51 黒い騎士服
神殿前の集合場所には昨日と同じメンバーの他に、副団長のレオと見慣れない黒の騎士服を着た集団がいた。
私に気付いたレオと黒騎士集団がぞろぞろと私のもとへやって来た。
「ハナっちおはよッース! 今日は俺も一緒に行くことにしたっスよ」
「おはようレオっち、団長と副団長不在で騎士団は大丈夫なの?」
「優秀な補佐官達に任せて来たので大丈夫っスよ。それより団長とハナっちの身に何かあったほうがヤバイっス。それで今回特務隊から助っ人を呼んであるんスよ!」
レオの一歩後ろに立っている黒騎士がペコリと頭を下げた。
「花巫女様初めまして。自分は特務隊隊長のリブラと申します」
リブラと名乗る茶髪のウルフカットの青年は一歩前に出て敬礼をした。リブラの後ろで黒騎士達も揃って敬礼している。
「ハナですよろしくお願いします! リブラさんの特務隊とは一体どのようなお仕事をされてる隊なんですか?」
「表立って言えないような任務ばかりですね」
困ったような笑顔で答えてくれたリブラ。
き、気まずい。
特務隊と挨拶を済ませた後はアリエスとトーラスがやって来て昨日の治療についてのお礼を言われた。
「「昨日は本当にありがとうございました」」
「助け合うのはお互い様ですから、気にしないでください!」
「元気そうっスね、アリエス」
「レオ隊ちょ……いえレオ副団長!」
久々に会った様子のレオとアリエス。話を聞いてみると一番隊の前隊長がレオで、当時の副隊長がアリエスだったらしい。それでたまにレオのことを隊長と呼んでしまうのだそうだ。
「どうどう、止まりなさーい」
突如、この場の雰囲気に似つかわしくない幼女の声が響き渡り一台の荷馬車が慌ただしい様子でやって来た。御者台からぴょこんと飛び降りたのは黒いフードの中から水色の髪を靡かせた背の低い子供だ。
「花巫女様おはようございますです!」
どこかで聞いたことのある声だと思ったら、魔道具専門店のネモフィラだった。
「今日はどうしたのネモフィラ」
「主から花巫女様を手伝うようにって言われて、色々役立つ魔道具を持って来たです。今日は私も参加するですよー!」
「参加って……ネモフィラも戦うの?」
そういえばこの子って水竜族の子なんだった。リシュリューは大蛇の話を聞いてからネモフィラを応援に呼んでくれたんだし心配いらないよね。
「ですです。話は主と団長さんの間でついてます!」
「お店はどうなるの?」
「タマに任せて来たので問題ないですよ」
「そ、そう? それなら大丈夫だね?」
喋る黒猫に任せて本当に問題ないのだろうか。本人が問題ないって言ってるんだから深く突っ込まないでおこう。
それよりもネモフィラの荷馬車の中に入っている魔道具が気になった! テントとか鍋とか色々なものが見えた。
「ねえねえ、あのテントも魔道具なの?」
「あれは設置すると結界が張りめぐされるテントなのです、安心して寝れますよー!」
ネモフィラは身を乗り出し荷馬車から踏み台を取ると、足元に踏み台を置いてその上に乗り、積荷の木箱をガサゴソして一つのランプを取り出した。
「モンスター除けのランプです、花巫女様の馬車に吊るしてください。このボタンを押す事でついたり消えたりします」
「このボタンね、ありがとう早速取り付けてくる」
自分の乗る馬車のステップに足を乗せて、馬車のフックにランプの取手部分を引っ掛けた。これでよし! 満足げに馬車を眺めているとアルバが近づいて来た。
「ハナ、準備が整いました。参りましょう」
私達は馬車に乗り込み、馬車は次の目的地であるウィード村へ向かった。流れる風景を見ながら、先ほど挨拶された黒い騎士服を着たリブラのことを思い出した。表立って言えないような仕事って一体何? 気になるーっ!
「ねぇ、特務隊ってどんなことしてるの?」
「主に身辺調査や諜報活動といった、裏の仕事を主に任せられている隊ですね」
確かに、公の場で言えるような内容じゃなかった!
「パレードの日、私やレオが目立つ場所で護衛していたのを覚えますか?」
「うん覚えてるよ、教皇様と一緒にバルコニーでスピーチしてる時に後ろで国旗持って立ってたよね」
「特務騎士団はパレードで通る道の中で襲撃者が狙いそうなポイントを予測して、そこに警備を厚くするようにと進言してくれました。私達が表立って活動しているとしたら特務隊は影の仕事をしてくれているんです」
「なるほどねー。でもそんな特務隊が今回来てくれたのはどうしてなの?」
「彼らの得意な魔法は闇魔法。聞こえは悪いかもしれませんが、闇魔法は支援が得意な系統なんです。敵の行動を遅くしたり、状態異常にしてくれたり、と戦闘を非常に有利にしてくれるんですよ」
「へえーっ情報戦だけじゃなくて戦闘も頼もしいんだね」
「ええ、頼りになる仲間です」




