幽霊の証明(2)
「じゃあ、現代文は?」
「それは……」
十中八九あるだろう。別に今回のテストで平均が低い訳でも暗記教科でもない。普通に考えたら、補習があるのは当たり前だろう。そして、赤点の人は無条件で……。
「はあ。ソラときららは? 赤点一つか二つくらいあるでしょ?」
「平均切ったのはあったけど、赤点はない」
「私も」
「えー……」
さらに落ち込むミナミ。彼女の場合、補習のせいで部活ができないことが大きいのだろう。
「私だけか。まあ、いいや別に。点数低かった私が悪いんだし」
どこか投げやりな気もするが、とりあえずは落ち着いたみたいだな。
「おーい、席につけ。HR始めるぞ」
担任の赤松先生が教室に入ってきて、生徒を座らせるように指示をする。号令を済ませてから、先生の連絡が入る。
「えー、今日の放課後は特に言うことないな。で、明日はー、特にないかな。夏休み前は楽だな。あっ、そうだ。今から名前を呼ぶ奴は指名補習の奴な。えっとまず英語だな。石川、それから……」
赤松の口から、死刑宣告が告げられる。呼ばれる人は大変だ。
「……そして最後に今際。以上だ」
え? なんて? よく聞こえなかったな、最後。もう一度聞いてみようか。
「先生、最後もう一回言ってくださーい」
「ん? 最後は今際、お前だ」
「えー、何で? 私一個も赤点ないけどなんで補習なの?」
「そりゃ、補習ってのはテストの点数だけで決まるもんじゃないからな。授業態度とか提出物とかも考慮されるものだからな」
「教科は何ですか?」
「現代文だな。あ、よく見たら提出物忘れって書いてあったわ」
まさか88点を取った現代文で呼び出されるとは。現文の岡田先生は、穏やかで優しい心の広い女性だとばかり思っていたが、まさかここでしっぺ返しされるとは思いもよらなかった。
「ここに補習の日程と時間貼っとくから、ちゃんと見ろよ。じゃあHR終わり。起立ー」
青天の霹靂、いや空から槍が降ってきたような感覚を、ソラは今身をもって感じている。まさかこんなラッキーパンチが残っているとは。盲点だった。
「いえーい、ソラ! 私現文しか補習なかった」
「私もそう」
一体何を提出しなかったのだろうか? ソラはゆっくりと思い出す。
「それは知ってるよ、災難だったね。でも、ソラたちの言った通りだったね。ホントに現文だけしか補習なかったし」
「まさか私も補習とは。88点もあったんだけどなあ」
「補習の時はよろしくね。分からない時は特に。88点なら分かるでしょ?」
「同室だしね、お互いよろしく」
「ソラ、災難だったね。まさかの補習で」
「きーちゃんはなかったの?」
「もちろん。私は真面目な生徒ですから」
平均も超え切れてない教科があったことは気にしないでおこう。
「まあ、頑張ってね。一つくらい補習受けても、夏休みは無くならないんだし」
勝者の余裕を見せつけてくる内田。その声かけもどこか複雑に受け取ってしまう。
「今際、残念だったな。せっかく補習なしで喜んでたのに」
今度は火野か。同情するなら成績くれ。それか生真面目な性格を。
「自業自得の面も多少はありますから、頑張ってください」
冷たい正論を突きつけてくる水戸。もう少しオブラートに優しく包むように言って欲しかったな。
「ちなみに火野ちゃんと水戸ちゃんは今回の最高点はどれくらいなの?」
ソラは、興味本位に雲の上の様子を聞いてみる。
「私は98点です」
「あたしは95」
「現代文は?」
「91」
「87」
なるほど。つまり、現文だけならソラは学年トップクラスを張れるわけだ。これからは現文を中心に点数を伸ばしていくのも悪くないのかもしれない。
まあ、それより今は傷心の方がはるかに気になる。これは自分的にかなりの間引きずる気がする。少なくとも夏休みが終わるくらいの間は……ってその頃にはもう補習終わっているのか。




