幽霊の証明(6)
「少しねえ。まあ、怖くないなら大丈夫ね」
「大丈夫? 何がだ」
「決まってるじゃない。オーロラ怪人の正体をあばくのよ」
そう言うと、桐生は勢いよく立ち上がった。
「マジかよ。なんでそんなことすんだよ?」
夢路は表情を曇らせる。
「いいですね、それ! やりましょうよ先輩。探偵部として」
一方ソラは心を弾ませる。後輩からの誘いに対しても、夢路はやはり難色を示す。
「何でそんなに嫌そうなの? いっつもアンタがやってることじゃない。分からないままなのは気分が悪いって言ってたじゃん」
「確かにそうだけどよ……」
夢路は少し黙り込む。彼がが夢の正体を知ろうとすることになった起源は、分からないままなのが嫌だから。それで推理の真似事がくせになってしまっただけで、そこに信念だとかは根本的にはない。だから、諦めようと思えばいくらでもそう出来る。一応今は探偵部があるために若干の固執はあるが、所詮はその程度だ。
「それとも何? やっぱり怖いの?」
「ッチ。大人しくしていれば言ってくれるじゃねーか。上等だ、やってやるよ。まあ、どうせ幽霊の正体見たり枯れ尾花ってところだろうがな」
幼馴染の売り言葉に触発され、夢路もようやくやる気を出す。
「いいねー。やっとらしくなってきたね」
夢路は腰を上げる。なんかいつもよりも重たい気がするが気のせいだろう。俺が幽霊を怖がっているなんて、まさかな。
「じゃあ、まずあの子達から話聞く?」
桐生が、さっき食堂に走ってきた女子二人の方に目をやる。
「うーん。それはいいんじゃないか? 俺がもう実際同じ映像を見てる訳だし」
『むしろ、これをすると他の心配が出てくるからな』
夢路は何か一つ懸案事項を予想しているようだ。
「そういえばそうよね。むしろアンタの方が実際に見てない分、冷静に状況整理できてるだろうし」
「そういうことだ。まあ、でも調べるって言ってもあんまりすることが思い付かねえな」
夢路は少し下を向いて考える。
「じゃあ、現場に行ってみるとかどうですか? さっきあの子二階の廊下で、とか言ってましたよ」
「現場か。行ってみるか」
しかし、こうして三人は現場に向かってみたものの見た限り廊下に変わった様子はない。
「どうする、今日はとりあえず終わりにする? 私たちもそろそろ自分の寮に戻らないと」
桐生が時間を気にする。
「そうだな。でもこれからの捜査は、明日からのアッチの動き次第か。イタズラにしても幽霊にしてもだ」
夢路もそれに賛成し、玄関の方に歩いていく。
「これ以上音沙汰がなかったら?」
「仕方ねえけど、諦めるしかないな」
ソラからの質問にキッパリと答える夢路。
「なんかちょっとうれしそう?」
「いや、別に。いつも通りだ」
明日からの動き次第、か。おそらく、もし明日もオーロラ怪人が現れたなら、それは今日のイタズラに味を占めた人間の仕業だろうな。でも、もし出なかったらそれは……。これ以上はやめておくか。寝れなくなるのは、俺にとって死活問題だからな。夢路は一人今日も床に就く。
***
次の日の朝。ソラは二年男子寮に向かう。昨日はあれで捜査は終了した訳だが、今日はどうなるんだろうか? 夢路は相手の出方次第と言っていたが受け身な姿勢というのは、先手を譲ったようでどこか嫌だな。
「おはようございます。昨日はよく眠れましたか、先輩?」
いつものように夢路の部屋に入り、起床を促す。
「……まあ、そこそこだな」
やはり寝起きのテンションは低い。
「そうですか。じゃあ夜一人でトイレに——」
「お前俺を舐めてんのか?」
「いやいや。そんな訳ないですよ」
ソラの顔がニヤついているのを見て、夢路は腹を立てる。
『朝からムカつくぜ、こりゃ今日はよくない一日になりそうだな』
「それで一晩明けたわけですけど、何か思い付いつきました?」




