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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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第7話 写った被写体(1)

 画面が縦に小刻みに揺れている。走っているところか。しばらくしてようやく画面が安定してくる。場所は校舎周りの道のようだ。造りがどこも同じなので、何棟かまでは特定できない。


 日が傾いており、おそらく時間帯は放課後だろう。部活のランニングかと初めは思っていたが、ずいぶん慌てて走っているようにも見える。息もかなり荒い。まるで誰かに追われているかのように。もしそうなら、この夢の主の不幸はこのチェイスの結果が捕まって終わることなのだろうか。そのような考えが浮かんだところで、画面が毎度の如くプツンと消える。何とも中途半端なところで終わったな。


   ***


 夢路は目を覚まし、天井を見つめる。せめてあと一分あれば夢の結末まで見れただろうに。いつものことながら何とも歯がゆい。ん、何か違和感というか痛みを感じる。どこが痛いのかもよく分からん。寝起きの中でまだ思考が定まっていないようだ。


「おはようございます、先輩」

「ああ、おはよう」

 夢路は同じ部活の後輩のソラと挨拶を交わす。


「何か不機嫌そうな顔ですね」

「まあ、寝起きだからな。……なんで俺の部屋にいるんだ?」

 少しずつ意識がはっきりしてきたのか、夢路はいつもと違う明らかな違和感を指摘する。ここは探偵部の部室でもなければ、校舎内でもない。二年男子寮の夢路の自室である。


「いいじゃないですか別に。かわいい後輩がわざわざ起こしに来てるんですから、もう少しテンション上げてくださいよ」

「気が向いたらな」

 後輩の意図は全く読めないが、朝の夢路はそれを詮索する気も起きないようだ。


「今日は雨か?」

「いいえ、今は見ての通り晴れてますけど」

 カーテンが開けられた窓の方を見ると、明るい日差しが差し込んでいる。


「雨だったら何かあるんです?」

「いや昔、空に雲がかかってると気圧のせいで頭痛になりやすいとか聞いたのを思い出してな」

「頭痛いんですか? そういえば枕、床に落ちてますけど」

「ああ、多分それだな。首と頭の付け根が痛え」

 色んな部分が鮮明になってくる。痛んでいる部分も、自分の状況も理解できたし、そろそろ起きる頃合いだな。夢路は上体を起こす。


「そろそろ着替える。玄関で待っててくれ、用件はそのときに聞く」

「了解です。寝相、ちゃんとしてくださいよ」

 そうソラが言い残し、ドアが閉まる。寝てる時にどうやって修正したらいいんだよ。夢路は首の辺りを二、三度触りながら制服に着替える。少しまだ痛みを感じた。あんまり今日は首に負担をかけないようにしないとな。


   ***


「待たせたな。で、何か聞きたいことでもあるのか?」

 夢路は玄関でソラと合流し、そのまま校舎に向かっていく。

「実は、マキさんが言ってたんですよ。朝の教室で先輩の予知夢について伺ってるって。私も是非、聞きたいです」

「面倒くせえけど仕方ない。手短に話すぞ」

 夢路は先程見た情景をソラに語った。


「校舎周りを走ってる夢の主、ですか」

 ずいぶんとバッサリまとめられたが、的確な要約だろう。

「けど、それだと色んなパターンが予想できますね。忘れ物を急いで取りに戻ったとか、待ち合わせを思い出して慌ててるとか」

 この様子だと、マキから不幸を予知する件も聞いているのだろう。全く、なんておしゃべりなやつだ。夢路は幼馴染のガバガバなプライバシーに頭を抱えながら、ソラの発言に続ける。


「誰かに追われてるとかな」

「追われてる? なんでそう思ったんですか?」

「走っている歩調と息遣いから、そんな感じがした」

「なるほど。見た本人がそう言うならそうなのかもしれないですね」

 夢を見た本人よりも、これから経験する本人に話を聞きたいけどな。


「でも、本当に夢の主が追われてるんだったら、何が原因なんでしょう?」

「追われる原因ねえ。良いことではないのは確かか」

 あれだけの夢でそこまで分かれば、夢路は大した能力者だろう。


「でも、追われてるってのもあくまで俺の主観的な感想だからな。現実的に考えればチビ助の言った二つの方があり得そうだ」

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