そうじゃないとすぐに廃人か狂人になって、また他の世界線の医里渇探流と精神交換されてしまうからね。

僕は主に士道ウィルフレッドさんっていう人とバディを組んで捜査をしているよ。とても良い人だから、わからないことがあれば彼に聞いたらなんでも教えてくれると思う。

まとめるとあまり書くことも無いね。後のページは次に来た僕が疑問に思ったことを書いて、それに答えが出たら書き足していくっていう使用用途でいいかな?

それじゃあ、新しく来た僕、歓迎するよ。せめてこれからの君の幸せを願おう。

僕ぐらいしか、僕の幸せなんて願ってくれないからね。


「……地獄か?」


その後の数ページをペラペラと捲り、手記を閉じた渇探流は、一言、そう呟いた。

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