幽霊の証明(終)
「そろそろめくるか」
夢路はバサッと布を取り上げる。すると、中から出てきたのは、オカルト部を立ち上げようとしている三河だった。
「まあ、予想通りだな。動機はやっぱり、部員集めのためか」
「……だって、しょうがないじゃないですか。夢路さんや今際さんだって実際、オカルトなんて信じてなかった。だから、僕が見せてあげることで、信じて欲しかったんだ。彼らは本当に存在してるって」
「三河、俺達がどうしてそういう幽霊だとかオバケだとかを信じてないのか教えてやるよ。お前みたいな奴がいるからだ。人に信じてもらうためだとか理由は知らねえけど、嘘っぱちの作り物を声高々に本物だと言い張る。人を騙してだ。そんなことをしているから、誰も信じちゃくれねえんだよ」
三河は力なく下を向いている。
「マキ、チビ助。行くぞ」
三人は何も言わず、ここから去った。これで今回のオーロラ怪人の件は幕を閉じた。
***
あれから数日が過ぎた。オーロラ怪人の姿を見た者はあれ以来一人もいない。大方の連中は、ただの見間違いだと考えて、すっかり事件のことも忘れている。これで幽霊騒ぎは完全に収束した。探偵部はいつものように部室で依頼人を待っている。
コンコンコン。ドアがノックされた。
「はい、どうぞー」
ソラは訪れた客を迎えるために声をかける。ドアが開くとそこにいたのは、三河だった。
「どうした? オカルト部には入らんぞ」
珍しく起きている夢路がキッパリと宣言する。
「いや、そのことなんですけど。……実は部員が五人集まったんですよ、この前のオバケの効果もあって」
「そうか、よかったな。用件はそれだけか?」
「今日ここに来たのは二人に一つ、僕から約束をしたいからです」
「ほう。どんな?」
夢路はしっかり三河の顔を見つめる。
「僕は今後一切、ああいうことはしません。真っ当に一生懸命になって、本物のオカルトを探してみようと思います」
「いいんじゃないか。そういう信念は」
「今回のことは、僕にとって何か大切なものを思い出させてくれた気がします。本当にありがとうございました」
そうやって三河は頭を下げると、踵を返してどこかに行ってしまった。
「いいねえ、青春で」
夢路は笑みを浮かべてベッドに向かう。
「彼のこと、先輩はどう思っているんですか?」
「手段は褒められないが、目的は面白いじゃないか。部活を作るなんて、本当に自分な好きなことについてなら楽しいだろうさ」
ソラは黙って考える。確かに今の自分は充実して活動している。しかし、半ば巻き込まれた夢路は?
「俺も昔は何か部活に入ってみたいと思っていたんだよ。でも、一日の半分は寝ないといけないからな。その分のせいで部活にも時間を注げない。短く、熱く、そして楽しい青春の時間を、俺も過ごせたらなあ。寝なくていい奴らはいいよな」
夢路の話をソラは静かに聞いている。
「そんな時、お前さんが声をかけてくれた。そういう意味で俺は感謝してるんだぜ」
ソラは胸が熱くなる。そうか、探偵部は私だけのものじゃない。先輩にとっても大切なものだったのだ。夢路の口からはっきりとこんな話を聞いたのは初めてだったが、これからちゃんと忘れないでおこう。
その後、桜坂学園に新しい部活ができたらしい。まあ、何の部活かは知らないけど。
「幽霊の表明(完)」




