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30 お披露目のパレード

1000PV感謝です!

初めての小説で拙い文章ですが、読んでくださっている方がいて嬉しいです。

――教都フォーレスト 教皇庁バルコニーにて――


「この喜ばしい日にお集まりいただいた親愛なる皆さん、聖樹は常にわれらを見ており、聖樹がわれらを見捨てることはありません。われらの愛と祈りが聖樹に届き、ついにわれらの国のもとへ喜びと光である伝説の花巫女がもらたされたのです!」

 

 教皇パウロの演説に広場に集まっていた人々は祈りながら静かに演説に耳を傾けている。私は事前の打ち合わせ通り、伝説の花巫女という単語を合図にバルコニーに出る。

 ワァァァァァァァ!!!!! と私が顔を出すと一気に歓声があがった。


「えっと……。」


 緊張して声が震える、冒頭の挨拶って何だっけ! 頭が真っ白になりかけた時、沢山の歓声の中から聞き覚えのある、耳に心地よく響く声が聞こえた。


「ハナなら大丈夫です。自信を持って!」


国旗を持って後ろに立っていたアルバが、私だけに聞こえるように小声で励ましてくれたんだ!

 そのイケボさえあれば一晩で何でも出来ちゃうよ!

 私頑張る!


「皆さん初めまして、花巫女のハナです。こうして皆さんの前に立つ事が出来て感謝の気持ちでいっぱいです」


 キャーッ! ワァァーッ!!と歓声が上がる。


「聖樹は、私達の生命の源であり自然の恵みをもたらしてくれる存在です。私たちが困難に直面し迷いや苦しみを感じている時でも、聖樹は私達と共にいます。聖樹を守るために私達にできる事があります。それは私達の心に優しさを持つ事です。共に暮らし助け合い、愛と思いやりを持ちながら、聖樹を守り育てるために力を合わせましょう!」


 パチパチパチパチパチパチ……!!

 

 花巫女様ー! 聖樹万歳! 教国万歳! と湧き立つ広場。

 事前に考えていた言葉の半分も言えなくて、めちゃくちゃになってしまったけど、何とかなって良かった。あとは教皇様に任せる! スピーチを終えて、一礼した後は逃げるようにバルコニーを去った。


「お疲れ様でしたハナ様〜」


 ロビーのソファに座ると、ミィが冷たい水の入ったピッチャーとグラスを持って来てくれた。緊張して体が熱くなってたので、冷たい水がとても美味しく感じた。


「全然うまく喋れなかったよー。スピーチの内容も、みんなに手伝ってもらったのに、半分くらい端折っちゃったし……」


 みんなというのは、ロサさんとアルバとミィ。急にこれから一緒にスピーチして欲しいって教皇様に言われて、何を言えばいいのかまったく思いつかなかったので、皆に泣きついて助けてもらったのだ。


「私、感動しちゃいましたよ〜ふぇーん!」


 えっちょっ、本気で泣いてる!?


「泣かないでー! はい、ミィもお水飲んで」


 未使用のグラスにピッチャーの水を注いでミィに手渡すとミィは受け取った水を一気に飲み干した。


 広場から再び拍手が響き渡ったあと、バルコニーから、教皇様と国旗を手にしたアルバとレオっちが出てきた。


「よく出来ました」「ハナっち、ナイス演説!」


 アルバの手がポンっと頭に置かれ、お褒めの言葉をいただきました。ドキーッ!

 今ものすごい量のマナが体の中で作られていくのを感じる。胸の中がじんわりと温かくなった。


「次はパレードです、広場に行きましょう」


「うん」


 教皇庁の裏口から外に出ると、二頭の白馬がけん引する屋根の無い煌びやかな馬車と、騎乗した神殿騎士が整列して待機していた。


 私が馬車に乗りこむと、騎士達は流れるような動きで二手に分かれて、馬車の前後についた。私の馬車の前を歩くのは白い馬のお尻。馬車以外にこの場にいる白馬はマキシマしかいない、アルバの馬だ。すぐ近くで守ってくれてるんだ……。嬉しいな。


 馬車は広場を出てゆっくりと大通りをぐるっと周ってゆく。その間、たくさんの人に向けてにこやかに手を振った。

 まるで、選挙カーにのった政治家みたいだなぁ、なんて思いながら馬車は再び広場を通り、教皇庁裏口に戻った。


「ハナちゃんお疲れ様!」「ハナさん、よくやった」


 労いの言葉をかけてくれたのは、大きく開いたデコルテのグリーンのドレス姿のロサさんと黒い立襟の司祭服に身を包んだサンジェルマン卿だ。


「今日はうちの屋敷に泊まっていきなさいな! もちろんミィも一緒に。ねぇ、アナタ」


「そうだな。ハナさん今夜はうちに泊まっていきなさい!」


「ありがとうございます。ご厚意に甘えさせてもらいます。」


 元々今夜は教皇庁に泊まっていく予定だったけど、教皇庁といえば、エントランスに着くや否や、権力者と思われる身なりの良い老人たちがやって来て、婚約者はいるのかとか、色々言い寄られてすっごく疲れた記憶しかなかった。泊まらずにすんで良かったわー。教皇庁には騎士団の皆だけ泊まっていっていただこう。


「私もこの人もまだやる事がのこってるから、ハナちゃんはアルバと先に屋敷に帰ってて! アルバ、ハナちゃんを宜しくね」


「はい、母様」


「わ、いつの間に! アルバは騎士団の皆と教皇庁に泊まるんじゃないの?」


 そう問いかけると、アルバはにっこりと微笑んだ。


「そこは、団長権限を行使させていただきました」


 うわっ後光眩しっ! 出たーっ天使スマイル! でもちょっと魅惑的な小悪魔に見えなくもないような。一粒で二度美味しい堕天スマイルいただきました!!


 今夜はお泊まり決定でドキドキの予感ですーっ!


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