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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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無色のフリースロー(11)

「お疲れ、二人とも」

 名前を呼ばれた張本人が歩いてくる。そして、夢路の顔の横にスポーツドリンクを置く。

「たまには良い汗かいて気分いいだろ?」

「いいわけねえよ。こんな地獄もうまっぴらだ。……俺も体験したぞ、例のやつ」

 周囲に人がいないことを確認してから、夢路は小さく答える。


「え、今は大丈夫なんですか?」

「声でけえよ。フリースローを打つ直前の、ほんの二、三秒だけだったが完全に白色が消えていた。今は何ともない」


「俺や他の連中も同じ症状だったから、確定だな。で、誰か分かった?」

「その前に一つ、今日フリースローを行うタイミングはまだ残ってるか?」

 夢路は上体を起こして、工藤を見る。


「あるとも。練習の締めでもやるし、何よりこれから紅白戦だ。存分にファールを受けてくれ」

「……マジかよ」

 どうして自分がファールを受ける前提なのか、などのツッコミを入れる気力もなくうなだれる夢路。体力の限界にまだまだ鞭を打ってもらおう。


「お前の質問には答えたんだから、今度はそっちの番だ」

「大筋は読めた。あとは細かい最終チェックすれば終わりだ」

「そいつはめでたい。流石は探偵部さんだ」

 工藤が夢路の背中を叩く。ソラが知らない間に、夢路は少なくとも容疑者を半分にまで絞り込んだらしい。


『ということは、後方のコートの中にいた人が……』

 ソラは犯人の犯行方法に改めて思考を回す。そして、夢路はどうやってそれを割り出したのだろうか。予知なしの推理でどこまで辿り着いているのやら。

 

   ***


 休憩が開け選手が三つのチームに分けられ、試合が開始される。夢路は早速試合に出ることとなり、何とも重苦しい表情を浮かべている。その姿を気の毒そうにコート外から見つめるソラ。

「今際さん、ちょっと来て」

 泉に呼ばれて、ソラはタイマーのところに呼び出される。


「これから試合で、計時係をお願いしたいと思います。二十四秒ルールとか、ショットクロックって聞いたことある?」

「いいえ、どちらも初耳です」


「なら簡単に。二十四秒ルールは、オフェンス側が二十四秒以内にシュートを打たなければいけないというルールで、シュートが入ったり味方から相手にボールが移動したりするとリセットされます」

 泉はタイマーの右側のReset&Startを押す。すると、表のカウントが24と表示され時を刻む。


「次にショットクロックは、シュートを打ってリングにボールが当たったときに、 味方がそのボールを拾ってもう一回オフェンスをするときは十四秒で攻めましょうってルール」

 今度は中央の14sec.のボタンを押し、カウントは14となる。


「基本的にはこれだけ。もしよく分からないケースが出てきたら、一番左のStart/Stopで時計を止めて確認して。初めてだと何回か失敗しちゃうだろうけど、気にせずやっちゃって」

 それだけ言い残し、泉はホイッスルを首にぶら下げてコート中央に駆けていく。そして、ボールを宙に高く上げるジャンプボールが行われる。


「Tip off!」

 ゲームがスタートし、ソラは慌ててタイマーを動かす。ゲーム展開にも目を向けながら、同時に手元でタイマーを動かす。中々にハードな仕事が求められる。


「ソラちゃん、暇だから手伝いに来たよ」

 横から椅子を持って現れる工藤。


「ありがたいです。さっき聞かされたルールなんで勘でやるしかなくて」

「泉さん、ゆるいけどテキトーだからね。どうせロクに教えてくれなかったでしょ、今十四秒」

 工藤の助けも借りながら、ソラはようやく落ち着いて顔を上げられるようになった。ちょうどその瞬間、夢路はディフェンスのわずかな隙を突いて、スリーポイントを放ち成功させる。本当に未経験者か?


「リュウもあれでやる気があれば、どんなスポーツやっても恥ずかしくない成績残せるだろうに。

「先輩、前授業で見た時よりも上手になってる気がするんですけど、あれはどうしてですか?」


「不思議なやつだよね。あいつ、昔から味方や敵の実力にパフォーマンスが左右されるんだ。どうしてか分からないけど、まるで自分にセーフティをかけてるみたいに」

 幼馴染からの分析の通り、夢路はバスケ部部長相手に一進一退の攻防を見せていた。


「やる気があるのかないのか、分からないですね」

「違いない」

 二人は微笑みながら計時を続けた。

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