変わらずの芸術(2)
「さっきの方は誰なんですか?」
別の場所に足を進める夢路にソラが問いかける。
「バスケ部のエース様さ。いわゆる幼馴染だな」
「ということはかなり昔からの知り合いなんですね」
「ああ、小学校からのな。マキと一緒さ」
「え、そうなんですか。珍しいですね、そんなに長い付き合いの人たちが三人とも同じ高校だなんて。しかも能力持ちってことですよね?」
「もちろん。ある意味、能力持ちだからこその長い付き合いかもしれねえけど」
自分と似ているもの同士が惹かれ合う。能力者もまた同様ということか。
夢路の後ろをついて行くだけのソラであったが、だんだん見覚えのある道に入る。
『あれ、この先って』
二人の目の前には、グラウンドが広がっていた。そこにはトラックを走る生徒や、やりを運ぶ人などの姿があった。陸上部がまさに部活中ということだ。
先程の体育館と同じように、グラウンドにズカズカと入っていく夢路。ソラは何となく用のある人物を察する。
「よう、マキ。これ書いてくれ」
桐生は何も言わずペンを取る。
「サンキュー、部活頑張れよ」
「ありがと。二人もね」
ソラにも笑顔を向ける桐生の元を去り、二人は校舎に入る。
「これで、五人ですね」
「最後にこいつを渡しに行くか」
夢路はまたも行き先を告げずに進み出す。
***
生徒会室の前に立った時、ソラの鼓動が速くなる。大丈夫だ、今日は別に悪いことをしに来たのではない。
「こんにちは、生徒会諸君」
夢路が扉を開けると、生徒会役員が仕事の真っ最中。当然空気は静まり返っている。そこに、決して仲が良好でない夢路の登場。場はさらに凍りつく。
「夢路、貴様。何のようだ、冷やかしなら即刻立ち去れ」
「まあまあ、副会長殿よ。そういや、昨日のは上手く解決したのか?」
「……購買部部長の協力もあって、事態は無事収束した」
「で、犯人はどうなった?」
副会長が濁した部分を、夢路は的確に攻める。
「残念ですが、自主退学という形になるでしょうね」
毅然とした声で会長が代わって答える。
「それよりも、今日はどんな要件で生徒会室に?」
「ああ、そうだった。はい、これ」
夢路は申請書を差し出す。会長はじっくりと目を通す。
「顧問の欄が空欄ですが、よろしいのですか?」
「……あの、顧問が必要なのは監督・指導が必要な部活動のみです。私たちの部活には関係ないです」
ソラは必死に声を絞り出す。
「それでも必要って言うなら、今から探してくるぜ? 当てもあるし」
夢路もすかさず援護する。
「いえ、ただ確認しただけです。それと、部長が今際さんになっていますけど、これもお互い納得済みで?」
「はい、大丈夫です」
夢路は黙って頷く。
「分かりました。では、本日付で『探偵部』の設立を許可します。生徒たちの学園生活の向上のために尽力してください」
あっさりと許可が出され、正式に探偵部が誕生した。