密室の消失(7)
「え? 俺はややボケのつもりだぜ」
名前に能力が関係している、か。そういえば俺も名前は夢路で能力はドリーム。もしかしたらこの関係ってのはあるのかもしれないな。と思ったがマキは桐生でシューズだったことを思い出す。ナイキとかならワンチャンあったのにな。夢路は一人で仮説を棄却する。
「で、現場を見て何かわかりました?」
「プール倉庫は屋内プールの中ではなく外付けに設置されていて、プールサイドに続く扉を使って行き来ができる。しかし、入るのには職員室の鍵が必要で、昨日の夜に持ち出された形跡はない。倉庫に窓はあったのか?」
「さあ? 私、屋外プールに来るのは初めてですから」
火野も無言で同意する。
「窓があれば鍵を使わなくてもガラスを割って中に火を放つことができる。火事になればガラスが割れたり溶けたりするのは自然なことだからその点で怪しまれることもない。……こんなところでいいだろ。さて、じゃあ次は水泳部のところにでも行って、窓があったか確認するか」
夢路は先頭を突き進む。
「思っていたよりもかなり前進したな。内田が言ってのもあながち間違いじゃないかもな」
「なんか言ってたけ?」
「忘れたの、名探偵さん」
***
プール倉庫を後にした三人は、寮に戻ってきた。水泳部を探すと言っても、プールがあの有様じゃ当然部活なんてできないだろうから、寮にいるのが普通だろう。案の定、三年女子寮の食堂で水泳部と思われる数人の生徒が集まって話をしていた。
「わりぃ、ちょっといいか?」
「あ、夢路くんどうしたの? もしかして昨日の火事のこと調べてるの?」
返事をしたのは、夢路と同じクラスの木村。そういえばこいつは水泳部だったな。
「ああ。そんなところだな」
「あ、ソラちゃんだ」
部長の河野が手を振っている。
「こんにちは。少しお邪魔させてください」
「いいよー、いくらでも」
木村はジロジロ三人を観察して、夢路にだけ聞こえるように近づいていく。
「ふーん。見たところ後輩ちゃんのために頑張ってるんだー。どうしようかなー? マキちゃんにこのこと言っちゃおうかなー」
「どうぞご自由に。今は探偵部の活動中だ。それに、何か勘違いしているようだが、別に俺とマキは幼馴染なだけであってそれ以上の関係はない。微塵もな」
「冗談だからそんな怖い顔しないでよー」
木村はゆっくりと後退りする。
「で、何か用があったんじゃ?」
河野が軌道修正する。
「ああ、そうだったな。……一つ聞きたいことがあってよ。燃えた倉庫には、窓ってあったのか?」
「窓? 外の倉庫に? えーっと、どうだったっけな? ねえ、あった?」
河野が他の水泳部にも聞くが、みんなどうだったっけ? と首をかしげるばかり。
「おいおい、お前ら水泳部だろーが。何で誰も知らねえんだよ」
「だって私達が普段使うのは中の倉庫だもん。外の倉庫は授業用の備品が入っているところだから、用務員さんとか先生くらいしか行かないよ」
木村が反論する。
「ふーん、先生と用務員か。時間取って悪かったな。ありがとよ」
「ありがとうございました」
ソラは頭を下げ、一行はその場を去る。今の夏前の時期なら、プールの用意で最近中に入った奴がいるはずだ。それなら流石に気づくだろう。しかもこれならオマケも付いてくるはずだ。夢路は新たな思惑を持って次の行き先に向かう。
***
次に夢路達は職員室に向かった。生徒は日曜日で休みだというのに、先生がちらほら仕事をしていると、どこか申し訳ない気がする。
「すいませーん、ちょっといいですか?」
ソラはが大声で呼びかけると、先生達は一斉にこちらを向く。そして顔見知りの先生が一人、声をかけてきた。
「どうした今際。わざわざこんな日曜に。まさか勉強の質問をしに来たのか? お、なんだ火野も一緒か。中々見ない組み合わせ。それと、夢路か……さては探偵部だな」
「ご明察で。話が早くて助かるよ」
目の前の教師は須藤先生。主に化学を担当しており、夢路のクラスもソラのクラスも担当している。




