幽霊の証明(8)
「忘れたの? もし幽霊とかそういうオカルトのようなものを体験したら入部してくれるって言ったじゃないか」
「ああ、そういえばそうだったかも」
実現することはない約束はとても印象が薄い。
「で、実際にオバケが出た訳だから、もちろん入部してくれるよね?」
『まずいな、これは』
「さっきから何の話だ、チビ助?」
横で黙っていた夢路が口を開く。
「ちょっとピンチなので助けてください」
小声で夢路に救援を求める。
「……お前さん、さっきオカルトを体験したらって言ったな」
「はい、言いました」
「なら、違うんじゃねえか。こいつは別に直接幽霊を見たわけじゃない。話聞いただけじゃ体験とは呼べないだろ?」
夢路は断片的な情報から助け舟を出す。
「えっと。……じゃあ、もしオバケが目の前に現れたら入部することを認めてくれるんですか?」
「おう。それなら俺も信じるぜ、オカルトってやつを」
「その言葉、忘れないでくださいね」
「当たり前だ。自分の言ったことくらい覚えてる」
「確認ですけど、あなたが夢路さんですよね?」
「その通り。探偵部の夢路だ」
「ありがとうございます。ではお二人ともこれで失礼」
夢路がそう言うと三河は去っていった。
「厄介なのに好かれてるな」
「先輩も巻き込まれた形になってしまいましたけど、大丈夫なんですか?」
「要はアレの正体を解けばいいだけの話。やつが少しうれしそうなのが気になるがな」
俺も真面目に捜査しないとな。このままじゃ、意味分からない部活に入らないといけなくなる。それだけは何としてでも避けなければならない。急がないとな。
***
その後、夢路たちはいつも通り授業を受けて、時間は放課後になる。オーロラ怪人が出るのは夜だろうし、英気を養うために少し寝るか。夢路は部室のベッドに倒れ込む。
ん、また暗いな。今度は立ち止まっている。コイツは何してんだ? 廊下に突っ立ったままで。角の柱で身を隠して、奥を見ている。これは、昨日見た夢と同じ場所、つまりオーロラ怪人が出たところだ。
まさか、今日もここで現れるのか? ここで張り込むのもアリか。って、これもしかして捜査をする俺達の夢か? でも、俺は他人の夢しか見ないからこれはチビ助やマキの夢の可能性もあるな。
そんなことを考えていると、やはり突然アイツが現れた。オーロラ怪人、何度見ても不気味だな。すると、画面が急に動き出す。走って近づいているのか。けど、消えるのがオチだろう。案の定、オーロラ怪人は目の前から一瞬で消えていった。
ここで夢は終わった。あの速さからしても、やっぱり夢の主はマキだろうな。どうする? 俺の夢は絶対に起こることだから、反抗してもしょうがないが、今見たのをもう一度見るのはな。意味がないし、つまらない。でも、結局見ないといけないんだろうし。まあいいか、そこは我慢しよう。
「リュウー、起きてるー? 私考えたんだけどさ、昨日オーロラ怪人が出たところに張り込んでみるってのはどう?」
やっぱり、意図せずともこうなるらしい。夢路が目覚めたのは放課後が終了間近の頃。部活の練習が終わった桐生が再び探偵部に顔を出す。
「いいんじゃないか。もう一回くらいは出そうだし」
「でしょ? 味を占めたイタズラでも地縛霊でも、二回目も同じ場所にくるだろうって思ったの」
地縛霊なら二回目だろうが百回目だろうが同じ場所にいるのは当たり前だけどな。
「もし、張り込み中にアイツが現れたらどうするつもりだ?」
「捕まえてみようと思う。いくら一瞬で消えるって言っても、私の足だって負けてないからね」
「そうか。まあ頑張れよ」
幽霊との速さ勝負。結果を知っているのであまり口出ししないでおこう。
「先輩の方は何か作戦とか思いつきましたか?」




