花邑杏子は頭脳明晰だけど大雑把でちょっとドジで抜けてて馴れ馴れしいがマジ傾国の美女【第31話】
「なあ、子供は何人欲しい?なあってばよ~」
「俺、仕事行かなきゃーー」
「やっぱり、野球チームが作れるくらいか!そうか、なら私、頑張るからな」
「お前みたいな奴は、君島さんに口説かれちまえ」
「あらーーあなた、妬いてるの?今なら誰も見てないから」
「何だよ」
「あなたになら、耳をペロペロされてもいいな」
「君島さんがいるって。俺じゃ力不足だ」
「あらま、てっきり'役不足'って言うかと思ったわ!もう、恥ずかし屋さんでしかも、欲しがり屋さんなんだから。はい」
牛乳瓶クソメガネマスク女が、何をやっているか、さっぱり分からないーーああ、多分チューだ。
「あ、もうこんな時間!それじゃあなーー」
義範は立ち去った。
・・・・・・
3分たったところで、花邑杏子は漸く気がついた!
「あいつめ!・・・もう怒った。これからは制裁の時間よ!見てらっしゃいーー」
夜。義範が帰宅した。
なんだか玄関前で騒いでいる。
「お願いだから、静かにしてーー」
あの大家のおばさんが、珍しく怯えている。
あの、毎度お馴染み顔馴染みの若いもんのひとたちだ。
「あのー、通りますよ」
スカしてみせた義範。そのあと頭を小突かれた。
「貴様、金返せや!」
花邑杏子だ。どういうことだ?
「貴様、この私から金借りたろ。その額5万円!利息つけてとっとと返しな」
「あのなあ、あのとき二人、愛し合ってたときか。即座に利息つけて払っただろ?」
「えーーあのときか・・・ん、んん。そうだったな」
「姉さん、とうとう、キメたんですか!?おめでとうございやす!」
こいつは相当な見栄っ張り。ただ理不尽な真似をしたいだけの極道の娘が手下連れて何しに来たかと思えば・・・
「これから、こいつを教育するから、先に帰ってな」
「いや、そういうわけにはいきません。お嬢の安全を保証する義務が私らにはあるんでーー」
「んじゃ、これで寿司でも食いな」
若いもんのひとりに、札束を渡していた。
「へえ、有難うございやす!おい、みんな行くぞ」
若いもんのひとたちは、速やかに撤収していった。まるで騒ぎなどはじめからなかったみたいに。
大家のおばさんにも礼を言わないと・・・って、いない。逃げたな。取り敢えず、花邑杏子を部屋に上げたーーすがさず義範を抱き締めて離さない。
「今日は絶対に、寝かさない」
「よせよ。明日も仕事なんだから」
「あら、私もよ・・・って、虚しい!」
義範はすっとんきょうな顔で「何が?」と聞いた。
「何もクソもないでしょ!私はあなたに、ただの一度も抱いてもらったことがない・・・」
「そんな、俺がいかにも女をとっかえひっかえしてるみたいに・・・」
「私もーーそのなかのひとりでいいから」
「何でそんなに俺にこだわるんだ?」
「だって・・・好きだから」
「結論から言うと、君のことは、抱くことができない。理由はーー分かるよな」
「私がヤクザだから?」
「それもあるけど、一番の理由ーーそれは、跡取り問題だ」
「当然だ。あなたには5代目の跡取りとして辣腕を振るってもらうつもりだ」
「それが、嫌なんだよ!盃交わしたあとは、抗争とか、シノギとか、そんなことをやらされるんだろう?そんな事態になったら、俺ぁ妾を作りまくるぞ」
(・・・・・・)
「それに!お前は巧妙に隠してたと思っているが、いざそんな関係になったら、徹底して俺を尻に敷くつもりだろ!で、テープでがんじがらめにして監禁するに違いないーーどうだ!」
「さうだ・・・いざとなったら監禁すればいいのだ。そうすればあなたのその鎖骨は、永遠に私のもの・・・」
「まさか!お前、鎖骨フェチか?」
「違うわ!私はあなたのその全体を・・・」