幽霊の証明(10)
中々面白い夢が見れると、朝イチから気分が上がる。今日はいい一日になるな。
「おはよー」
桐生が力ない声で入ってくる。もしかして、コイツ昨日は寝れなかったのか?
「よう。昨日はグッドナイトじゃなかったのか?」
「まあね。あんた神経図太いよ、やっぱり。何だかんだ言ってても、ちゃんと寝れられてるし」
「お前二人部屋なんだから、言う程怖くねえだろ?」
「昨日は同室の子にも起きててもらった」
「おいおい、迷惑かけんなよ。そういや、お前の同室ってどんなやつ?」
今まで聞いたことなかったな。今にしてみれば。
「川口 ハルちゃんっていう五組の子だよ」
「五組か。知らねえな」
「リュウは会ってても、すぐに忘れちゃうじゃない」
「まあ、そうだけどよ。ところでよ、一つ頼みがある」
「何? 改まって」
「今日も張り込みをしたい」
マキの顔が曇る。昨日寝れなかったらそうなるよな。
「頼む。今日でおしまいだから」
「ホントに?」
「ああ。絶対今日でケリをつける」
「何か当てでもあるの?」
「ある。バッチリな」
「うーん、ならまあいいよ……。でも今日はアンタが突撃係ね」
「ああ、お前はいてくれるだけでいい」
「いるだけでいい、か。何考えてるのかさっぱり分かんない」
「まあ夜になれば、嫌でも分かるようになるさ」
楽しみだな、今夜が。でも、その前にアレとアレを準備しておかないとな。
「おはようございます……」
遅れてソラが夢路の部屋に入ってくる。目の下にクマが出ているところを見ると、桐生と同じだったのだろう。
「チビ助、今日も張り込みだ」
「ええ……」
いつも明るく朗らかなソラがここまで拒否反応を出すとは。夢路は少し意外に感じる。
「嫌なら別に来なくていいぞ。マキと俺の二人で頭数は揃っているからな」
「いえ、行きます! 行かせてください」
急に元気になって驚いた。
「では三人で今夜リトライと行こうじゃねえか」
夢路の不気味な笑みとは対照的に、ソラと桐生の表情は重い。
***
「皆さん、おはようございます! 昨日はどうでした? 例のオバケは見ましたか?」
「おう、三国。実は昨日頑張ってみようと思って廊下で張り込んでたんだ」
「僕は三河です。で、現れましたか?」
夢路と同じく元気な三河。ソラと桐生は口を閉じている。
「ああ、現れた。でも、俺見逃しちまってよ。一緒にいたこいつは見たらしいんだけど。だから、今日も頑張ってみようと思う」
「なるほど、じゃあ今日こそは絶対見れるはずですね」
「おう。俺のモチベーションはそのくらいだ」
「いいですね。じゃあ、僕はこれで」
またしても朝の校庭で声をかけられた。おそらくここで待ち伏せているんだろう。さて、とりあえず準備の一つはさっさと終わったし、後は放課後でいいか。
ああ、学校かったるいな。このまま放課後まで一気に時間が吹っ飛べばいいのに。
そんな夢みたいな夢路の願望は叶わなかった。彼は真面目に授業を受けた。二、三限と五限目はなぜか記憶がないが、彼は真面目に授業を受けた。そう主張している。
とにかく、今日の授業は全部終わり、放課後になった。これであそこに行けば準備完了だ。夢路のテンションがどんどん高まっている。
***
「リュウ。起きてー」
魚の骨が喉に詰まった。これは映像だけではイマイチどのくらいの不幸か分からないが、経験している本人からすると、かなりの苦痛になるだろう。今日の晩メシで、これの被害者が出るのか。本人は辛いのだからバカにせず、やさしく接してやろう。
まあ、どっちかと言うと詰まった、よりも引っかかったの方が体感的に正しい気がする。素朴な疑問を気にしながら夢路は自室のベッドに寝転がっている。
「ねえ、起きてる?」
「起きてるよ、バッチリ」




