密室の消失(終)
その後、夢路は自分が言ったように警察には、あの火災は事故だったのでは? と進言し、警察も現場が密室だったこともあり、それで今回はカタをつけるらしい。
「よかったんですか、アレで?」
火野がご飯片手にトンカツを齧りながら夢路に質問する。
「別に俺は金髪ちゃんの気が済んだのならそれでよかったからな。お前さんだって、水戸を警察に突きつける気はないだろ?」
「うん、確かに」
火野もしっかり頷く。
「だったらこれで今回の事件は無事解決ですね。……ところで先輩、ナチュラルに一年寮で夕飯食べてますけど、大丈夫なんですか?」
当然の疑問をソラは投げかける。
「ここの寮長とは仲良しだから問題ない」
それは本当に大丈夫なのか? ソラは一人頭を悩ます。
「あの、ここいいですか?」
声のする方を見上げると、水戸だった。火野の隣に座ろうとしている。
「別にいいよ」
「ありがとう、アイコちゃん」
「……おう」
やはりこの二人の関係は大きく変わったみたいだ。もっとも、水戸の一方的なものかもしれないが。
「やっと見つけた! リュウ、昨日火事あったってホント?」
桐生が慌てて夢路の元に駆け寄る。どうやら合宿から陸上部が帰ってきたようだ。
「久しぶり、ソラ。元気してた?」
ミナミもテニス部の大会が戻り、寮に戻ってくる。
「そっちこそ、大会お疲れ様」
「あれ? 水戸ちゃんと火野ちゃんが仲良く隣同士で座ってるけど、こんなんだったっけ?」
ソラにだけ聞こえるように、ミナミは耳打ちする。
「さあ、何かいいことでもあったんじゃない」
「ふーん、まあいいや。私もご飯食ーべよっと」
こうしていつもと違う休日は幕を閉じ、また日常へと戻っていく。ただ一つだけ、大きく変わったことがある。この事件の日から、火野と水戸はいつも一緒にいるようになった。正確には、水戸が火野にくっついているのが正しいらしいが、仲良くやっているならどっちでもいいだろう。不倶戴天からここまで変化するとは。人間とは不思議なものである。
「密室の焼失(完)」




