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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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第8話 密室の消失(1)

 ゲコゲコゲコゲコ、、、。なんだ? カエルの声か。こいつらは夏に向かう程活きがよくなるな。

 真っ暗でよく見えないが、だんだん目が暗闇に慣れてきた。明かりの付いていない、人気も全く感じない校舎に向かって歩いているみたいだ。忘れ物でもしたのか?寮に住んでいるなら、朝早く学校に行くのも簡単なのにわざわざ夜に取りに行くなんて。どうやらこの夢の主は真面目な性格の人なんだろう。


 おや、教室のある校舎の群れを横切ってしまったぞ。この先にあるのは体育館や武道館……なるほど、忘れ物は部活関連のものらしい。しかも洗濯しなきゃいけないものとか、手入れが必要なものとか、そういうものだろう。


 案の定、夢の主は屋内プールの方へやって来た。こんな山奥の学校に、屋内プールなどという高価なものがあるとは。これでも一応国立だったな。


 そして、なぜかプール内には入らずに裏手の方へ進んで行く。はて? 俺はプールなんてよく行かないから知らないが、この先に何かあっただろうか?


 そんなことを考えていると、目の前がテレビを切ったように突然真っ暗になる。いつものことだ。まあ、今回は夢の主がどういう不幸を被ったのか分かったし、悪くない目覚めだろう。


   ***


「今のは?」

 夕食を食べた後の自習中。ソラはいつ間にか机に突っ伏して眠っていたのだろう。枕代わりになった左手が痺れている。それより、今の誰かがプールに向かう映像。これはもしかして夢路の予知か? ソラは時計を確認する。時刻は二十時を過ぎた頃。


「ちょっと確認してくるか」

 ソラは部屋を出て二年男子寮に向かうことにした。玄関に出ようと一階に降りると廊下の奥からなにやら大声で叫んでいるのが聞こえてくる。よく見ると人だかりも出来ているではないか。


 野次馬というのは下衆っぽく、あまり進んでやるようなものではないが、自分の学校内で起こっていることに無関心であれというのはソラの好奇心が許さない。野次馬と言っても一階に部屋がある人たちが集まっているだけらしく、十人いるかいないかという程度だった。


 囲まれている人物は、同じクラスの委員長の水戸 明美と金髪ヤンキーの火野 愛虎だ。何の話をしているのか。聞き耳を立ててみよう。


「とにかく! 私はあなたのそういう態度が気に食わないんです。だいたい何ですか? その髪の毛。いくら校則で髪を染めるのが認められているからといって、もう少し高校生らしい色にしたらどうなんですか?」

「……」

「はあ、もういいです! どうやらあなたは私と話が出来ないみたいですね」


 そうやって言葉を吐き捨てると、水戸は階段の方へ歩いて行く。それと同時にソラたち野次馬も、モーセの十戒の海のように左右に分かれて道を開ける。役者も退場してしまったので、野次馬達も潮が引いたように消えていった。廊下に残ったのは火野とソラだけとなる。


 さて、この一連の騒動を見て、人は何を思うのだろう? 普通ならヤンキーの火野と委員長の水戸とのケンカ。絶対悪いのはヤンキーの火野、と考えるのだろうが、ソラは決してそうは思わない。


 クラス委員長の水戸は、自分が品行方正・成績優秀であるためか、他人にも自分と同じような態度でいるように強要してくる。それがクラス委員長の仕事だ、と言われたら確かにそうかもしれないが、別に他人に迷惑かけているわけではないのだからどうしようとこっちの勝手だろう。


 例えばの話だが、夢路のような生徒がうっかり、あるいは無自覚のうちに、もしくは不覚にも授業中に寝ていたとしても、困るのは夢路一人だけのはずである。他の奴からしたら夢路が起きてようが寝ていようが、別に成績が変動するわけでもない。それなのにもかかわらず、いちいちとやかく言うのはなぜなのか。大方、正義感か義務感のどちらかだろう。


 まあ、どちらにせよ夢路のような輩からすればただのありがた迷惑。これがどれだけタチの悪いものなのかは経験したことのある人には言わずもがななことだ。そのような他者に振る舞いを強制する姿勢をソラは決して好まない。


 一方、ヤンキーの火野の方はというと、周囲から見た目でヤンキーと言われているが、別にタバコを吸っているだとかカツアゲをしているだとか、そんなことは一切ない。人が困っているなら手を差し伸べ、授業をサボるどころか居眠りすらしない普通の真面目な生徒なのだ。ソラはこの前授業で分からない問題を当てられた時、そっと後ろから助けてもらっている。

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