表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中途半端は大変です!  作者: 平下駄
70/288

写った被写体(7)

 目的地の体育館に着くと、バレー部がちょうどコートのネットを張り終えたところだった。まだ放課後が始まってそう時間は経っていないのに、着替えも含めて準備を終えたのだと考えると、かなり手際がいい。運動部というのはどこもこんな感じなのだろうか。


 そんなことをソラが考えていると、バレー部は準備体操のストレッチを開始していた。練習が本格的に始まる前に話を聞いた方が良さそうだ。しかし、ここで一つの問題に気がつく。それは、どうやって一年前の話をスムーズに聞くかということだ。


 残念ながら、ソラに二年生以上のバレー部の知り合いはいないし、そもそも知らない奴が不躾に昔の盗撮事件のことを聞いてきたら、警戒するのは目に見えている。かといって、このまま帰るわけにもいかないし、一応田村はまだ容疑者だ。探偵部の名前を使って徒に風評を害することはできない。ソラは頭を少し働かせ、考え得る最善の方法をとることにした。


「あのー、すいませーん。新聞部のものなのですが、部長さんっていらっしゃいますか?」

 ソラが声を上げると、一人の女子が小走りで近づいてくる。遠くからだと分からなかったが、かなり背の高い人だ。百八十くらいはあるその女子生徒にソラは驚く。先輩よりは小さいけどそれでも十分大きい。


「はい、私が部長の新庄ですけど。新聞部の方がどうされました?」

「ええ、実は女子バレー部に取材を少しさせていただきたいと思いまして。ほら、最近調子いいでしょ。次の大会はいいとこ行くんじゃないかってウチの方で話題になって」


 もちろん、ソラは女子バレー部の今期の成績なんて一ミリも知らない。ただ、見知らぬ人間が信用を勝ち取るには、とりあえず褒めておくのが一番だと判断した。まるで夢路のような小賢しさである。


「まあ、ぼちぼちですけどね」

 新庄が右手でヘアピンを軽くなぞる。まんざらでもないということだろう。


「それで、ズバリお聞きしたいんですけど、どうして女子バレー部はここまで強くなったんですか?」

「それはですね。まず、去年までのフォーメーションから大きく変えた、ダブルセッター体制がうまくハマりまして」


「ほう、ダブルセッター体制。それは具体的にどういう効果が?」

「通常一枚のセッターですと……」


 作戦の第一段階として、まずは自分が言ったことを実行しよう。ソラは全く話が分からないが、メモをとりながら新庄の話を書き記している。それを見てなのか、相手はさらに雄弁に語ってくれる。記事にはならないと言ったら、どういう態度になるのだろうか。


 今期の女子バレー部が、フォーメーションや練習方法を去年から大幅改造した話を、かれこれもう三十分近く新庄から聞かされる。よくもまあここまで喋れるものだ。まるで前々から誰かに聞いて欲しかったと言わんばかりだである。


 もしかしたら、本心もそうなのかもしれない。今回の改革は新庄が先導して行ったらしい。過去のやり方を否定して、自分のやり方でうまくいっているのだから、人に自慢したいという深層心理が多少なりとはありそうだ。ソラはメモをとりながら客観的に分析する。


「というようなことが結果に結びついて、今の私達のバレーになりました」

 ようやく相手が話に一区切りをつけた。可能であればもう少し早くそうして欲しかったことは内緒だ。


「なるほど、そういうことがあったんですか。ところで、昨日の陸上部の話聞きました?」

 ようやく第二段階、いや本題に入る。


「ええ、覗きだか盗撮だかがあったとか聞きましたね」

「らしいんですよ。そういえば、女子バレー部も以前そんな騒ぎがありましたよね」

「はい、ちょうど一年くらい前ですね。体育館の更衣室の窓から顔を覗かせている人影がありましたね」


「ということは、新庄さんもその場に?」

「いましたよ。といっても、私は皆が騒ぎ始めてようやく気づきましたけどね」

 よし、睨んだ通り。現部長なら、一年前の関係者である確率はほぼ百パーセントだ。


「顔や姿は誰も見ていなかったんですか?」

「はい。残念ながら」

「でも確か、その時容疑者が浮上したって聞きましたけど」

「居るにはいたんですが、確たる証拠がなくて」

 確たる証拠か。なんかどこかで聞いたな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ