写った被写体(6)
「よう、面白い話は聞けたか?」
二人が部室に辿り着くと、夢路が鍵を閉めて帰ろうとしてきたところだった。
「状況確認ができたくらいですね。目ぼしい情報は特に」
「そうか。どのみち今日はもう遅いから帰るぞ」
三人は階段をゆっくり降りて行った。
「柊さんってマキさんから見てどんな方なんですか?」
「賢くてリーダーシップがある人かな。初対面だと少し取っ付きにくいと感じる人もいるかもしれないけど、話してみるとそうでもないでしょ?」
「そうですね。今日もこちらの意図とかもきちんと汲んで色々行動してくださってましたし」
「あいつはそういう能力者だからな。お前さんがそう感じて当然だ」
夢路の突然のカミングアウトにソラは驚く。
「テレパシーですか。それはまた面白い能力ですね」
「あとは長距離でもすごい記録持ってたりとかするよ。こないだの大会でもきちんと結果出してたし。ね、リュウ?」
「そういえばそんなこともあったな。あいつのせいでマネージャーの仕事やらされる羽目になったの思い出すとなんかムカつくな」
「仲良くしてよー、二人は相性良いんだから」
「相性?」
ソラが疑問を述べる。
「柊さんの能力はかなり対象者が限定されていて、波長が合う人でないと使えないの」
「それに拾える思念にもかなり偏りがある。チビ助が想像しているほど便利な力ではないだろうな」
二人の説明から、ソラは柊の能力について正確な理解を完了した。
「そういえば、今日の事件。リュウはこれからどうするつもりなの?」
「とりあえずは明日一日使って調査だろうな。探偵部の解決率百パーセントを維持するために」
ずいぶんと打算的な理由である。
「調査はどうやって進めていきますか?」
「それは当然話を片っ端から——」
「だから、それをどうするの? まさか、二年生全員に話を聞く気じゃ……」
「んなわけないだろ。そんな非効率的なことが出来るか。二年に話は聞くが、まずは女子バレー部員。あとそれと写真部あたりだろうな」
「バレー部には一年前の事件についての詳しい話を伺うというのは分かりましたけど、写真部はどうして?」
「写真部には田辺の身辺情報を聞くためだ。写真部は身内だから、あんまりこちらに有益な情報は教えてくれないかもしれないが無いよりマシだ」
「なるほど、ではとりあえずその二つが明日伺う部活というわけですね」
ソラが夢路の提案をまとめる。
「それだけの情報収集で田村の写真が崩せるの?」
「微妙だな。でも、他に何も思いつかないし。もしかしたらお前の冗談通り、二年生全員に聞いて回ることになるかもな」
そんなの絶対にごめんだ、という夢路の気持ちが伝わってくる。
「そうなったら手伝ってあげるね」
なら、そうなる前になんとかするしかない。とりあえず、さっき言った二つの部活を明日の放課後訪ねることをソラは心に留めておく。
「というか、先輩って普通に下校してるんですね。てっきり深夜くらいにひっそりと寮に帰ってるのだとばかり思ってました」
ソラは夢路の生態をまだ理解しきれていない。
「日によるけどな。確かにそういう風に日付が変わる頃まで学校で寝てるとかもあった」
「でも、最近はあんまりないよね。一年生の頃は夕食も食べないなんてことも多かったけど、最近は何だかんだで起きてるし」
「人ってのは程度の差はあれ、日々成長していくものさ。日進月歩なのかコツコツなのかは個人差があるけど」
そうこう会話をしているうちにそれぞれの寮の近くにやって来る。
「じゃあ、また明日」
「はい、お疲れ様です」
「またね」
三人は挨拶をかわす。
***
キーンコーンカーンコーン。
放課後開始のチャイムを耳にして、ソラは一度部室に顔を出す。案の定夢路はおやすみモードであったため、一人で行くことにする。まずは女子バレー部からにしよう。とりあえず体育館に移動しよう。




