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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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無色のフリースロー(終)

「では、今日の練習は終了! お疲れ様でした」

 お疲れ様でした、と体育館に大きな声が響き、選手たちは更衣室に吸い込まれていく。紅白戦の一試合目で全ての体力を使い果たした夢路は、今にも倒れそうにフラフラしている。最後のフリースロー練習も、ソラの担当とは違うコートにいたため、夢路が何を確認したかったのかは掴めていないが、こんな満身創痍で果たして達成できているのだろうか。ソラの頭の中は心配の二文字で埋め尽くされた。


「探偵部の二人、少しお時間いただきたい」

 部長の桐原に呼ばれて、夢路とソラは外に出る。

「俺も行きます、ここまで連れてきたし」

 その後を勝手についてくる工藤。四人のみが体育館の外に出てきたわけだが、もちろん話し合うことは一つしかない。


「それで、何か犯人への手がかりは掴めましたか?」

「リュウが大方分かったって言ってましたよ」

「本当ですか? バスケ部じゃ、皆目見当もつかなかったのに」

 桐原が期待の眼差しを向ける。


「ええ。犯人も一人に絞り込めました」

 あっさりと告げる夢路。他三人は目を見開く。

「どなたなんですか? 先輩」


「その前に一つずつ整理していこう。今回の件は、フリースローを打つ際に、バスケットゴールのラインやネットの白色が認識出来なくなるというもの。ほんの一瞬だけのこの症状がバスケ部の特定多数で発生しているところから、犯人は何らかの能力を使って視覚を阻害している」

 夢路はバスケ部からの事前情報をまとめる。


「では、この犯人の動機は何だ?」

 ソラはいきなり指を刺されて、あたふたする。


「えっと、スタメン争いとかで他の選手の評価を下げるため?」

「そんなところだろう。では、誰がどうやってについてだが、今回の犯人は選手ではない」

「選手ではない、なら一体誰が?」

 ソラは即座に聞き返す。


「体育館にはまだいるだろ? マネージャーが」

 ソラは泉、長谷川の両名を思い浮かべる。そして、夢路のフリースローを担当していたのは。

「長谷川が犯人、ということか」

 工藤が回答を述べる。


「でも、それだと動機が合いません。マネージャーの長谷川さんにスタメン争いなんて」

「その辺りは、俺なんかよりも詳しいだろ?」

 夢路は桐原の顔を見る。


「長谷川の彼氏 斉藤信也は人一倍努力しているが、スタメンの当落線ギリギリってところの人間だ。それこそ、たかがフリースローの成績一つで入れ替わるくらいの」

 桐原の言葉をソラは静かに聞く。動機については文句は無くなった。


「おそらくやつの能力は対象となる人物と同じところに視点を合わせた時にのみ、一色奪えるというものだろう。俺がフリースローの瞬間に目を逸らしたら、色覚異常は簡単に解けた。それにバッチリ目を合わせてやったさ。ハッとした顔もしっかり記憶した」

 桐原と工藤は近づき、今後どうするかについて協議を始める。


「タツ、俺たちはこれで帰る。またな」

「ありがとう。またよろしく」

 二人の幼馴染は手を振って別れた。


「さて、もう俺は帰って寝る。後は頼んでいいか?」

「はい、本当にお疲れ様でした」

 こうして夢路はゆっくりと帰路に着き、ソラは探偵部部室に向かった。


   ***


「おかえりなさい、今際さん」

 部室の扉を開けると、なぜかそこには応接セットに腰掛ける生徒会長の姿があった。

「え? なんで?」

「校内の視察です。探偵部は本当に大盛況なのですね、本当に私たちとは大違い。今までだって事件解決に?」

「はい。……先輩はもう帰りましたよ」


「あら、後輩一人置いて先に帰るなんて。薄情な人ですね。今際さんも、あまり遅くならないように下校してください」

 会長は立ち上がり、部室を出ていく。


『絶対何かあったでしょ』

 ソラは疑念の目を向ける。

『つくづくタイミングが悪い人。宣戦布告はまたの機会にとっておきましょう』

 氷の仮面の下で彼女は何を思うのか。

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