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痛みだけが現実

「扉……か……?」

「扉だろ、どう見ても」


愛生が疑問符を投げかける中、渇探流は即答した。

自分の推理が当たった時の、ゾクゾクとした感覚が背筋を上り、脳内にドーパミンがドバッと出る。

渇探流は響にライトで照らし続けるように言うと、その扉へと手をかけた。


「ばか!!カトゥール!!」

「素手で触るな!!」

「…………はっ……?」


二人が叫んだ時には、もう遅かった。

渇探流の指先は、すでに扉に触れていた。

———その、瞬間。


ジュッ。


音が、した。

遅れて、鼻を突く。

肉の焼ける匂い。

それも、他人ではない———自分の肉の匂いだと、脳が理解する。


「———っ、あ……?」


一瞬、何が起きたのかわからなかった。

熱い、ではない。

痛い、でもない。

———張り付いた。

指先が、離れない。


「っ、な……!?」


次の瞬間。

ブチブチ、と。

皮膚が、音を立てて裂けた。


「っ、ぁああああああああああああああああああああああッ!!?」


遅れて、激痛が神経を焼き切るように駆け上がる。

熱い。

熱い熱い熱い熱い熱い———

いや、違う。

焼けている。

自分の手が、今この瞬間も、扉に触れている部分から焼かれ続けている。


「カトゥール!!」


ガッ、と。


愛生が腕を掴み、無理やり引き剥がした。

ベリッ。

嫌な音が、やけに大きく響いた。

剥がれたのは、手ではない。

———皮膚だ。


「っ……ぁ……!!」


視界が、揺れる。


指先から手のひらにかけて、赤黒く爛れ、所々が白く露出している。

剥がれた皮膚が、扉側に薄く貼り付いているのが見えた。


「カトゥール!!大丈夫か!?」


「だいじょ……っ……ぶ……に……見える、か……!?」


声を出した瞬間、喉の奥が引き攣る。

遅れてくる痛みが、波のように何度も押し寄せてくる。

ジンジンとした鈍い痛みではない。

針で刺すような痛みでもない。


———焼かれながら剥がされる痛みが、まだ終わっていない。


「カトゥール!素手で触るやつがあるか!!」

「ああああ応急手当てキットは荷物になかった……!!大丈夫……じゃねぇよな……!!とっ、とりあえず早くこの部屋出ようぜ!!なっ!!」

「……本当に……一歩間違えたら……死ぬんだな……」


万が一、最初のように壁に耳など当てていたら、大惨事だった。

渇探流が呆然としながらそう言うと、響と愛生は『何を今更』と言った表情でお互いの顔を見合わせた。


「カトゥールの手際が良すぎて忘れていた。先程まで神話処女だったんだよな。こう言う扉では、こうするのが正解だ」


響がそう言いながら上着を脱ぎ、手に包帯のように上着を巻きながら、渇探流に話しかけてくる。

その間、愛生は渇探流の手をマジマジと見ながら、二カリと笑った。


「少しの火傷……と、皮がちっと剥がれたぐらいだな!!これぐらいで済んでよかった!!」

「よかった……のか……?まあ、よかった、か……」


この世界の常識で言うと、皮膚が爛れて剥がれる程度の火傷は『この程度』のことなのだろう。常識人っぽい二人がそう言うのなら、これがこの世界のスタンダードだ。

響は慣れた様子でライトで照らしながら扉に手をかけ、一気に開ける。

その先は———真っ暗闇であった。


「どうやらビンゴっぽいな!!」

「ああ、出口で間違いないだろう」

「真っ暗闇なんだが??本当に出口で間違いないのか??むしろ地獄の入り口だろ」


渇探流はツッコむが、継続探索者の二人は時間がないととばかりに渇探流の背中を押す。


「大丈夫だって!不安なら手でも握っててやろうか?」

「子供扱いするな!!単純に出口に見えないんだよ!!」

「大丈夫だカトゥール。間違いだったら死ぬだけだ」

「何も大丈夫じゃないんだが!?」


やはりこの世界の人間は狂っている。と渇探流が慄いていると、二人に背中を押された。


「大丈夫だって!!継続探索者の言葉を信じろ!!」

「ああ、保証しよう。それに、もうタイムオーバーだ。このままここにいても死ぬ」

「……くっ……!!」


確かに、黒いシミは既に床の半分以上まで侵食し、まるで渇探流達を出口へ追いやるように、その範囲を広げていた。


「……信じるからな!!」

「ああ!!信用しろ!!そうだ!私は新宿で『何でも屋皆吉』って店をやってる!ホームページもあるから検索してみろ!!そしてご贔屓に!!」

「俺は警視庁の捜査第一課に所属している。何かあれば警察に駆け込め」

「既に駆け込みたい案件があり過ぎる……!!」


渇探流は二人に背中を押される形になりながらも、暗闇へと一歩、足を踏み出した———と、思ったら、そこに床などはなく、一瞬の浮遊感のあと、渇探流達は真っ逆さまに———暗闇の中へと、落ちて行った。


「これやっぱりだめだったんじゃねぇかああぁぁぁぁぁ———!?」


渇探流の叫びは、響と愛生の笑い声に飲み込まれた。

渇探流は落ちながら段々と意識を失っていき———そして、視界が潰れた。


「—————————っ!?」


ガクッ!!と、身体を震わせた場所は、自室———と言うにはまだ慣れない、己の私室だとあてがわれた部屋の、机の上だった。


「……はっ……?……えっ……?」


あの現象を見る前、机の上で寝落ちをした態勢のまま、渇探流はパチクリと目を瞬かせながら、上体を起こす。


「夢……だった……のか?……いてっ」


やけにリアルな夢を見たのだろうかと渇探流は思ったが、右手に走った痛みに顔を顰めた。

その手は火傷を負っており、所々、皮膚が剥がれている。

渇探流は呆然としながらその手を見つめて———


「……夢じゃ……なかった?」


その手の痛みだけが、現実を肯定していた。

今回から投稿頻度重視で行きます。

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