幽霊の証明(5)
「で、何なの? 今日見た夢って」
「まあ、俺の見間違いかもしれないから話半分で聞いてくれ」
「話半分って、アンタが見た夢を言う訳でしょ? そういうのは現実には起きそうもない話に使う言葉よ」
桐生の言うことは最もであるが、いつもと違う夢路の物言いにソラは違和感を覚える。
「まあ、いいから聞いてくれ。時間は夜七時とか八時とかそのくらいで——」
夢路は二人に先程見た光景を説明する。
***
「ふーん。名付けると、オーロラ怪人参上ってところね」
結局夢路の話は帰り道だけでは尺が足りず、三人は一年女子寮で夕食を取ることになった。
「人が真剣に話してんだから、まじめに答えろよ」
「話半分でいいって言ったのはそっちでしょ?」
「そうだけどよ」
珍しく言い負かされる夢路。先輩、ひょっとして幽霊とか苦手なのか?
「でも、それって誰かのイタズラなんじゃないんですか?」
「能力使ってか?」
「はい。それなら急に現れたり消えたり、動く変な模様なのも筋が通るんじゃ?」
「でもよ。それじゃあ能力が二ついることになるだろ」
「目の前に現れたり消えたりするテレポート系の能力と、模様を映し出す能力ってこと?」
夢路の問いに桐生が答える。
「ああ。そしてそれだと、テレポート系の能力はちゃんと人一人をまるごと飛ばせるか怪しい。しかも、模様を映し出す能力に至っては、どんな風に能力を使えばああなるのかも分かんねえ」
「なんかあるんじゃない? 人に不快にさせる模様を見せる能力、とか」
「うーん、俺もこの学園の全ての能力を知ってる訳じゃないしな。あるかもしれないし、ないかもしれない」
でも微能力というのは大抵何かの能力の下位互換である。オリジナルの能力も存在するにはするが、結構数は少ない。夢路の感覚的には七対三くらいである。
「あとよ、さっきから思ってたけどそのオーロラ怪人ってネーミングは何とかならないのか?」
「えー、だって話聞いただけじゃよく分かんないし。その辺は後から本格的に考えればいいじゃん。ちょうど今くらいでしょ? オーロラ怪人が出てくるのは」
「ああ、そういえばもうそんな時間だな」
話に夢中で三人とも食事がロクに進んでいない。さっさと食べないと寮長からうるさく言われてしまう。急がないと。ん? 何だろう、このバタバタ音。ソラの耳にどこからか大きな音が入ってくる。近づいてくるところから、誰かが階段を駆け下りているのだろうと予想する。
「た、大変よ、大変!」
女子二人組が叫びながら肩で息しているぞ。もしかして、この二人では? ソラたちは視線を集中させる。
「どうしたの?」
この二人の知り合いの女子数人が集まり、心配そうに尋ねる。
「で、出たのよ」
「何が?」
「オバケよ! なんか不気味な、こう黒い感じの色のが急に目の前に現れたと思ったら、今度は一瞬で消えたの」
「えー、オバケ? ホントにー。どこで見たの?」
「二階の廊下で——」
この一連の騒ぎを見て、食堂に残っていた生徒はみんなザワザワし始めた。もう帰ろうとしていた人もまた席に座って話し始めた。そしてソラ達も。
「ねえ、あれって」
「間違いない。今日の夢の主はアイツらだな」
「やっぱり、幽霊とかオバケに見えるんですね」
「当然だ。お前らも一度見たらそう思うに決まってる。あの何とも言えない不気味さを感じたらな」
やはりこの物言い、ソラはほとんど確信を持つ。
「ふーん。アンタってそういうタイプだったけ? 幽霊とかオバケを怖がるなんて」
桐生もソラと同じことを感じていた。
「俺は怖いなんて言ってないだろ。ただ……」
「ただ?」
「自分の頭じゃ理解できないものに、少し驚いてるだけだ」
夢路はポツリと言葉をこぼした。




